短編2
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Mの思い。

「なあ、廃屋行かねえ?」

放課後、特に予定のない僕は、そんなMの言葉をすんなり受け入れ、学校近くの森の奥にある廃屋へと向かった。

玄関は×型に木が打ち込んであり開けることが出来なかったため、裏口の割られた窓から侵入した。

時刻はまだ16時過ぎだというのに、中はかなり暗い。

特に何かが起きたわけでもないのに、気分が悪くなってきた。

やはりこの廃屋の不気味な雰囲気がそうさせるのだろうか。

そうこうしながら30分程探索した頃だった

無惨にも破壊された仏壇のある和室で、今まで黙っていたMが急に言葉を投げてきた。

「お前、神や仏って、信じる?」

急な質問に僕は答えを窮し、押し黙ったままMの顔を見つめた。

そんな様子に気付いたのか、僕の答えを待たずにMは話し始めた。

「この廃屋には多くの成仏出来ないヤツらがいるんだよ。

こいつらは生前、神や仏に毎日熱心に祈りを捧げ、自分が極楽浄土や天国へ行けるよう願ったんだな。

ところがどうだ。いざ死んでみたら、平安の地なんかどこにもありゃしない。

あるのはこんな薄汚い廃屋と、死んでも苦しみから解放されない己のみ。

死ぬまで信じてきた救世主様はどこにもいなかったってわけさ。

ははは!マヌケな話だと思わない?笑っちゃうよね?(笑)」

Mが話をしている間中、天井、襖、床と、ありとあらゆるところからミシミシという音が鳴り響いていた。

「そろそろ外も暗くなるし、帰ろうぜ」

Mと僕は侵入してきた裏口へ戻り、久々の外界へ顔を覗かせた。

「邪魔したな。」

Mは廃屋の何かに向かって、そう呟いた。

廃屋にぶつかる風の音が、啜り泣く声に聞こえたような気がした。

その後、特に異変もなく卒業を迎え、僕は東京の大学へ進学した。

そのまま東京で就職し、あの日から10年の月日が流れたある日のこと。

地元の友達から、Mが、あの日の廃屋で自殺したという連絡が入った。

一発、拳銃で頭を撃ち抜いて。

原因は不明。Mに近しい人たちも、思い当たる節はなかったと言う。

ただ、横たわるMの傍らには、

「オレがお前らの救世主になってやる。

オレが神で、仏で、悪魔だ。」

と走り書きされた紙切れが残されていたと言う。

Mは果たして、廃屋の彼らの救世主となったのであろうか。

それとも彼らと共にあの廃屋でさまよい続け、いつ出会えるかもわからない神を待ち続けているのだろうか。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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