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中編3
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白いスーツ

彼氏を踏切事故で亡くしたアケミちゃんは、そのまま三学期は欠席、卒業式にもこなかった。

姉と母からその後事故に関する話が出ることはなく、姉との友達付き合いは続いていたようだが、家に遊びに来ることもなくなった。

それから三年経った3月。思いがけずアケミちゃんと再会した。

高校生になっていた私は、春休みに隣の大きな町に友人と遊びに行き、仕事帰りの姉に迎えを頼んだ。姉は助手席にアケミちゃんを乗せていた。

あ…。

「久しぶりぃ!どーした?どーした?アケミさんがますます美しくて、驚いちゃったー!?」

そんなセリフも厭味にならない人だった。

変わらない明るい声にジョークの連発。

以前よりホッソリして、お化粧のせいでますます華やかだった。

その晩姉から、三年前の事故とアケミちゃんの話を聞いた。

・事故当夜、雪は舞ってはいたが、視界をさえぎるほどでもなく、凍結や積雪はなかった。

・車は踏切のど真ん中に停車していた。

・エンジンがかかっていたかは姉は知らないが、車に異常があったわけではない、と思う。

・彼氏は車を降りて、車の下をのぞき込むように、しゃがんでいた。

・電車のライト、音、運転士の必死の警笛にも全く反応せず、しゃがみこんでいた。

・彼氏に飲酒はなかった。

・電車と車体に挟まれ、車の下にめり込むようにして亡くなった。

「アケミは、皆が止めても、見なくちゃ信じられないって、事故現場の写真を見せてもらったんだよ。

遺体は家族が、どうにも見せられないって…。

そんで、お葬式からしばらくして、アケミのお母さんから彼氏の友達に連絡があって、私と部活の仲良かった子も一緒にアケミんちに行ったの」

「あの子、おかしくなってる…」 お母さんの連絡で姉たちがアケミちゃん家を尋ねると、そこにはやつれてやつれて変わり果てたアケミちゃんがいた。

「○○(彼氏)がね、くるんだよアケミィ、アケミィって。

もう死んじゃったんだよー、って言っても、違う違うって。

死んじゃったから、ダメなんだよ、入れないよって言いなさいって、お母さんが。

でもねー、会いたいなぁ、○○に会いたいなぁ…」

膝を抱えて、会いたい会いたいと繰り返し、慟哭して苦しむ友人に、姉たちはなす術もなかったそうだ。

姉がどうしても不思議だったこと。

事故現場が彼氏が嫌う、あの道の踏切。

誰もが何故あの道を通ったのか、と言っていたらしい。

それに、死を予感していたかのような、死に装束になってしまった白いスーツ。

もう一つ、

彼氏がまさに電車に轢かれる原因となった車の右後方?下?の異常。

「あの踏切は畑やたんぼの真ん中で、今まで事故なんかなかったよね。

アケミとドライブしているときも、やたらに車の後ろをミラーで見てたっていうし。

なんだったんだろうって…。

就職したらしばらくは、なかなか会えないかもと思って、入社式の前の日、アケミんち行ったんだよ、一人で」

時々電話で話してはいたが、顔を見るのは一ヶ月ぶり。

多少は顔色もよくなっていたが、まだよく眠れず食べれずが続いていたらしい。

クラスの友人のバカ話や、テレビの話など、事故の話は抜きで、2時間ほど滞在した。

「また連絡するね」と姉が帰るとき、

「そうそう!わかったんだよ!」と急にアケミちゃんが明るい声で叫んだ。

それまでの笑顔は見せてくれたが、疲れ果てた感じとはあまりに違ったので、姉はゾクッとした。

「え、何?」

「○○がね、もう来なくなったんだけど、

最後に来たとき…」

こう言ったのだそうだ。

「アケミ俺わかった!

ほら、車のミラーにうつっていた白い物。

なんかひっかかっていたの、

あれ、俺だよ!

俺だったんだ!」

アケミちゃんは続けて

「でもね、私違うと思う。白いスーツ、自分でカッコイイと思っていて、自慢してたから、言えなかったんだけど、

私が見た事故の写真、スーツは血で真っ赤だったんだもん…」

姉は、怖いとか一切思わず、どうしてこんな悲しい事が友達に起きてしまったのか、ただ悲しくて悲しくて、悲しかったそうだ。

終わりです。姉から聞いた実話です。

読んでくださってありがとう。

いつも皆さんの投稿を楽しませてもらってます。

怖い話投稿:ホラーテラー はるみさん  

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