題名通り、UFOを見た、というだけの話で、全然こわくないです。価値があるとしたら実話というところだけ。よかったら読んでください。
私の旦那は霊感体質らしい。一緒にいると、たまに不思議な出来事に遭遇する。
付き合い始めのころ、夜の港でデートをした。H県K市、古くからの港町として、わりに有名な街である。
K市には、ラグジュアリーなホテル(ラブではない)の建つ突堤がある。突堤のふち部分は豪華フェリーの船着き場。
市の管理なのか、夜になると釣り人くらいしかいない。潮が悪ければ誰もいない。
しかしそこは高級ホテルが建つだけあって、夜景がとても美しい。K港は埋立地で、遠くに大きな橋や空港、工場街などを臨む。夜にはそれらのライトがキラキラして、とてもロマンチックなのだ。
ひと気の無い夜景スポットということで、私達は缶入りの酒を飲みつつ海を見ていた。
酔いが回り、気持ち良くなった二人は、寝転び、夜空を眺めた。
いいムードである。
「あ!流れ星!」
彼が言った。
「どこどこ?」
「あの辺り‥‥赤い星が流れた」
彼は天頂辺りを指差している。そちらに視線を固定する私。
「‥‥あ!また流れた!」
二人が同時に流れ星に気づく。
「ふふふ」
「あはは」
(なんてロマンチックなの!一緒に流れ星が見られるなんて‥‥)
と、デレデレ空を見つめ続けるバカップル。
「あ、また!」
「‥‥また!」
ほぼ天頂をスタート地点に、放射状に流れ星がどんどん飛ぶ。
‥‥きょう、なんかの流星群だっけ?
学生時代、私は天文部に所属していた。いまでも天体観測が好きだ。
通常、K港のように水平線上が明るいところで流星群を観察することは出来ない。星を見るのには、空が明るすぎるのだ。
街中で見えるほど大規模の流星群は新聞に載る。ニュースでも流れる。
もしそうなら、知らないわけがない。
しかし、現実に、流れ星はどんどん流れている。色は赤。同じ地点から放射状に。
‥‥なんかおかしなかんじがする。
と思っていたら、急に彼が言った。
「あれ、なに?」
旦那が空の一点を指差した。さっきたくさん星が流れていた辺りに、急にひとつ新しい星が現れた、という。
旦那の視力は2.0。私コンタクト。彼が言っているものは見えない。
目を凝らす。周りの明るいものを見ないようにして、目を夜空の暗さに慣らしていく(星見のテクニック)。
すると、旦那が指差すあたりに、確かにさっき無かった小さい、白い光が見えた。
とは言え、ジーっと見ていれば等星の低い星が見えてくるのは当たり前。私は「急に現れた」なんて全く信じなかった。
旦那がやけに注視しだしたのでふたりはその星を見つめ続けるハメに。
旦那「‥‥ねえ、あの星、動いてない?」
私「そりゃ星は、東から西に動くよ(笑)」
旦那「そんなもんか」
しかし、ジッと見ていると、確かにその星は動いていた。周りの動かない星の間を、一方向に、まっすぐ。
(人工衛生かな?)
ご存知の方もいらっしゃるだろう。人工衛生は肉眼視でき、一方向にじっくり、ずっと動き続ける。私は天文部の観測会で見たことがあった。
ところが、その星の動きはおかしかった。人工衛生に比べてやけに速い気がする。そして‥‥どうも、たまに蛇行しているように見えるのだ。
(まあ、酔ってるしな。気のせいだろう。でもなんか面白いから見ていよう)
旦那「ねえ、あの星、蛇行してない?」
「(ドキ。やはり?でもこの人も飲んでるし)気のせいじゃない?」
「あっ!」
星が大きく跳ねた。そしてランダムなジクザグコースを、ハイスピードで進み始めた。
(こんな動きする天体があるんだあ‥‥すごいね、宇宙)
酔いもあり、私は感心して眺めていた。
旦那「‥‥ねえ、これ、UFOじゃないの?」
「えっ!」
‥‥確かに、よく聞くUFOの動き?だし、星にしては動きがおかしいし、でも、でも‥‥
え〜〜?
ジクザグしていた「星」はいつのまにか北の山脈に向かってまっすぐ進みだしていた。
北。北に動く天体なんてあるわけがない。急角度でハイスピードなコース変更する飛行物なんて、聞いたことがない(あったとしても、そんなハイカラなものが極東の田舎を飛ばないだろう)。
酒で呆けた頭に閃いた。
ここはH県K市。
あの山は、六〇山‥‥。
ホラテラ読者様方ならご存知であろう。UFO目撃、地波の異常な狂い、牛女など、怪談話がてんこもり。有名な〇甲山である。
まだUFO(もうこう呼んでいいだろう。あきらかに未確認飛行物体なのだから)は飛びつづけている。
私たちは、じっくり観察をした。
これは飛行機ではない。海上の見える範囲にK空港があるのだ。比べる対象はたくさん飛んでいる。コースがまったく違う、光の色・スピード・動きが違う。
だんだんUFOは大きく見えてきた。機体が約2〜3ミリメートルに見える距離である。
「アハハぁ‥あれ、絶対飛行機じゃないね」
「うん。葉巻型で、胴のところにベルト状にライトが回ってない?」
「赤、緑、赤、緑‥‥」
「交互に回ってる(笑)パチンコ屋みたく派手だ。なにあのデザインwクリスマスかww」
ゆっくり観察できたので(飛行機の倍くらいの速さだった)有り難みもなく、そのあまりの派手な姿に、ふたりの脳内には「軍艦マーチ」が流れていた(笑)
UFOは軍艦マーチを流しつつ(イメージ)だんだん遠くなり、最後はR甲山の向こうに消えていった。現れてから見えなくなるまで、約15分。長い。
これが私のUFO目撃譚です。こわくない上、マヌケで申し訳ありません。本当に本当に、笑っちゃうくらい派手な姿だったのです。
夜空をずっと眺めるひとは少ないですよね。毎日ずっと見ていたら、意外と、日常的にUFOは飛んでいるのかもしれません。こんな派手なのに、気がつかないものなんですねえ‥‥。
(N突堤で犬の散歩中、毎日眺めていれば遭遇するかもしれませんww)
ちょっと怖かったのは、いくら調べてもその日は絶対に流星群ではなかったことと、
あとで母(K市近く在住)に目撃譚を話したとき「R甲山に飛んで行くUFOを見た?よく聞くよ」とフッツーに言われたこと。
そうなの?!
親にUFOの話なんてしたことなかったからな。わざわざ言わないだけで、身近な年寄りは、ふつうに怪異を見聞きしているのかも‥‥。
しかしいちばん怖いのは、こうやって公の場所に書いたら、黒い服の男たちが来るのでは?てことです。その怖れゆえ、この目撃譚は数年前の話。
もしなにかあったら、オカ板で実況して、殿堂入り「きさらぎ駅」のような名著を残すことをここに誓っておきます。てか、絶対来ないでほしいけど!
乱筆乱文失礼いたしました。読んで下さって、ありがとう。
怖い話投稿:ホラーテラー カエルさん
作者怖話