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中編3
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人間に憧れた神様

全知全能の神様は人間に憧れていた。

天界にある神の城…という狭く堅苦しい場所から外に出て、下界の人間のように自由に世界を駆けたかった。

そこで神様は考えた。

どうすれば、自分は城から出られるだろう?

簡単なことだ。

人間に変身すればいい。

仮にも自分は神である。

人間に変身することなど、自己の呪力を持ってすれば、あまりにもたやすい。

かくして神様は人間に変身した。

見た目は酒場のマスター風だ。

この姿で、どこぞの町の酒場で自分が働いていれば、きっとたくさんの人間にめぐり合えるだろう。

そして、いろんな面白い話や、場所の情報を聞けることだろう。

彼は人間界の酒場にうまい具合に入り込み、多くの人間と交流を交わした。

その中で、

「ある採石場のトロッコに、絶対に止まらない仕掛けのものがるらしい」

という情報を聞きつけた。

何と、不思議なトロッコであろうか!

彼は、早速トロッコのある採石場に向かった。

トロッコは複数あった。

しかし、線路が途中で切れているものが大半だった。

トロッコに乗ると確かに動くが、線路が切れたところで止まってしまう。

どのトロッコの線路もそんな形状のものばかりだったが、ひとつだけ、ぐるぐると回り続けそうな(円状の)線路があった。

「きっとこいつに違いない」

彼はそう確信し、その線路のトロッコに乗って発進させた。

トロッコは勢いよく加速し、ぐるぐると線路をまわり続けた。

凄まじいスピード!

しかも、噂どおり止まる気配は一切ない。

…彼はあせった。

「『絶対に止まらない』なら降りられないではないか!」

トロッコの速度は常軌を逸している。

人間の姿の彼に、トロッコから無理やり降りて助かる見込みはない。

神の姿に戻ればいいのだが、この速度ではそういう呪文を唱える余裕もない。

結果、彼は20年もの間、トロッコに回され続けた。

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神が不在の天界は大変な騒ぎになっていた。

天界の城は神がいないため、城を覆うバリアのようなものの魔力が弱まり、ついに穴が開いた。

さらには、城を浮かせているラピュタで言う飛行石のような魔法の石も、その穴から落ちてしまった。

城は下界に落ちて、湖の藻屑となった。

そのため、城の中で暮らしている神の使者は何人かはその生命力で助かったが、多くの使者が死者となった。

下界では神がいないため、悪が跋扈し邪悪な宗教団体が勢力を伸ばした。

その結果、たくさんの罪なき人々が奴隷として使われ、働けなくなるとゴミのように捨てられた。

中でも幼い子供は、宗教の勢力拡大を阻止する力を蓄える恐れがあるため、無条件で奴隷にされ、死ぬまで強制労働を強いられた。

ある子供は目の前で父親を殺され、自分は捕らえられた。

その後、約10年間奴隷として働かされた。

しかし、ちょっとしたきっかけで何とか逃げ出した。

様々な経過を経て、彼は家族を持った。

家族と人間らしい、暖かな日々を過ごそうとした矢先に、宗教の権力者に捕まってしまった。

そして、その強い呪術によって石にされた。

石のまま、どこかの国の金持ちの屋敷に置物として置かれることになった。

置物となっている間も意識はあり、自分の周辺での出来事は感知できる。

しかし、手は動かせないし、声も出ない。

彼は意思のある石の置物として、永遠の時を過ごすことを余儀なくされた…

石になりながら、何度

「奴隷を抜け出せたと思ったら、今度は置物か…あまりにも無慈悲ではないか」

「神なんかいないのだろう」

「このまま死ねたらどんなに楽だろう…」

等と考えたか、回数も覚えていない。

奴隷時代に養われた強靭な精神力のため、彼は石となりながらも、発狂することさえ許されなかった…

下界は、まさにこの世の地獄となっていた…

つまらない、全知全能の神の気まぐれせいで…。

長文ゴメン。

某ゲームのアナザーストーリーです。

怖いというより、後味が悪い話かな?

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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