私は看護師。
私は追われていた。
ここは病院なのに!でも、正体不明のそれは執拗に私を追ってくる。
何度も諦めそうになったけど、何とか振り切った。
「ハアハア…」
息を切らして休んでいると、また、そいつは現れた!
やばい!
今度こそやられる!
そうだ!声を出して助けを呼ぼう!
フウと息を吸い込む。
だめだ!
声が出ない…!
やられる…!!
…私は目を覚ました。
まだ、心臓がバクバク鳴っている。
体は汗でベタベタだ。
そうか、夢だったのか…。
…とにかく助かってよかった。
そういえば、今日の夜勤はいつになくハードだった。
何が何でも眠っておきたかったから、仮眠の前、ちょっときつめの睡眠薬を患者から拝借したんだったな。
それにしてもすごい効きめ。
患者さんはいつもあんなのを飲んでるのか…
…看護師用の仮眠室の照明は小さな明かりがつかない。
省エネのためだろうか?
眠るときは電気を真っ暗にしなければならない。
さて、電気をつけて起きようか、と思ったその瞬間、
「起きちゃだめ」
とどこからか声が聞こえた。
その声は男性のようであり、女性のようでもある。
子供のようで、大人のようでもある。
不思議と恐怖感はなかった。
一体誰?
私は辺りを見るため、首を回そうとした。
すると、今度は
「見ちゃだめだよ」
と聞こえた。
まったく同じ声だった。
私は、ふと有名なある都市伝説を思い出した。
たしか、電気をつけたら死体があって、奇妙なダイイングメッセージが残されている、というやつだ。
電気はつけないほうがいい。
私は半ば本能的にそう考えた。
時間がたつ。
10秒、20秒、1分、2分…
具体的にどれほどの時間がたったのかわからない。
ただ、ひとつ言えることがある。
私は今は夜勤の最中で、仮眠室にいる。
いつまでも、こうしているわけにはいかない。
そんなことを考え、意を決し電気をつけようとすると、また声が聞こえた。
「えーと…たしか…①で…②んだったね」
ドンッとお腹に鋭い痛み。
でも…睡眠薬が残っているのかな?痛みの種類ははっきりしない。
「で、…③で壁に…④んだったな…」
お腹をなでれた感じ。
「で、内容が…⑤だったな」
今度は何も感じない。
…というか、なにも聞こえないし、
何も臭わないし、
何も見えないし、
何も考えられないし…
「…あーあ、これじゃいくらなんでも文字は無理だ。」
「…が足りないのかな?」
「もう2、3箇所刺すか。」
なにも聞こえないはずなのに、これだけは聞こえた。
「えーと『電気をつけなくてよかったな!』だったかな。」
⑤↑
①ナイフ
②さす
③ち ④かく
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話