中編3
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いわくのない部屋

どこにでもあるような、とあるボロアパート。

ここに住んでいるひとりの男性が、ある悩みを抱えていた。

今どき、ベタにもホドがあるのだが、毎晩心霊現象に悩まされる…それが彼の目下の悩みだった。

彼は思った。

『きっとこの部屋には、いわくがあるに違いない』

彼には確信があった。

なにせ、夜中になれば、ベタな幽霊たちによるベタな怪奇現象が目まぐるしく展開されるのだから…。

夜、ふと目が覚めると髪の長い女が両足を引っ張っている…閉まっていたはずの押し入れが開いていて血塗れの親子がこちらを見ている…風呂に入ろうとすると小さな女の子が浴槽に沈んだままこちらを見上げている…全身黒焦げの男性が寝室の天井から逆さに降りてきて首を絞めてくる…。

それ以外にも、ちょっとしたポルターガイストやラップ現象など日常茶飯事だった。

ただ、身寄りや定職もなく、貧乏な彼にとって、この激安アパートを去るということは、駅や公園での段ボール生活に直行することを意味していた。

それだけは避けたかった彼は、この状況を逆手にとる妙案を思いついた。

この部屋にまつわるいわくを全て調べ上げ、その事実を大家に叩きつけて、家賃をタダ同然に引き下げてやる、というものだった。

『幽霊どもなんぞ、そのうち金が貯まったら、みんなまとめて徐霊してやる』

彼はナケナシの金を叩いて、探偵をひとり雇った。

そして、彼の部屋にまつわるいわくを全て調べ上げるように依頼したのだった。

それから1カ月が過ぎた頃、彼の部屋に例の探偵がやってきた。

『で、どうでしたか?』

『はぁ、それが何と申しましょうか…』

怪訝な表情を浮かべ、言いよどむ探偵。

痺れを切らした彼はこう言った。

『さぞかし酷いことが、過去にこの部屋で起こったのですね?正直に言ってもらってかまいませんよ。そういうことには強いタチですから』

その言葉を聞いた探偵はフッと息をひとつ吐くと、『これはあなたにとって、良い報告でもあり、悪い報告でもあります』と前置きして、こう言った。

『この部屋で過去に殺人や自殺、変死があったという事実は見つかりませんでした』

『え?』

『あ、すみません。少しわかり辛い言い方になってしまいましたね』

彼はまだ、探偵の言葉の意味を飲み込めていない。

『簡潔に言います………。このアパートには全部で9部屋ありますが、過去に殺人や自殺、変死がなかったのは、この部屋だけなのです』

彼は今も、同じ家賃のまま、そのアパートに住み続けている。

幽霊たちとの共同生活も、慣れてしまえば楽しいものらしい。

以前までと違うのは、彼以外の住民の家賃がチョッピリ安くなったことくらいだ。

☆ここまで読んでいただいた方にお願いがあります。この文章には探せばいくらでも落ち度はあるし、そもそも面白いと感じてくれた読者もあまりいなかったかもしれません。ですから、批評される皆さん自身が、この文章をもとに、面白い展開に作り替えるというのはどうでしょうか?これは単にぼくのワガママであり戯れに過ぎませんが、そういったことが出来るのは、ホラテラの住民とシステムがあったればこそなのです。

普段、辛辣な言葉を浴びせかけるだけの荒しのみなさんも、少しは頭をひねっていただいて、投稿者の気持ちを少しでも理解していただけるなら幸いです。荒しだろうと、ホラテラの住民であることにかわりはないのですから。『ホラテラの未来に栄光あれ!』

怖い話投稿:ホラーテラー 久々に来てみた三流投稿者さん  

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