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中編4
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案山子サン

夏休み、田舎のばぁちゃん家に遊びに行った。

俺はその時中2で、ばあちゃんに会うのはじいちゃんの葬式以来だ。

なにしろ家が遠かったから、行って帰るのにもかなり時間がかかる。

いままでも、今年は行こうかと家族の中で話がでていたが、

結局、電話をかけて

「今年も行けないんだけど、元気にしてる?そうそう、聞いてよこの前さぁ、、、」

としばらく話す程度になっていた。

5年も会ってなかったから顔も良く覚えていなかったけど、

電話で話すとき、いつも

「うん、うん、」

と相づちをうってくれて、笑ってくれて、相談にものってくれて…

俺にとって友達のような、いいばぁちゃんだった。

ばぁちゃん家は、先程もいったが、かなりの田舎で、普段都会でくらしている人にはちょっと暮らしにくい場所にある。

が、俺が住んでいるところも都会ではなくて、近くにコンビニやスーパーがないのは慣れっこだった。

そろそろ、肝心のそこで体験したコトについて話す。

山や田圃ばっかの所なので、

想像しにくい所もあるかもしれないが

俺も文章がうまいほうではないので許して欲しい。

ばぁちゃん家は、民家が集まっているあたりの細道をかなり上った所にあった。

バスは細道のちょい手前までしか通ってなかったので

そこからは歩いた。

夏の真っ昼間なので、かなり暑いだろうと思ったのだが、

両側からはえた樹木が影を作ってくれていた。

道の所々にある苔むした石垣や錆び付いたガードレール、哀愁の漂う景色を眺めていると、それだけで涼しくなった気がした。

そろそろ半分上ったか、と思う頃

10メートル程遠くに、人影が見えた。

(えっ、ばぁちゃん?暑いのに立ってまってんの??)

「ばーーーぁちゃーーん。俺だよーーー。来たよーーー。」

そう叫んで駆け寄ってみると、案山子だった。

「…違った…?。」

十字にした木の棒、作業着のような物をきせて、

頭になる部分には丸めた布でも入っているんだろうか…黄ばんだ麻の袋がかぶせられていた。

顔は…。

「お前、それ誰?知り合いか?…って人じゃないし。、何コレかわいそ。ぼろぼろやし。」

「ソウタ兄ちゃん歩くん遅っ。」

後ろから、兄のハルオと弟のシュウイチの声がした。

バスをおりてから、二人とも酔ってベンチで休憩していたので、

親の了解を得て、先にばぁちゃん家に向かっていたのだが、、、

弟の言う通りか。

ゆっくり歩きすぎた。

母さんと親父も、後ろからついてきてる。

「なにソウタ、まだこんなトコいたの?てっきりもう着いてると思ったわよ。」

「なぁなぁ、ここ田圃とかないけど?なんで案山子があるんだ?」

兄ちゃんが俺に聞いてくる。

(あれっ、ホントだ。田圃ないじゃん。

何のためにあんだよ?)

「そのまえに、顔、どうにかしてやってよー。単純すぎだよ。」

シュウイチに言われて、改めてよく見てみた。

  へ  へ

  の  の

   も

    へ 

マジックで、書き殴ったかんじで顔が描かれていた。

あまりに適当で、かわいそうになってくる。

ほつれてボロボロになった作業着が、風邪に揺れる。

「なんか、懐かしいねー。お父さん?」

母さんが、かがんで案山子の顔をのぞき込みながらつぶやく。

「そうだな、父さんや母さんが子供の頃は田圃が遊び場だったからな。それに、今はこんな案山子あんまりないしなぁ。」

親父がそう言うと、母さんがおもむろにカバンからなにかとりだした。

「ナニ…ソレ。」

訝しみながらそう問いかけると、

母さんはジャーンと勢いよくこちらを向くと、なにかを握った手を差し出した。

見ると、トンボ玉の付いたストラップがつままれ、揺れていた。

「それどうすんの…。」

透明のガラスの中に、空色と藍色のラインが入っており、銀のラメがちりばめてある。

確か、母さんの携帯についていたものだ。

俺の問いには答えず、案山子に向き直った母さんは

案山子の腕(棒だが…)に、ストラップを通してぶら下げた。

「私たちが遊びに来た印と、案山子さんにプレゼント!またしばらく泊まりに来れないと思うから。」

子供みたいに笑う母さんをみて、

シュウイチはため息をつくと、

「なんか、修学旅行に来た中高生みたいだよ…。」

「何々??その哀れむような目はぁ!お母さんのコトなんだとおもってんのよっ。まだまだ衰えちゃいないわよ!」

母さん達が騒いでる間にも、案山子についたトンボ玉は、日の光を通して

控えめにチラチラと光っていた。

案山子の前からなかなか動かない俺たちにしびれをきらしたのか、

兄ちゃんと親父は

後ろを気にしながら、もうかなり先に行ってしまっている。

「あぁー、もう暑ちぃから早く行こうぜ。シュウイチも母さんも、バトルなら後でしてくれよ!」

かろうじて歩き出したが、それでも喋りながらなので遅い。

「ばぁちゃん、遅いなぁって待ってると思うぞ。」

そう言うとやっとケンカをやめてくれた。

(チッ、兄ちゃんも親父も、タイミングよくいなくなりやがって。。。)

しばらくしてから、ふと後ろが…というか案山子が、気になり振り返ってみた。

しかし、坂は緩やかなカーブになっていたらしく、

案山子のいたあたりは、もう見えなくなっていた。

(…。なんかキモかったな…、あの案山子。)

前に向き直ったとき、あんなにうるさかった蝉の声がしなくなっているのに気づいた。

怖い話投稿:ホラーテラー 草介さん  

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