詳しい場所は伏せますが、わかる人にはわかるかもしれません。
夏も終わり頃だった。
俺と彼女は三崎でマグロを食いにいった後、ぶらぶらドライブして、夜には海が見えるホテルにチェックインした(休憩だけど)
窓からは砂浜と夜の海が見える。
窓のない閉鎖的なラブホテルよりは外が見える
ここはいいなと思った。
最初は。
風呂に入ってても目の前の全面ガラスからは夜の海が見える。
上がってから事も済んで電気真っ暗な中まったりしてた。
休憩時間も終わりに近づき、身支度してる時は外は風が出ていて窓がガタガタ揺れていた。
どっかの隙間からか風の音も漏れているみたいだ。
電気はつけずに外からの微かな明るさの中、服を着替えてる時だった。
コンコン…?
風の音に混じって小さな音がした。
最初彼女は気づかなかったみたいだが、壁をノックしてるような音だった。
「?」俺はその時は何も思わず反射的にノックし返した。
またコンコン…と返ってきた。
「なんか向こうから誰か壁コンコンやってるんだけど」
直感も何も感じずに、間抜けな俺は彼女に言った。
けどその直後、なんか嫌な予感?感覚がしたんだ。隙間からの風の音、窓の向こうの夜の海、暗い部屋、壁の音。。色々複合して何だか急に恐くなった。
彼女も同じく感じたのか「なんかここやだ、早く出よう」と、急いでチェックアウトした。
狭いホテルの地下駐車場から出る時、彼女がずっと無言なのが気になって、「なになに?なんか黙ってると怖いじゃんよ」と振ったら
「なんかね、車に乗って駐車場から上がってく時に、○○(俺)の後部座席に人が見えたの。それが、私にそっくりで無表情で前を見つめてて…」
幻覚だろ、と俺は空笑いしていつもより車飛ばしてその場を離れた。
もうあそこには二度といきたくない。
そして海辺のホテルを怖がるようになってしまった俺がいる。
作者FOX狩り