病院タグで、未来が映る監視カメラがあるそうだが、この話は全く逆のものが見える話である。
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三面鏡を知らない者はいないだろう。
観音開きの扉がついた鏡で、その扉にも各々鏡がついている。
それら三枚の鏡はそれぞれ向き合っているので、自分の姿をいろんな角度から見ることができるというものだ。
ここの住人なら、こんな遊びをしたことがあるのではないかと思う。
「三面鏡に自分を映し、鏡を少し閉じる。
すると、たくさんの自分の顔が映る。
もし、その顔のひとつに、自分の顔ではないものがあったら…」
…私がある怪しげな店で買った三面鏡は、すこし不思議な鏡(?)というもので、値段もすこぶる高かった。
何が不思議かというと、夜中の12時に上で述べた遊びをすると、そのたくさんの自分の顔の中に、ひとつだけ何年後かの自分の顔が映る、というものだった。
ありふれた話だ、と思いつつもオカルト好きの私はつい購入してしまった。
購入した日の夜12時。
早速私は試してみた。
古くて気味の悪い形をした鏡だが、鏡面はわりときれいだ。
…鏡を少し閉じる。
たくさん映る自分の顔。
どれも同じ顔、同じ表情だ。
しかし…よく見ると、その中のひとつに違う顔が確かにあった。
それは間違いなく私の顔なのだが、青白く、目はくぼみ、虹彩に光がない。
視点の焦点も定まっていなくて…それは、まるで死人のような不気味な顔…
というよりも、明らかに死んでいる!
…嘘である。
意外にもそこにあった顔は、若かりしころの私だった。
決してハンサムではないが、今とは違い毛も多い。
しわが少なくて、眼光にも力がある。
…彼は少し笑った気がした。
…私は鏡を閉じた。
話とはずいぶん違う。
まるで、正反対のものを映すようだ。
が、不思議な鏡であることには違いがないので、私は満足した。
それから、私は幾度となく、同じ遊びを繰り返した。
うまくいかないときもあり、成功するときもある。
成功した場合は、いつも若い頃の自分を見ることができた。
…それから何年かが過ぎた。
夜中12時。
また、私は鏡を見た。
そこには、若かった頃の自分は映らない。
かといって、年老いた自分が映るわけでもない。
映るのはまるで死んでしまったかのような、青白い、目のくぼんだ、視点の焦点が定まっていない自分だった…
何度見ても同じ顔しか映らなかった…
私は、鏡を閉じ、とぼとぼと彷徨った。
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…それは不幸な事件だった。
彼は、ひどくオカルト好きで、そのためなら金を惜しまないことですっかり有名になっていた。
住んでいる家も大きい。
つまり、金持ちと思われたのだ。
確かに彼は金を持っていた。
怪しげな鏡を大金はたいて買ったこともあった。
結果、それが彼の不幸を招いた。
夜、彼が怪しげな鏡を覗いていると、強盗が彼の家に侵入した。
以前から目をつけられていたのだろう。
強盗は有無を言わさず、彼の背中をナイフで刺して彼を殺害。
現金はもちろん、他にも金目のものはほとんど奪われた。
しかし、鏡は大きかったためか、盗られずに残った。
…主を失ったその家は、今は誰も住んでいない。
しかし、誰が見たのか、
夜12時になると、
三面鏡がかってに開かれ、かってに閉じられるという…
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話