短編2
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山の大穴2

「まーくん…今の…聞こえた?」

「…うん」

暗闇の奥からする男の声。

「おーい。おーい。」

僕達を呼んでいるのか?

「助けを呼んでるのかな…?」

遭難者か?怪我をして動けないのかも?助けに行かなきゃ。

しかし闇に響く男の声。不気味この上ない…僕達はどうするか悩んでいる間も男は何度も何度も僕達を呼ぶ。

「まーくん…どうする?」

「外に出て大人に助けてもらおう。俺達じゃ無理だ。」

僕達は急いで来た道を引き返した。男を助けたい気持ちなのか、早くその場から逃げたい気持ちなのか、僕達は足場の悪い洞窟の中を懐中電灯で照らしながら全速力で走った。

「おーい。おーい。」

僕達を引き止めるように男の声が後ろから響く。

しばらくして僕は妙なことに気付きまーくんを呼びとめた。

「なんだよ。」

「…気のせいかな…来る時こんなに歩いたっけ?」

「…」

「そろそろ外に出ていい頃だろ?なのに光さえ見えないなんて変じゃないか?」

「…やなこと言うなよ…」

いつも強気なまーくんもさすがに焦っていた。それからまーくんは他にも妙なことに気付いていたようだ。

「…言いたくねぇんだけど」

「…何?」

「声…」

「おーい。おーい。」

「引き返してるのに何で声が小さくならないんだよ。」

確かに。外に出るのに必死で気付かなかった。まさか男がついて来ているのか?体から冷や汗が滲みでた。

「急ごう!!おかしいよ!!」

おかしい…男の声が不気味な理由。それは暗闇だからだけではなかった。その声から感情が感じられない。まるで機会のように一定の感覚で「おーい。おーい。」を繰り返す。

僕達は半泣きで走った。しかしいつになっても外に出れない。男の声が小さくならない。それどころか…どんどん男の声が近くで聞こえる。

「おーい。おーい。」

「おおーい。おおーい。」

「おおおおい。おおおおい。」

男の声がすぐ後ろまで来ている。でも二人とも怖くて後ろをむけない。

「おおおおおおおおい」

男の声が耳元まで来た。その瞬間。体が固まった。金縛りなのか、びくとも動かなくなった。叫びたくても声がでない。

前を走っているまーくんは動かない僕に気付かないのか、見捨てたのか、懐中電灯の光と一緒に小さくなって見えなくなった。

続く

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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