これは、2008年の夏に
俺が実際に体験した話。
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俺は深夜に放送されていた新耳袋が大好きでよくそれを見ていた。
ある日、インターネットで新耳袋のゲームがPSPで発売されていることを知った俺は近所の小さいゲーム屋に向かった。
店に入り、PSPゲームの棚を片っ端から見ていると
中古でかなり安い値段で売り出されていた「実話怪談 新耳袋 一ノ章」を見つけた。
迷わず新耳袋を買って家に帰った。
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家に帰って袋を開け新耳袋を取り出す。
パッケージを見ると、すぐにでもやりたい気持ちがこみ上げてくる。
でも俺はこういうものはとことん楽しみたい人間なので、
深夜2時の丑三つ時まで待ってからやろうと決めていた。
俺は今すぐやりたい気持ちを抑えながら、他のことをして夜まで時間を潰した。
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深夜1時30分。
「おおおおwあと30分!」と静かに一人でテンションが上がる俺。
すぐに始められるように準備だけ済ましておくことにした。
新耳袋のパッケージから新耳袋のUMDを取り出しPSPにセットし、イアホンを耳に掛けて音量を最大まで上げる。
窓は開けっぱなしでカーテンだけを閉めて、解説書を読みどういうゲームなのか確認する。
解説書を読むと立体音響でナレーションが話を読んでくれるとか。
初めてのシステムに「なに、この音読システム。ステキだわぁ。マジ惚れそうだわぁ。」と感動した。
そんなこんなで気付くと時間は1時58分になっていた。
慌てて外れていたイヤホンを耳に掛け
PSPの電源をつけ部屋の明かりを全て消す。
完全に真っ暗だ・・・
見えるのは、暗闇に光るPSPの画面だけ。
PSPの時計を見ると1時59分。
すぐに部屋の隅に移動し、PSPの時計をじっと見つめて2時を待つ。
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深夜2時。俺は新耳袋を起動した。
するとPSPの画面が暗くなり文字が浮かび上がる。
「このゲームをして心霊現象が起きても、販社は一切責任を負いません。」
マジっすかぁぁ!?wwとテンションが更に上がる。
オープニングムービーで鳥肌が立ち、これは期待できるとゲームを開始する。
始めると質問が二、三出てきて、その答えに合った怪談を読んでくれる。一つ一つの話は大体四、五分で終わる短い話だった。
質問に応じて選ばれた一話から五十話までの話をひとつずつ聞いていく。
すると、一三話目が終わった頃。
ロード画面でゲーム音が少し消え、外でごみ袋を引きずるような音が聞こえ始めた。
ガサガサ・・・ガサガサ・・・
「こんな時間に乞食?」と思ったが、
この付近で俺は乞食を見た事がない。
よく聞くと俺の部屋から道路を挟んだ電柱の辺りで聞こえる。
あまり脅威に感じなかったのと早く次の話が聞きたかったので外の音を無視して新耳袋を再開した。
三つくらい話を聞き終えると外の音は消えていた。
酔っ払いか何かだったのかな?と思い、次の話を聞き始めた。
さらに話を二、三聞き終わり一息ついて時計を見ると、2時半になろうとしていた。
一息着いて背筋を伸ばすと片方のイアホンが落ちて外の音が聞こえた。
ガサガサガサ・・・ガサガサガサ・・・
音が戻ってきていた。それに、さっきよりも近い。
道路の真ん中辺りだろうか。
鳥肌が少し立ち、俺はイアホンを耳に戻して新耳袋を再び始めた。
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PSPで時間を確認すると、もう3時過ぎ。
俺は、ひとつの話を聞き終わるごとに外の音が気になるようになってきていた。
4時になる前に全部聞き終えたいと思い、次の話を聞き始めた。
十六話「もののけの息」が始まろうとした時
外の音が部屋の前の駐輪所でぐるぐる円を描いて回っていることに気付いた。
何故か足音は聞こえない。まるでごみ袋だけが這いずり回っているような感じだ。
一定の速さで円を描いて回り続けている。
ゲームより外の音が何なのかが気になるようになり、俺はイヤホンを外して壁に耳を当てて外の音に集中した。
ひたすら「ガサガサガサガサ」と回り続けている。
ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ
音に集中して聞いているうちに嫌なものが脳裏に浮かんだ。
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人のような何かがごみ袋から出ようと、もがいている姿だ。
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その瞬間、全身に鳥肌が立った。
怖くなって、すぐにイヤホンを耳に掛け、外の音を忘れるために話を聞き続けた。
話に集中して聞き続けていると外の音は気にならなくなった。
語りの人に感謝した。
話も終わりに近づきもののけの息の正体が画面に映ったのと同時に
「ドンッ」
と俺の部屋の壁に何か重たい物がぶつかったような大きな音が鳴り響く。
皆が起きて来るんじゃないかと思うほどの大きな音で、壁に密着していた俺の体に直に振動が伝わってきた。
反射で体が壁から離れるとイアホンが耳から落ちて外の音が聞こえる。
ずるずる・・・ぺちゃ・・・
心の中で「今の音なにぃぃぃ!?何ですかぁぁっ!?」と叫んだ。
カーテンを凝視し硬直する。
声も出ない。
そして気付く。
何かが当たった壁の上には窓がある。
窓は全開で網戸と空き巣対策用の柵があるが
大人の男が本気で力を入れれば、ひん曲がって大人一人容易く通れそうなものだ。
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怖くてカーテンを開くことすらできなかった。
もう目の前の恐怖を否定することしかできなくなった俺はイアホンを耳に掛け窓から離れて新耳袋を再開した。
何事もなかったかのように新耳袋の話を聞き続ける。
ほとんどの話を聞き終えた頃には、さっきあった事など忘れていた。
そして、最後の話を聞き終わると隠し映像が流れた。
これで全部終わりか・・・と一息つきPSPの画面の外を見る。
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するとカーテンの隙間から光りが差し込んでいた。
PSPの時計を見ると4時を過ぎていた。
朝の光に安心し俺は眠りについた。
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翌年の2009年の夏。
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深夜1時50分。
去年と同じ状況でPSPに新耳袋のUMDを突っ込む。
メモリースティックに記録された新耳袋のクリアデータを消去し、新耳袋を起動する。
俺は前回の体験の怖さを忘れ、次はどんな事が起きるのかとワクワクしていた。
前回と同じように部屋の電気を消し、イアホンをつけて話を聞き始めた。
すると、四つ目の話の途中でだんだん息苦しくなってきた。
まるで肺を誰かに握り締められているような息苦しさで
吸っても肺が大きく膨らまない。
息苦しくて、だんだんと視界がかすんでくる。
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「結構やばいかも?」
「いや、俺殺しても死なないし余裕だろ?」
と自問自答。
なんとなく負けたくないので新耳袋を続行する。
四つ目の話が終わり、次の話にいこうとした時。
呼吸ができないほどに肺が締め付けられる。
意識がだんだんもうろうとしはじめ、気を失った。
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目を覚ますと、朝になっていた。
PSPを見ると床に落としたようでバッテリーが少しズレて電源が切れていた。
なんかの呪いかな?ヘタしたら死んでたのかなぁ?とか軽く思いながらも
俺はあんまり深く考えずに、ほったらかした。
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数日後、いくつかのPSPやPS2のゲームの入った紙袋の底に新耳袋を隠してSの家に持って行った。
俺はSに中身はあんまり確認させずに「やる」と言って置いて帰った。
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それから1年後。
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Sは自宅で発狂して死んだ。
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という展開にはならなかった。
俺はSに新耳袋をやったか聞くと
Sは新耳袋をやらずにいたら、Sの弟がやったあとに勝手に売っちゃったのだと言う。
「新耳袋をして心霊体験をした」という言葉が聞きたかった俺は
「Sはビビリで、つまらんな」と思った。
作者ゐの獅子
どうもっ!ゐの獅子でっす!
読んで頂いた方、あざまっす!
話を盛らずにそのまま書いたので
物足りなく感じたりすると思います
生温かい目で読んであげてください
ヽ( ゚Д゚)ノ