そこは古い病院だった。
私が入院している病室の壁や天井には、汚いシミのようなものがいくつもあった。
私の病名は…今はまだよくわからない。
医師も色々調べているようだが、はっきりしたことは教えてくれない。
ところで、私はオカルトの話にかなり弱い。
だから、かどうかわからないが、こういうたくさんのシミを見ていると、そのいくつかがつい人の顔に見えてしまうことがある。
この病室で見られるシミも、例に漏れず人の顔に見えるものがあった。
その中でも、ひとつのシミはどうみても人の顔にしか見えないくらい、不気味ではっきりしていた。
しかも、どこかで見覚えのある顔…
ある日、あまりにも気味が悪いので、シミを消すように掃除婦の人にお願いした。
…その結果、シミは消えたが、何日かするとまた出てきた。
出てきたのは一番人の顔に近いシミだった…。
この古い病院には、いたるところにシミがあった。
トイレの便器や風呂のタイル、病室の床…
当然のように、人に近い形のシミも私には見えてくる。
しかも、そのどれもが、消しても出てくるし、出てきたシミは同じ顔のものばかりだった。
苦痛にゆがみ、大きく口を開け何か助けを求める様な表情。
目は真っ黒で白目がなくて…
典型的な不気味なシミ。
最近、シミを見る回数が増えた…
不治の病で苦しんで死んだ患者の亡霊か何かが、シミとなって現れているのではないか?
こうも同じようなシミを見続けると、嫌でもそういう発想が頭の中にわいてくる。
ある日、鏡を見て、一瞬ゾクッとした。
そこに映っているものが、今まで何度も見てきたシミにそっくりだったからだ。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話