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これは一年前の春の話
初めて虫の知らせというものを体験した
多分そうだと思っている
三月に入って直ぐの頃私は一人で録画した番組を観ていた
私の位置から前がTVで右に庭がある
昼間だったので庭側のカーテンはレース一枚
ボーッと観ていたら視界に白い服を着た人が庭を通って行ったのが見えた
頭も下半身もなく上半身だけ…そう見えた
あれ!?
パッと私は庭を見た
だけど誰も居ない
見間違い!?
そう思いまた普通にTVを観始めた
それから二時間位経ってまた白い服を着た人が庭を通って行った
今度はドキッとした
反射的に直ぐまた庭を見た
だけどいくら見ても誰も居ないしそのあと誰も通らない
咄嗟に嫌な予感がした
夕方でまだ全然明るいけど怖くなってカーテンを閉めきって電気を点け必死で面白い番組を食い入るように観た
だけどドキドキと不安は治まらず私は誰に頼む訳ではないけど仏様に線香をあげた
多分亡くなったじいちゃんに頼もうとしたんだと思う
それから母親が買い物から帰って来た
直ぐさっきの話をして母親の身内で何かなかったか電話をして聞いて貰うように頼んだ
もしかして誰か亡くなったんじゃないか…でも父親の身内は近所にいるしまだ死ぬような年でもない…
確率的には母親の田舎宮城に住んでいるお姉さんの所のお姑さん…かなりの高齢で確か老人ホームに入っているって聞いてたな…
母親ははいはい、じゃぁ夜九時過ぎに電話してみるわ…なんて軽く言ってた
そして父親も帰って来たのでまた話をした
私は過去に入院先の病院で亡くなってる人を当てた事がある
と言っても食後に煙草仲間さんに声をかけに行った事その病室の奥に絶飲食のお爺さんが寝ていたんだけど私はその人を見てあの人ヤバいって咄嗟に感じたんだ…でも病室には入れないし死んでるかどうかも確認した訳でもない…
でもヤバいって看護婦さんに言いたかった…嘘だったとしても…
結局先に喫煙所に行こうとしてその病室を離れた時…そこに医師や看護婦が何人も走って入って行くのを見た
後で話を聞いたら…やっぱり死んでた…点滴が終わってなかったから看護婦はただ病室の入口から点滴の残りを見ていただけでそのお爺さんに近寄ってなかったからわからなかったって訳…恐ろしいよね
そんな過去があったからさ、父親は直ぐ信じてくれて線香をあげてくれたんだ
夕食も食べ終わりみんなで普通にTVを観てたんだけど…私は早く九時にならないか…そればかり思ってた…早く電話して貰いたかったから…
夜八時過ぎ…家の電話が鳴った
父親と私は咄嗟に目が合った
まさか…まさか…それしか頭になかった…
『はい〇〇です…あぁ~こんばんは~はい、はい・・・・・・・・・・・・・・・え"ぇー?!』
もうそれを聞いただけで田舎だとわかったし、誰かが亡くなったというのもわかった…
父親が興奮している…
電話を切って父親が話始めた
『お姉さんからで実家の〇〇(私の従兄弟で一つ下)が山で亡くなってるのが見付かって警察から身元確認で今から来てくれって電話が来たって言うんだけど意味がさっぱりわからないから私もこれから警察に行って来るからまた後で電話するだってよ…どういう事だ!?』
もう私は半狂乱で
『だから早く電話してって言ったじゃん!!怖いー怖いー怖いー怖いー』
また当たった…パニックになり発作のように身体が震えた…
『お前のせいじゃない!!落ち着きなさい!!落ち着きなさい!!』
その日は結局電話は来なかった…
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次の日早朝電話が来た…
その従兄弟は実は一週間前に仕事に行ったまま行方不明…会社にも行っておらず…実家で手分けして探していたが見付からず…捜索願を出したがそれでも連絡がなかった…
もう一度警察に行きもっと探して欲しいとお願いに行った直後…行方不明の次の日の朝に職場から反対方向の国道を走っているオービスの写真が見付かった…
田舎には自殺の名称と言われる森があり…そこの山奥に車が止まっていたのを通りすがりの人が目撃したものの、次の日も車はそのまま止まっていて雪に埋もれているのを同じ通りすがりの人が発見…もしやと思い入って行ったら首を吊っていたらしい…
死後一週間経っていた…
母親の身内はみんな地元に住んでいるが私達だけ関東に住んでいるので遠い…
最後のお別れをしに来たのか…
来年の三月…一周忌を迎える…
東日本大震災…田舎はみんな無事だった
私は彼が助けてくれたのだといまだに信じている…
その首を吊った森…
小さい頃良く田舎のお爺さんが山菜等を採りに行くのに孫で長男の従兄弟を連れて行っていたという
お爺さんはそこが自殺の名称と言われていたのを知っていたのかはわからない
でも従兄弟は何でそこを死場所に選んだのか…
遺書がないので誰も理由がわからない
作者れこれこサン