初めまして、こんにちは。
いちかと申します。
この話は、わたしが今でも思い出して背中を毛虫が這うような気持ち悪さを感じる「顔」の話です。
私が小学生の時、東京の宇奈根と言う場所に住んで居ました。
東京の中でも田舎だったように思います、よく友達と遊ぶ公園も小さなもので雑草も生い茂り、公園を囲うように植えられた木は好き勝手伸び放題、その所為で公園は半分程が陰になっていました。
それでも当時の小学生の行動範囲は狭いもので、毎日飽きもせずその暗い公園で遊んでいました。
ある時いつも一緒に遊ぶ友達が風邪で学校を休み、私は友達を嵌める落とし穴を掘る事を思い付き、その日は一人で公園へ向かいました。
私は滑り台の真下に落とし穴を掘る事を決め、持って来たスコップで湿っている冷たい土を黙々と掘っていました。
この公園は、先にも書いたように薄暗く狭いので、人気がなく、辺りは住宅街なのに嫌に静かでした。秘密基地のようで私たちは気に行ってたのですが。
とにかく黙々と掘り続け、ついに完成した穴に(小学生が掘った穴なので、おそらくものすごく浅かったでしょうがw)満足しわたしは穴をまたぐ(?)ように座り込みました。↓みたいな感じですw
↓穴
足→\〇/←足
そう言えば今は何時だろう、後はこの落とし穴を枝と葉っぱと土で隠さなきゃ、と、ふと上を見上げた時、空には傾き掛けた夕日と雲と飛行機以外に、見慣れないものがいました。
なんだか細長いやつが。
当時身長140cmだったわたしから見たそいつは、わたしがどれだけがんばっても登れなかった、この公園の主的な大木のてっぺんから、こちらを見下ろしていました。
わたしはその時、そいつが木に登っている、と言うよりも、その木の一番上の枝から生えてる、と思いました。
だって似てたんです、よく顔に見える木のコブに。
そいつがそのままにゅーんて伸びて、てっぺんからさらに伸びて、しなっている、みたいな感じです。
分かりにくいですねw
すみませんw
とりあえず木の枝の先っぽに不格好な顔書いたようなやつが木のてっぺんから2mくらい突き出てしなってわたしを見下ろしてました。
不思議と怖くありませんでした。
それは、目が合っていないから。
あいつが見ているのはわたしじゃなくて‥‥この穴?
と、気付いて穴へ目を落とした瞬間、わたしは硬直しました。
穴の中には顔が有りました。
ぷくぷくと肉付きが良くて、目を有り得ない位にまんまるに見開き、口はストローでも吸うようにすぼめた表情の、顔が、穴の底いっぱいいっぱいに詰まっていました。
その丸過ぎる目は、枝のやつを見ていました。
わたしは今、化け物の睨み合いの真ん中にいるんだ、と、何故か冷静に考えました、それはどちらもわたしを見ていないと言う安心感からだったのでしょうね。
しかしその根拠もない安心感はすぐに崩れ去りました。
近くでカラスが鳴きました。
わたしは思わずそちらに気をとられ、すぐに視線を自分の股の間の顔へと戻しました。
顔が、私を見ていました。
その瞬間、先ほどまでの他人事のような考えは消え、頭は恐怖で真っ白になりました。
見てる、見てる、見てるよ
すぼめた口からそんな声が聞こえてきた気がして、わたしは動けない足をゆっくり引きずって、穴から後ずさりします。
血走ってもいない、綺麗な白目の真ん中に墨汁をポトンと落としたような目が確かにわたしを追っています。
ゆっくり、ゆっくり、完全に「顔」が視界から消えたとき、わたしは木を見上げました。
そこにいた、木の化け物は、まだ穴を見ていました、ただ、先程よりかなり伸びて来ているようで、しなって、穴を目指しているようでした。
わたしは穴が見えなくなるまで、後ずさりで公園から出、その後は走って帰りました。
次の日、友達と一緒に公園へ行きました。
どうしてもあの穴がどうなったのか見に行きたかった私は、話すと着いて来てくれないと思い、昨日の話は一切せず。
穴は、なくなっていました。
綺麗さっぱり。
雑草はそこだけ生えていませんでしたが、土は長年踏みならされたように固く、とても人間が昨日今日で埋めたものとは思えませんでした。
ただ、小さな枝が、穴があった場所に刺さっていました。
抜けたら封印が解かれるようで、枝には触りませんでした。
大木には、コブが増えていたように思います。
真相は分からないまま、わたしは友達に何も言えないまま、公園には近寄らなくなりました。
それ以来、わたしは「意図の読めない表情」が苦手になりました。
例えば怖い話を読んでいても「憎悪に満ちた顔」「気持ち悪い位の笑顔」などは怖くないのですが「無表情」に近い意味の分からない表情に拒否反応を持つようになってしまいました。
怖い話投稿:ホラーテラー いちかさん
作者怖話