短編2
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クリスマスの憂鬱

仕事のためそのアパートに引っ越したのは

秋風が吹き始めたころだった

それが出たのは引っ越しをして三日したときだった

仕事から戻ると

急に部屋の中の瘴気が濃くなっているのを感じた

ふと気付くと後ろに

血だらけで、すごい形相をした、

赤いワンピースを着た女が、四つん這いで迫ってきた

「あーあーだめじゃないか、そんな格好をすると姿勢悪くなるよ

 ほら立って、そんな血だらけの顔して、タオル貸してあげるから拭きなよ

 髪もボサボサじゃないか、ついでにお風呂にも入っていいよ」

そう言って、お風呂に押し込めようとしたとき、彼女はすぅーと消えた

次に彼女が現れたのは三日後のことだ

以前と同じ状態で彼女は現れた

僕は前回と同じ対応をし

彼女はやはりお風呂に押し込められると消えていった

しかし、ちょっとだけ瘴気が薄くなっているような気がした

それから、彼女は現れるたびに少しづつ変わっていった

まず四つん這いを辞め

血だらけだった顔はだんだん血の量が少なくなり

乱れていた髪もまとまってきた

そして表情もだんだん和んできた

そのころには部屋の瘴気はほとんどなくなっていた

ある日、ぼくは彼女に服をプレゼントしてあげた

女性雑誌を見て、できるだけおしゃれにしたつもりだった

すると彼女は急に何か言いたそうな顔になった

僕が「何か言いたいことがあるなら言ってごらん?」

というと、彼女はポツリポツリ話し始めた

要約すると

彼女は生前、夫の暴力に苦しめられていたらしい

そして、遂にそれに耐えかね夫を殺し自分も自殺したのだという

実は僕はそのことを知っていたが、黙って聞いてあげた後

今まで何度も言ってきたセリフを彼女にも言った

「君の境遇は同情する、しかし罪は罪だ

 君は行くべきところへ行き、罰を受けなくてはならない」

彼女はそれを聞くと

「最後にあなたに会えてよかった」

と言い、ニコリとすると消えていった

最初で最後の笑顔だった

この地域での仕事は彼女で最後だった

ほかの霊たちは全て、天に帰って行った

僕はただ一人となった部屋で報告書を作成した

次の仕事場は決まっている

ふと気付くと、今日がクリスマスであることに気づいた

僕はつぶやいた

「神様、天使が人間に恋をしてはいけない理由がわかった気がします」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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