とある晴れた日。
「父さん、向かいの加賀さんから回ってきてた回覧板、次ドコだっけ?」
リビングでくつろいでいた頭のいい父親は、息子にそう尋ねられて
「そういう事は回覧板に書いてある」
と指摘する
「それはそうとユウイチ、悪いが庭の粗大ごみを持って行ってくれないか?」
父親は力持ちの息子に言った
「ついでにテルテル坊主も、もう下ろして一緒に捨てておきましょう」
抜け目無い娘が後ろからそういうと
「了解」
と息子はリビングを出た
少しして、細かい事によく気が付く母親が
「家の中で蚊が死んでいた」
と言う
「うるさくて叶わないよねぇ」
と娘は答え、父親は
「くだらない事をいちいち報告するな」
と仏頂面で返した
「ごめんください」
と玄関から聞こえて、娘が出てみると
「先日隣に引っ越してきた峰岸あゆです。今日からよろしくお願いします」
という。
「つまらないものですが」
と粗品を差し出す峰岸さんの前に父親がやってきて
「せっかくだから、上がっていきなさい」
と言った
「お父さんこういう子がタイプ?」
冗談でおちゃらけてみると父親はムッとした表情で
「チサ、余計な事は言わなくて良い」
と娘をたしなめた
母親は峰岸にコーヒーを振舞った
母親は手芸が趣味だという事や、父親は昔ロックバンドをしていた事など
いろいろな事を話した
娘と峰岸は馬が合うようで話が弾み、そうしている間に息子が帰ってきた
「そうだ峰岸さん。ちょっとしたクイズをやらないか」
父親が峰岸に笑いかけながらそういうと、家族全員が驚いた。
「珍しい事じゃない。おれだって、人を気に入る事はあるさ」
父親はそういうと、文字を書いた紙を一枚、峰岸に渡した
【嘘ロック部 やあチサ】
「この意味が解るかな?」
「なんだろう?これ」
渡された紙を真剣に見つめる峰岸
「今日はもう帰りなさい。クイズのタイムリミットは、明日までだ。じっくり考えるといい」
はい、と答えて、峰岸は玄関に向かった
「あ、そういえば。もうひとつお隣の家の方の名前って、なんて読むんですか?」
この家のとなり、峰岸の家からだと隣の隣、と言うことになる
「あぁ、あそこは漢字一文字で輝(てる)って言うんですよ。2人兄弟で住んでいて、良くユウイチは一緒に遊んでたわよねぇ」
「そうだったんですか。ありがとうございます。では。」
そういって峰岸は帰っていった。
その夜。峰岸あゆはこの街から姿を消した。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話