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中編4
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オーラ

ある日の夜中、急に目が覚めた。よほど熟睡したせいなのか、

再び寝付けないでいると、炭酸系のジュースが無性に飲みたくなり、

自販機に買いに行った。

私の飲みたい炭酸飲料は1階の自販機にしか売っておらず、

3階からエレベーターを使って1階まで降りた。

そのときは松葉杖で歩くことを許可されていていたので、

時間はかかったが1人で何とか済ませた。

ナースコールを使っても良かったのだが、その日の当直の

ナースは口うるさいおばはんナースだったので、よけに眠れ

なくなると思い、使わなかった。

救急搬送口の近くにある自販機でジュースを買い、隣にある

ソファーに座りジュースを飲んでいると、遠くのほうで微かに

救急車のサイレンが聞こえた。

程なくして、数人の救急隊員がタンカを押しながらバタバタと

入ってきた。

よく見えなかったが、タンカに乗っているのはおじいさんの様で

口に人工呼吸器のようなものを当てられ、ずっと声をかけられて

いた。

「○○さん、分かりますかー。○○さんー」

私の前を通り過ぎる一瞬の出来事だったが、あのおじいさんは

もう助からないと分かった。

なぜなら、おじいさんからは見たことも無い、真っ黒なオーラが

出ていたからだ。

翌日、いつものように元気なナースにそれと無く聞いてみた。

やはり、夜中急患で入ってきた男性は亡くなったそうだ。

うすうす気が付いてはいたが、ショックだった。単純に人の体調が

見える能力と思っていた。人の『死』まで見える能力は正直いらない

と思った。

だけど、この能力で見えるのものは人の『死』だけではなかった。

入院中は病院だけに、たまにあの黒いオーラをまとった人を見かけた。

何度見てもなれないもので、見るたびに気持ちが沈んだ。

そんな時は、あのナースさんだな~と思い、ナースステーションに行って

見た。しかし、ナースステーションはもぬけの殻。だれもいなかったので

病室に戻ろうとしたとき、奥の小部屋から、あのナースさんが出てきた。

話しかけようと近づくと目が合った。

彼女は「はっ」とした表情を見せ、その場を走り去った。見間違いかも

知れないが、泣いているように見えた。

その日の夜、昼間のことが気になって、ぜんぜん眠れなかった。私は

もう一度ナースステーションに行ってみた。

その日は彼女が当直の日だったので、昼間のことを聞いてみたいと思って

いた。

ナースステーションにつくと、彼女がいた。彼女は後ろ向きで何か作業を

しているようだった。

近寄って声をかけようとしたときに、彼女の異変に気が付いた。いや、

正確には、彼女のオーラがおかしかった。

彼女の体からはいつのも様にオレンジ色のオーラが出ていたが、首から

上は、赤黒いなんともまがまがしいオーラが漂っていた。

私はそのオーラになぜか恐怖を感じて、彼女に声をかけることが出来

なかった。

翌日の朝、彼女かいつもの時間に病室へ来た。

いつもと同じように体からはオレンジのオーラが、首から上は昨夜ほど

では無いが、赤黒いオーラが出ていた。

明らかに、彼女はどこか病んでいるのだろうが、それでもいつもと同じ

様に対応する彼女が、余計に怖く感じた。

そして、彼女と会ったのは、その日が最後だった。

それから程なくして、私は退院した。最後に彼女に挨拶がしたくて、

他のナースに聞いてみたが、彼女は私と最後にあった日に退職した

そうだ。

お礼も、あの涙の真相も聞けないままだった。

それから3日程たったある日、思いもよらないところで彼女を見ました。

テレビで流れるそのニュースは、数日前まで私が入院していたあの病院の

医師が、元看護婦に殺されたという内容でした。

その看護婦はあの底抜けに元気ナースさんでした。

私はそのニュースを見たとき「ああ、やっぱりか・・・」と、どこか

こう言う事が起きるのではないかと予感していました。

動機は怨恨で、どうやら付き合っていた医師に、ひどい捨てられ方をし、

病院にもいれなくなったそうです。

彼女が残した遺書に、そのように書かれていたそうです。

そう、彼女も元彼の医師を殺した後、自殺しました。

あの時見えた、彼女の赤黒いまがまがしいオーラはたぶん『殺意』

だったんだと思います。

どろどろとして、まとわりつくような、暗いオーラ・・・。

私はあの時、彼女に何をしてあげればよかったのでしょうか?

何か声をかけていれば、あんなことにならなくてすんだのでしょうか?

今となっては、どうしようも無いことですが・・・。

彼女は、元彼の医師を薬品で殺したそうです。

注射器に薬品を入れて持ち出し、それを彼にも、自分にも使ったのだ

そうです。

あの時、あの夜、ナースステーションでまがまがしいオーラを出して

いた彼女は、まさしくその時、凶器の準備をしていたのではないかと

思います。

あの時、話かけていたら、あるいはニュースに出ていたのは私だった

かも知れません。

後日談ですが、オーラが見える能力は今も健在です。

先日も、電車のホームに立っている男の人の後ろにいる女の人から

赤黒いオーラが出ているのを見て、背筋が凍る思いをしました。

オーラが見えることはあまりに慣れすぎて、気にならなくなりましたが、

今でも、黒いオーラと赤黒いオーラをたまに見かけると、あのときの事を

思い出します。

おわり

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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