短編2
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急所

どこのクラスにも、お調子者っているでしょ。

俺が小6の時も幸男って奴がちょこまかしてて道化役だったけど、本人が図に乗るほどはクラスメイトからは好かれてなかった。

軽口に毒があって、聞く奴によっては、笑いより不愉快がまさってたからなんだろうね。本人は人気者を気取ってたけど。

担任が産休になったから、代理教師が来たんだ。その先生は女性で三十歳くらいだったかな。

板書の字がびっくりすぐらいきれいだった。

とても穏やかな先生で、叱ったりするのは見なかったな。

教師と生徒がお互いに馴染んできたある日、授業が済んで、帰りのHRの時、幸男が手を上げて何事が発言したんだよ。

何言ってるのか聞き取れなかった。先生も同じだったみたいで、もう一度言うように促したみたい。

すると幸男は、先生に近づいて、耳打ちするくらいの距離で、話した。

次の瞬間、幸男はビンタを食らって吹っ飛んでいた。

先生の、普段の柔和なニコニコ笑顔が一変し、吊り上がった目が幸男を睨み付け、唇を奮わせながら歯を食い縛り、そして、こめかみや額に太い血管が浮き出ていた。

それは、憤怒の表情だった。

女教師は幸男の胸ぐらを掴み、頭を柱に叩きつけ、顔面を殴り続けた。

ゴン、ゴン、ゴンと物凄い音が響いた。

その豹変と暴力に、女子たちは泣き叫んだ。

なにか、尋常でないものを感じた俺は走って逃げた。

幸男は死んではいないけど、残念なことになったらしい。

先生は逮捕されて、教師を辞めたと聞いた。

自殺した、という噂もある。

なんにせよ、あの時、幸男が何を言ったのかすごく気になるんだけど、聞いたのは先生だけだったようだ。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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