僕が小学生の頃の話。
当時、キン肉マンという漫画やアニメが流行っていて、その中にロビンマスクという中世騎士をモチーフにした人気のキャラクターがいました。
このマスクを被り、近所の公園を渡り歩く男がいたのです。体格は大人のように大きかった。
ただし、僕らの中でロビンマスクと言われていた
その男は、ヒーローのように格好の良いものではありません。
僕がロビンマスクを見かけたのは3度。
一度目は公園でズボンを脱ぎ、男性の秘所を見せていた。
公園にいた僕らはひやかしていたが、女の子たちは逃げ出した。
しばらく下半身を見せて踊っていたが、大人が来たのに気づいてズボンを履き、速攻で自転車に跨って逃げて行きました。
まさに、一瞬の出来事でした。
次に見たのは、また別の公園です。僕達が砂場でメンコをやっていると、颯爽とロビンマスクが自転車でやってきました。
「ロビンだ!」
「ロビン!ロッビン!」
僕らがひやかすと、ロビンマスクは砂場までやってきて、またズボンを脱ぎました。
ブランコやシーソーで遊んでいた女の子たちが騒ぎ、僕らは歓声をあげていました。
すると、ロビンマスクは砂場に屈みこんで、ウ〇コしちゃいました。
信じられない。
すごい滑稽で。切なくなるほど臭くて。
公園にいた少年少女のすべてが、この行動にはドン引きました。
この日以来、しばらくロビンマスクは現れなくなりました。
正直、あの異常な行動は
怖かったし、誰もがほっとしているようでした。
ただ、奇妙なことが殖えはじめていました。
公園に、切り刻まれた犬や猫の死体が頻繁に落ちてました。
鯉やザリガニのときもありました。
すごく怖かったです。
女の子が道を聞かれて連れて行かれそうになったとか、手をカッターで切られたとか物騒な話も浮上してきて、
「チカン注意!」
の看板が各地の電柱に取り付けられていったのも
この頃。
通り魔って言葉を知ったのもこの頃です。
僕らを含め、近所の子供達はすべてが口を揃えて
「ロビンの仕業だ」なんて言ってました。
「通り魔ロビン」
これはもう、僕らの中で
作られた「切り裂きジャック」のような伝説の存在になっていました。
僕らも上級生になり、遊び方も変わっていきました。公園で遊ぶより、山に秘密基地を作ってお菓子を持ち込み、キン消し(キン肉マンのゴム製人形)のトレードや、ガンプラ(ガンダムのプラモデル)を作ったり、空気銃でサバイバルゲームをしたりもしていました。
僕らは毎日のように山へ行って夕方まで秘密基地
にいました。
あるとき、基地の中で4人の友達とあそんでいました。キン消しのトレードです。
難交渉で盛り上がっていると、一人の高校生がやってきました。
紺色のブレザーに赤いネクタイをしていて、鼠色のズボンを履いていました。
「君たち小学生だろ。こんな場所で何やってるんだい?」
彼は優しい言葉で基地の外から話しかけてきました。
「キン消しゴッコ」
僕らが言うと、その高校生は満面の笑みを浮かべて「入れて」って言いました。
僕らが「キン消し持ってるの?」と聞くと、
「新種あるよ」
と答えました。この「新種」って言葉に僕らは弱かったんですよ。
高校生は基地に入ると、
「よく出来てる」って基地を褒めてくれました。
穏やかな顔と声で、僕らは「良い人」だと疑いませんでした。
トレードがはじまって、
その高校生がポケットから出したのは5体のキン消しでした。
全部、ロビン・・・。
一気に冷めましたね。
この時に気づいたの僕だけでした。
体格もそうだけど、基地のトタン板の隙間からそっと見れば、こいつの乗ってきた自転車は間違いなくロビンマスクのでしたから。
三度目は素顔のロビンに出会ったわけです。
このときは特に大きな危害はなかったけど、彼は
バタフライナイフ持っていて、クルクルよく回してました。
みんな格好いいとか言ってたけど、僕の顔は引きつってたと思います。
僕にとっては、彼こそが恐怖とトラウマの象徴です。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話