長い話しになりますし、あまり面白くも怖くもない話しです。それでも良かったらお付き合い下さい。
夜中の二時を過ぎた辺りは視界に入ってもいけない
必ず首が見える格好をする事
涙を見せてはならない
近付く時は歩く毎に鈴の音が聞こえるようにする事。目を閉じるか視界に入らないように後ろ向きで近付く事。
刃物は体から離してはならない
歯を見せてはならない(笑うべからず)
口を聞いてはならない
さて、何だと思います?
これはある田舎に伝わる荒神様の御神体を年に一度掃除する時の決まりごとだそうです。
神様と言ってもただマイナスを押さえる為だけでご利益やプラスになる事は何一つない迷惑な神様です。しかし一年に一度は祝詞を唱えて、掃除などお世話をしなければならないという嫌ーな存在です。
資料にも残っているそうですが、この地方を実質的に管理する地主。本来ならば庄屋とかになりそうですが、この地方では神主がそれをしていたそうです。
代々管理してきましたが、やはり中にはとんがった奴と言いますか、何でも反発してみたいリアリストのはみ出し者は出て来たみたいです。
ある時この若者は前述の「いけない」とされている決まりごとを全て無視して反対の事をしてみたそうです。
「こんな馬鹿な事に従う必要はない!たかが掃除で何を恐れるか!下らん」
そう言って一年に一度の大切な行事を行いました。
何か起こる事を期待した若者にはなーんも起こりませんでした。
その日床に就くまでは……
枕が動く
揺れる
叩く
だんだん可笑しな気配を感じる
そば殻の枕の中身が出てきて「ざざざっ」と音がする。
すると両足が石になった感覚がした。
足を覗くと大きな、それは大きな頭だけに腕だけ頭から生えたような、まさしく鬼が足を押さえつけている。
「刀はないか?刀はないか?
ワシを見た。ワシを見た。足貰う。足。首はならず。首ならず」
そう言うと去って行った。
震えた後、若者は叫び、すぐに父親の神主の住む家まで走った。
事の成り行きを父親に話した。
「ワシがお前の育て方を間違ったようだ。どうしていい付けを守らなかった?
ただ、お前は全てを失ってはおらん。信心が僅かでも残っていたようで鈴だけは身につけていた。足は諦めろ」
若者は決まりごとにある鈴だけはつけていた。今で言うお洒落のつもりで腕に鈴をいつも着けていたのだ。
その日の朝までに彼の足には鬼の爪痕だろう跡が残っていた。そして日を追う毎に腐り始め、やがて落とす事になってしまった。
彼はその日の出来事を悔い心を入れ替え立派な神主に変貌を遂げたそうだ。
高慢な軽はずみな性格や、人の話しを聞かないような愚か者ではなく、それは立派な人格者になり、近隣から立派な地主様になったと伝えられている。
その彼の残した書物が今も残っている。
長い話しを聞いてくれてありがとうございました。ばあちゃんに昔話をねだって聞いて来ました。
真意は定かではないけど、昔話だよって聞かされました。
ただ、ちゃんと実在する神社の話しでした。
怖い話投稿:ホラーテラー 松葉さん
作者怖話