先日、知り合いと久しぶりに飲んだ時の話をしましょう。
知り合いとは叔父にあたる人で豪快なおっさんです。この人は霊とか神とか一切信じない現実主義の無神論者です。
僕のばあちゃんはこういったオカルト関係には明るい拝み屋さんです。叔父はとーちゃんの弟です。
おっちゃんはお堅い公務員。今をときめく?東京電力のように安定した給料を貰い好き勝手やって、尚給料ガッポリのエリート。そんな叔父が何年かぶりに帰省した時でした。
叔父が実家で帰省していると親父(家主)はお使いを頼まれた。暇だったのと昔から頭が上がらないのとで用事を引き受けた。
隣町の世話になっている檀家にあたる寺に届け物を持って行った。
帰り道に山にある公園に寄った。娘も同行していて、ちょっと遊んでやろうとしたんだ。
着くと娘はジャングルジムでそこに来ていた子供がいたので一緒に遊んで過ごしていた。
暇になった叔父は散歩コースを散策する事にした。
しばらく歩いていると柵で囲ってある鉄塔の近くを通った。
すると鉄塔の中断辺りに少年が立っているのが見えた。
叔父「こらー!危ないぞ!何してんだ!」
少年「かぬ、申し渡しこんぬき!?」
と言葉がよく理解出来ないような台詞だ。
叔父は続けて「危ないだろう、何やってんだ!今行くから動くな!」
そう言って鉄塔に近づいて金網に手をかけ、登り始めた。
するとパッと消えていなくなってしまった。
ん?っとなって呆然としていると近くの木の影から覗くように狸がこちらを見ている。
少し動いて、またこちらを見て見つめている。
叔父は現実主義で、今までこういう非科学的、非論理的な事は認めない人間だがさすがに、「狸や狐に騙されるってのか!?」と理解したらしい。
叔父はばあちゃんに昔教えられたようにタバコに火をつけた。
すると後ろから「ケーン!」と甲高い声がした。
あれっ?と思い振り向くと真っ白な綺麗な綺麗な狐がお座りの格好をしている。
ビョンピョンと飛び跳ねて林の方へ入ってしまった。
しばらくして振り替えると狸もいない。
顔を上げても鉄塔にいたはずの少年もやはりいない。
妙な出来事だが、さすがリアリストだけあって、(まあこんな事もあるか、気のせいだ)と割り切り帰路に着いた。
家に帰ってばあちゃんに事の成り行きを話した。
叔父「気のせいだと思うけど、変な話だよねー。まあちょっと最近仕事疲れてたから仕方ないか」と笑って言うと、ばあちゃんが
ばあちゃん「あんたそりゃあの山の神さんだよ。白い狐だろ?主みたいなもんだ。あんた和尚さんから何か土産貰ってたんだろ?」
叔父「うん、開けてみるわ。なんだろ?」
包みを開く。
おはぎがぎっしり。
ばあちゃん「やっぱりね。あの山の神さんはおはぎが大好きなんだよ。肉とか稲荷よりずっと好きなんだよ。変わってるね」と笑顔で言い放った。
叔父「またそんな事言って。まだ変なオカルトみたいな事言って。この世の中そんな事ある訳ないじゃないか?」
ばあちゃん「じゃあなんでおはぎが一個無くなってんだい?あんたちょっとポケット見てごらん?」
叔父は何か気付いた様子でポケットを探る。ポケットにはツクシと葉っぱ、ドングリが沢山入っていた。
ばあちゃん「そういう事もあるし、そういう世界があるって事だよ。今まで信じてなかったろうけど、認めなさい。なかなか神様に会えるなんてないんだよ。その歳で」
叔父はさすがに認めざるを得ないようでばあちゃんに言われて翌日おはぎを備えにその公園に行った。
今の所なーんもないけど、叔父のオカルト嫌いが無くなって嬉しい僕です。
ばあちゃんと話した時に色々聞いた事をまとめます。
白い狐は神様。少年も白い狐が姿を変えた存在。狸は本当に狸。多分神様に使えている(狸が狐に!?)らしい。
神様はからかっただけ。基本神様は暇だし、イタズラが大好き。特に狐や狸の神様は人を驚かしたり、騙したりするのが好き。ばあちゃんはこの狐には会って事ないけど、変な少年には昔何度か会っている。
この山の神様は力が弱い。(多少はあるからちいさな願い事位は叶える力はある。熱下げるとか、好きな人と会えるとか程度は)
でも怒らせるとスゲー力を出す(丁寧に接するべき)
以上です。
久方ぶりに投稿致しました。
震災についても聞いてみました。ばあちゃんは被災地にいる元教え子に頼まれて肉親が亡くなった人に頼まれて話を聞きました。
しかし、今はまだ四十九日を過ぎてないから話聞ける状態じゃないし、亡くなった方が多過ぎるのと、海で亡くなった、水で亡くなったとの理由で対話出来ないそうです。
これから時間が経って、あの辺りにいらっしゃる坊さんや神主達がきちんと供養を済ませてからでないと近づくのも怖いと言っていました。でもばあちゃんは落ち着いたら必ず供養するそうです。霊感の強い人はあの被災地の映像が大変怖いそうです。
人々の悲しみ、無念、痛み、残してきた想いや人への念が溢れていてテレビが見れないと語っていました。
最後に被災された方への哀悼と、無念にも亡くなった方へ祈りを捧げます。
長い話を読んで下さったこのサイトの閲覧者の方ありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 松葉さん
作者怖話