中編3
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絵画『佇む女』

姉の話なんだが、あまりにも気味が悪い内容なので投稿させていただいた。

10年以上も前の話なんだが、つい最近、思い出してしまった。

姉の友人から手紙の形で来ていたので、そのまま抜粋させていただいた。

長い文章だが、ご了解願いたい。

内容の虚偽はこれを読んだ方の判断に委ねる。

『N子(姉の名)さん。

昨年、パリに遊びに来てくれたとき、私が見せた「佇む女」を覚えていますか?

 

作者不詳、100号はあろうかという人物画です。

どこかの家の中が背景でキャンパスのほぼ中央に佇む女性がいて、両手を後ろに廻して、微笑んでいるあの油絵です。

この絵は以前にも話した通り、スペインで入手した品ですが、私が一目見た瞬間から、その絵の虜になってしまいました。

何が私をあれほど引きつかせたのか?

私は油絵を自宅のリビングに置き、一日に30分は眺めるようになってしまいました。

 

 

それほどまでに「佇む女性」に惚れこんでいた私が、いま絵を処分しようとしている。

N子さんが日本へ帰ってから1週間くらい経ってからのことです。

あの絵の変化に気づいたのは。

 

何気なく絵に目をやったときに唇が少し開いているように見えたのです。

以前は確かに唇を閉じていたのです。

それでもしばらくすると、次第にそんな気持ちはなくなっていきました。

 

ところが、また1週間も経った頃、彼女の唇が大きく開いていることに気がついたのです。

今度は気のせいなんかではありません。

確かに絵は変化しているのでした。

それ以来、私はますます絵にのめり込むように、それこそ1時間おきに少しの変化も見逃さないというくらい観察していきました。

ゆっくりとですが、少しづつ、少しづつ、絵の中の彼女の動態は変わっていったのです。

1か月も経つ頃には彼女の姿は口を大きく開き、両手は後ろのまま、肩を前方に突き出した姿になっていました。

N子さん、私は気が変になったのでもありませんし、あなたをからかうつもりで、ペンを執っているわけでもありません。

本当にあったことを書いています。

ですから、もうしばらく私の話を聞いて下さい。

話を続けます。

さらに数日経つと、今度は両手が見え始めました。

数週間経つと、手に持っているモノが明らかになっていきました。

なんと片手に斧、もう片手には鎌を持っていたのです。

さらに絵の彼女の姿がだんだんと中心に近づいてくる感じで、遠近法の法則で姿・形が大きくなってくるようでした。

1日に1㎝ほどのゆっくりとした歩みですが、確実に絵の中心を進んできています。

徐々に大きくなる彼女を見るうち、私の不安も高くなっていきました。

 

大きく開いた口、光輝く鎌の刃と斧の刃、カッと見開いた瞳、異常なほどのリアルさで私に迫ってきているのです。

このままでいくと絵の一番手前に来る頃には、彼女の姿もゆうに1m半を超えるでしょう。

それよりもっと気になる事は、その後にどうなるのか?ということです。

絵の中の彼女は、恐ろしいほどの禍々しさが感じられます。

私に対して悪意すら持っているような感じなのです。

このままでいくと、彼女の背丈が私と変わらないくらいに大きくなるまであと2週間もかからないでしょう。

それまでになんとか絵を処分しなければ・・・

 

N子さん、私は怖い。

怖くてどうしようもない。

どうしても処分できない・・・・。』

姉の話(当時)によると彼女はその2週間後に他界したそうだ。

死因は不明とのこと。

あの絵は最後にどのような結末を迎えたのか?

 

怖い話投稿:ホラーテラー M・Yさん  

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