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昔々のお話です。
「あぁ、すっかり遅くなってしまった。」
彦兵衛が、飲み友達である安吉の家を出た時はもう夜中の二時を回っていた。
気心の知れた仲間と楽しく飲んでいるとつい時間を忘れてしまうものだ。
妻になんて言い訳しようか、などと考えながら彦兵衛が帰り道を急いでいると、向こうから沢山のちょうちんの灯りが見える。
(何だあれは?)
その灯りはだんだん近付いてくる。
近くまできてやっと分かった。
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なんとそれは弔いの行列だったのである。
皆一様に白い着物を身に付け、遺影を抱いた人、お棺をかつぐ人、着物のそでで涙をぬぐう人………
(しかしこんな真夜中に弔いなどするものか?)
彦兵衛は気味悪く思ったが、この近所で行われている弔いであればもしかしたら彦兵衛の知り合いが亡くなったのかもしれない。
そう思って行列の中の一人に声をかけてみた。
「もしもし。こんな真夜中にお弔いですか?どちらのお宅の弔いですかな?」
すると行列の全員が一斉に彦兵衛のほうを振り返った。
そして数秒後には、跡形もなく消えていた。
「ひえーっ!」
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彦兵衛は一目散で家に帰った。
しかし家には誰もいないのである。
妻も幼い子供たちも、どの部屋にも見当たらない。
こんな真夜中にでかけるはずもないのに…。
いっそう恐ろしくなった彦兵衛は、先ほどまで一緒に飲んでいた安吉の家へと向かった。
安吉「あれ彦さん、どうした?酔っ払いすぎて迷子になったか?(笑)」
彦兵衛は事のいきさつを安吉に話した。
安吉「へぇ〜不思議なこともあるもんだ。とりあえず朝になるまで、うちで休んでいきな。」
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翌日。
朝になると彦兵衛と安吉は連れ立って
彦兵衛の家へと向かった。
家に着くとカンカンに怒った妻がいた。
妻「あんた!安吉さんに一晩お世話になるくらい飲んできたのかい!」
彦兵衛「何言ってる!確かに時間は遅くなったがちゃんと家に帰ってきたのに、お前たち誰もいなかったじゃないか!」
家の者は皆ポカーンとしている。
妻「あんたこそ何言ってんだい?私たちはずっと家にいて眠っていたよ?」
その場は、彦兵衛が飲み過ぎて勘違いしたんだろうということで丸く収まった。
しかし数日後。
彦兵衛が亡くなった。
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彦兵衛の弔いに参列した安吉は、行列のいちばん後ろを歩きながら考えこんでいた。
(あの日、彦さんが言っていたことは本当だったのかもしれないな…。)
その時、ふいに声をかけられた。
「もしもし。こんな真夜中にお弔いですか?どちらのお宅の弔いですかな?」
(…真夜中だって?)
安吉が振り向くと、紛れもなくあの日の彦兵衛が立っていたのであった。
以上、まんが日本昔話より
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話