ある専務車掌が列車が静岡駅を通過したのを見て車内の見回りに行った。
富士川の鉄橋をすぎて13号車前のデッキに立ったときに異変に気付いた。
名古屋で検札に行ったときには誰も乗っていなかったはずの13号車が満席になっている。
不審に思いながら車内に入るとどの乗客も押し黙って無表情で座っている。
異様な雰囲気が怖ろしくなり急いで通り抜けようとしたとき
乗客の中の老人たちが「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…」と念仏を唱え始めた。
いよいよ気味が悪くなり、彼は運転室へ行き運転士に今見たことを報告したが取り合ってくれない。
仕方なく乗務員室に戻ろうと再び13号車を通ろうとしたとき、彼は愕然とした。
満席だった車内は誰もいなくなっていた。
作者machida