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短編2
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そんなの効かない

先の戦争で唯一地上戦が行われ、中でも最大の激戦区だった地域に勤めている男性から聞いた話。

おそらく日本で一番有名であろう戦争資料館の近くにオープンしたコンビニが、三日で閉店。

夜になると見えないお客さんがひっきりなしに来店した為だというが、監視カメラに何が映っていたかは教えてもらえなかった。

24時間営業が当たり前のガソリンスタンドも、この地域では日が沈むと共に店を閉める。

生前の生活にあまり関係がなかったであろうガソリンに悪戯をされることはないが、やはり人と灯りのあるところに群がる習性があるらしく。

事務所に詰めているとノックの音が後を絶たないので、夜は閉めてしまうのだという。

この地域は農地も多い。

あるさとうきび畑では、風もないのに一本のさとうきびがブンブンと揺れている。

それは丁度、子供がしゃがみ込んでさとうきびの根本を掴み、楽しげに揺らしているかのようだった。

しばらく見ていたが、そのさとうきびは延々と左右に揺れ続けていた。

農道を走っていると、原因不明のトラブルで車が突然止まってしまうことも多いのだとか。

しかし地元の人は慣れたもので、近くの畑で作業している人達を呼び集めて車を押してもらう。

そしてある地点までくると

「ああ、もういいよ。ありがとう」

と言って、何事もなかったようにエンジンをかけて走り去ってゆく。

彼も何度か車押しの手伝いをしたことがあるが、まだ境界線はわからないと言っていた。

そんな彼が一番驚いたのは、曰く

「あの地域の人達って、装備ゼロなんすよねぇ」

つまり、御守りや塩やお札といった防衛若しくは対抗手段を、全く取っていないのだと言う。

理由を聞くと、

「だって、そんなの効かないってわかってるから」

彼の地の戦後は、まだ終わっていないようだ。

怖い話投稿:ホラーテラー 琴魚さん  

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