短編2
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暗闇に浮かぶ白い足

私が中学生の時に体験した話です。

夏休みも終わりに近づいたある日のこと。

母は、実家へ用事があると言って父と幼かった妹を連れ、出かけていきました。

家に残ったのは、私と高校生の姉、祖父母の4人でした。

夕食も終えてのんびりしていた頃、祖母に風呂へ入るように言われ、従って入ることにしました。

時間帯は午後8時。

着替えを持って廊下に出ると、外からは虫の鳴く声が聞こえていました。

風呂がある方向へ歩こうとした時、向こうに何かがあるのを見つけました。

それは白い足。

白い足は風呂場へと続く廊下の向こうでじっと立っています。

一瞬姉か祖母が立っているのかと思ったのですが、よく考えてみると灯りもつけずに人が暗闇に立っているなどあるはずもなく、姉や祖母でもないのです。

姉は二階におり、祖母は先ほどまで居間に私といたのですから。

背中に嫌な汗をかいたのがわかりましたが、私はその場から逃げ出すこともなく白い足を見つめていました。

その時、白い足は私のもとへゆっくり歩き始めました。

足音がまったく感じられなかったので生きている存在ではないのは明らかでしたが、歩いてくる白い足は戦前中の女性が穿いていたモンペも身に付けていたんです。

白い足が徐々に私に近づいたとき、背後から名前を呼ばれました。

名前を呼んだのは祖母。

我に返った時、あの白い足は消えていました。

何があったのか聞いてきた祖母でしたが、何でもないと答えてそのまま風呂に入りました。

しかし、熱いお湯に入っているはずなのに、やけに左肩だけが異常に冷たいのです。

頭を洗っているときも、ひたすら誰かに見られているように感じました。

あのモンペを穿いた白い足は何だったのか?なぜ私の前に現れたのでしょう。

風呂場で感じたあの冷たさは今でも忘れることができません。

ただ、ひとつ言うことができるのは私が住んでいた地域は戊辰戦争の戦場になった場所で、多くの方が亡くなられたといわれています。

怖い話投稿:ホラーテラー 彼方さん  

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