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中編4
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私の住む街は、海沿いの漁師町で御座います。威勢の良い風土柄で御座いましょうか、可愛い子供達も思春期ともなれば勢い盛んな不良へと成長して行くので御座います。

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私達のグループもあながち例外ではなく、高校生にもなれば皆でバイクを乗り回す日々を送ったので御座います。

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当然、溜まり場も御座いまして、そちらは林道と急坂を下りきった萎びた海岸が私達の溜まり場だったので御座います。

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ある日の事。

学校帰りに友人Kとバイク二人乗りで海岸へ向かったので御座います。普段は大凡20人程がたむろしているのにも関わらず、何とも運悪くその日は誰もいなかったので御座います。

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私とKは「まあしょうがないなぁ」と二人でたわいもない話しに華を咲かせたので御座います。

夕焼けの時を超え、薄暗い夕闇を超え、気が付けば月明りが海面を照らす闇夜となって御座いましたが、私達は全く気にする事なく青春の理を味わったので御座います。

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「ふぅ」

話しが一段落し辺りが波音と林を揺らす風の音にだけに包まれてみますと、私はふも今の現実が何とも気味の悪いと言った感覚を憶えたので御座います。

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暗闇に浮かぶ月を眺めながら「(もう帰りたいな)」と思ったその刹那で御座います。突如Kが「わっ!」と大きな声を上げ私を呼びつつ月明かりの浮かぶ海面を指差して御座いますので、「どうした!?」と私も彼の指す指先を追う様に海面をゆっくりと見回しますと、どうやら海岸線から100m程沖合に小さな光がフラフラ浮いているのを見つけたので御座います。

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私は「気持ち悪いから、もう帰ろうぜ」とKを促したので御座いますがKの方は「UFOだ!」と興奮状態で御座います。彼のバイクの後ろに乗せて貰わなければ急な坂道を超え、暗い林道を超えて帰路に向かうなど、到底出来ない状況となっている事は理解して御座いました。

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さて、一方、海面に浮かぶ薄気味悪い光りで御座いますが、何やら少しづつ大きくなっている、いや、此方へ近付いている様に思えるので御座います。

Kは相変わらず興奮の坩堝で御座いますが流石に海岸線間近まで光の球体が近付いた時は、少々気味が悪くなったので御座いましょうか。

K「気持ち悪いからそろそろ帰ろうか??」

などと少々唇を震わせながら弱音を吐いたので御座います。

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元来、弱音など全く口にする事の無いKから出た恐怖は、益々私の恐怖心を煽り、それは更に彼の恐怖心を駆り立て、気付けば二人して「わー!!!」と大声を上げバイクまでの数十メートルの距離を全力疾走したので御座います。

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私は即座にバイクの後部座席に跨り、ふと海岸の光の球を眺めたので御座いますが既に球体は姿を消し元の薄暗い海岸線へと戻って御座いましたので、「(消えたかぁ)」と安堵感を得たので御座いますが、よく目を凝らして海岸線を見てみますと、何かが列になって波打ち際を動いている様に見えたので御座います。

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Kは焦り夢中にバイクのエンジンを掛けようとして御座いましたが、どうやら光の球体が見当たらなくなった事を認知したので御座いましょう。安心した様子で帰支度を整えて御座います。そんなKに私は訪ねたので御座います。

私「なぁ、あの海沿い動いてるの何かなぁ??」

K「ん??確かに何か動いてるなぁ。なんだありゃ。」

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と二人して遠くを覗き込んで御座いますと、突然、私達の目前を人影が横切ったので御座います。

それも、一人や二人ではなく数十人、いや、下手したら数百人横切ったかもしれません。身なりから兵隊である事は直ぐに理解できたので御座いますが、彼らは皆、私達の方を振り向く事無くただ一列になって目前を通り過ぎ海の彼方迄行列を構成しているので御座いました。

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彼等の行進に音はなく、蜃気楼の様に浮かぶ亡霊に、流石の私とKも腰が抜けんばかりの大パニック状態で御座います。真横で永遠兵隊の行進が続く中、慌ててバイクのエンジンをふかし、顧みる事なくあっという間に海岸を後にしたので御座います。

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海岸から程なくすれば、冒頭お伝えした通り急坂が御座います。普段、バイクは二人乗りで御座いましてもするすると急坂を登って行くので御座いますが、私達の焦りを他所に何故かこの日ばかりはエンジンが唸るばかりで一向に進んで行かないので御座います。

私「おい、なんなんだよ!」

K「知らないよ!!思い切りふかしてるだろ!」

などとやりとりをした様な気が致します。

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「ブン!ブン!」

K「なんで登らないんだよ!!」

慌てるKを余所目にバイクの後部座席の私は、ふと気する物が御座いましたので、恐怖に慄きながらゆっくりと後を振り返ってみたのです。

すると。

私の顔先10cmの処に、私をにらめ付ける顔を見たので御座います。髪は肩程まで不始末に伸び、目は鬼の様に釣り上がって御座います。顔中しわくちゃで口は目頭程まで裂けておるでは御座いませんか。

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「うわー!!!」

私は半狂乱となり、前を向き直しKの肩を拳で数発打ち付けたので御座いますが、向き直している最中、その長髪亡霊がしっかりとその手でバイクを抑えて居るのを目撃したので御座います。

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それから数秒後、バイクは急に坂を登る様になったので御座います。

私達はアクセル全開で坂道を駆け上り、疾風の如く林道を貫きいて帰路についたので御座います。

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翌日、Kは自らの肩を友人に見せ、こう自慢しておりました。

K「見ろよこのアザ、これ、バケモノと戦ったアザだぜ。スズキも見てるんだぜ!」

それは紛れもなく私がブン殴った痕である事は云うまでも御座いません。

おしまい

Concrete
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