短編2
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格安ラブホ

12月に入ってすぐ、彼と大ケンカをした。

このままだとクリスマス前には別れてるかも…そう思って、イヴの計画なんか立てなかった。

結局、クリスマス直前になって謝ってきた彼。なんだかんだ仲直りして、イヴを一緒に迎える約束をした。

イヴ当日。

食事を終えてホテルに向かうと、さすがはクリスマス。どこのシティホテルもラブホも満室だった。

私は家で過ごしたって全然構わなかったけど、彼はしつこく探し続けて、行き着いたのは人気のなさそうな格安ラブホ。

外観から想像したとおり、室内は古臭くてパッとしない感じ。ベッドもお風呂も狭かった…。

これじゃあ、安いわけだわ…と妙に納得した私。

聖なる夜に、この寂れたホテルは哀しかったけど仕方ない。私達はベッドに入った。

普段から、営みの際には照明をかなり落とす私達。でもここは、照明以前になんとも雰囲気が暗い………。

お互いの表情がかろうじて読み取れるくらいの中で、スポーツをし、ピークを迎えた彼が、いきなり私の上にどっと自分の体を預けてきた。

ぐったりしている彼の体はとても重く、私は苦しかったので両手で彼を下ろそうと自分の体を少しずらした………。

彼の背中越しに………

男の顔が見えた…………。

ベッドの脇に立って背中をぐぅっと丸め、覗き込むように顔だけを彼の背中に近づけている……。

暗がりに、男の顔が浮き上がって見えた。その淀んだ目と視線が合った………。

……私は悲鳴を上げることも、ベッドから這い出すことも出来ず、ひたすら彼の腕をグイグイと引っ張った。

怖くて怖くて、どうしようもなかった。

なんで彼は起きないのっ!?なんで!? なんでっっ!?

ぼんやりと薄暗い部屋の中を、男は顔をこちらに向けたまま歩いていき、浴室のドアの前ですぅーっと姿を消した………。

彼はまだ私の横で呑気に眠っている。

私は彼を揺さ振り起こし、お願いだから今すぐここを出てっ!! と懇願した。

そして、寝ぼけ眼の彼を連れて、そのホテルから即刻離れた……。

以上が、Yちゃんから聞いた話です。このくらいの時期になると、いつも思い出してしまう。

その格安ラブホは未だ普通に営業しており、新たな心霊スポットとして地元ではジワジワと人気になりつつあります。

私は根性無し子なので、試したことはありませんが、金〇にお住まいの方、ピ〇ロというラブホを見つけたら一度スポーツしてみて下さい……。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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