【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

短編2
  • 表示切替
  • 使い方

のぞき見

あるところに一人の孤独な人間がいた。

男なのか女なのか、歳はいくつなのか、誰も知らない。

世間はクリスマスムード一色だが、そんなもの奴には関係なかった。

家に帰り、携帯電話をいじっている。机の上のパソコンは調子が悪そうだ。修理に出すのさえ、もはや面倒臭くなってしまったのだろう。

別に構わないらしい。ケータイで充分事足りているのかもしれない。

奴はなにやら一生懸命指を動かしている。時々、頭を撫でながら考え事でもしているのか、指が止まる。

そして、また何か思いついたように、ひたすら両手の親指を細かく動かしている。

私はそっと奴の頭の上から、一体何をしているのか覗いてみることにした。

ほぉ、どうやら長々と怖い話を書いているようだ。

満足げにうっすら笑っている。

そのまましばらく奴の行いを観察してみた。当然、奴は私の存在に全く気付いていない。

奴がチッと舌打ちをした。

ケータイ画面を見ると、他人の書いた怖い話が表示されている。なかなかポイントが高い作品のようだ。

奴は不満そうにキーを押した。ナニナニ、『BAD』と書いてあるぞ。

んっ!?また『BAD』か?あら、また『BAD』……『BAD』…『BAD』……。

おっ、やっと『VERRYGOOD』を押した。奴の気に入る作品がようやく出現したのか。

それなら私も一読してみるかな。

……なんだ、この話、奴がさっき一心不乱に書き続けていた怖い話じゃないか………。

私はいたたまれなくなって、その場から姿を消した。

可哀想なアヤツにどうか幸あれ……。

怖い話投稿:ホラーテラー サブレさん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ