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短編2
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手応え

小6の冬。

冷たい雨の降る夜だった。

家族は寝静まっていて、漫画に夢中になっていた僕はふと時計に目をやった。

いつのまにか深夜2時をまわっていた。

もうこんな時間か。

お風呂に入って寝よう―…

僕はタンスから着替えを取り出し、部屋を出てお風呂場へ向かった。

脱衣場へ入り、備え付けの戸棚を開け―

「あれ」

いつもなら清潔なバスタオルが畳んで仕舞ってある筈なのに、戸棚の中は空だった。

ここ最近雨の日が続いているから洗濯が追い付いていないのだろうな。

もしかしたらお母さんたちの部屋の中に干してる最中かも。

狭いアパートの我が家では、雨の日の部屋干しは決まって両親の部屋だった。

僕は納得して、居間のすぐ隣の両親の部屋に行った。

二人を起こさないように、音をたてないようにそうっとガラスの引き戸を引く。

当たり前だが電気を点けずに暗闇の中に目を凝らす。

目が慣れてきたのか、なんとなく物の輪郭が捕らえられた。

両親が寝ている布団をじっと見つめる。良かった、ぐっすり寝てる。

そして―…あった。

洗濯物は探すまでもなく、部屋に張られた洗濯ロープに大量に干されているようだった。

早速僕は部屋に入り、洗濯物たちの前に立つ。

そして端から手触りを頼りにタオルを探していく。

違う。

違う。

これも違う。

部屋の中には振り付ける雨の音と両親の寝息だけが響く。

家族や自分が着るからだろう、手触りだけでもどの服か結構わかる。

これはお母さんがいつも履いているチェックのスカートで…これは僕の体操服かな?

服を品定めするデパートの客のように、独特のふわふわした手触りを求め生地に触れていく。

次の生地に手を伸ばした時、僕は手を止めた。

それはごわごわで荒い感触で…ザラザラした土のような何かがこびりついていて。

けれど僕が手をとめた理由はそれじゃない。

なんだ

なんだ

この僕の手を押し返す

この 手応えは

丸みをおびた

弾力のある丸太のような

まるで

まるでズボンを履いてる人間の―…

「離せよ」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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