うちの親父はよく寝言をいう。
ある夏の晩、俺は深夜まで友人と遊び、自宅へ車を走らせていた。
自宅に帰る途中にはAダムがあり、そのルートを通るのが一番早かった。
丁度Aダムの辺りに来たとき、カーラジオを聴きながら、ふと時計に目を落とすと深夜2時を回っていた。
早く帰ろうと思い、アクセルを踏む足に力を込めたとき、
橋の上を白いワンピースを着た女の人が歩いているではないか・・・
一瞬の躊躇の後、俺は車を停めた。
以前、友人が同じような状況で通り過ぎたら、二日後に不幸な記事が載ってしまった・・・
あの時停まっておけば・・・という話しを聴いていたためだ。
内心恐怖に怯えつつも車を降りて声を掛ける。
「あの、こんな時間にどうかなさったんですか?」
「・・・・・」
「良かったら、町まで送りましょうか?」
「・・・・・」
嫌な空気と寒気に一刻も早くこの場を離れたいと思った時、
女の口許が開いた、しかしボソボソと喋るだけで何を言っているのかは判らない。
「えっ、何ですか?」
そう言いながら近づくと、不意に女は俺にしがみついてきた!!
突然のことに俺はビックリしたが、驚いたのはそれだけではなかった。
女の体がこの世のモノとは思えない程に冷たかったからだ・・・
女は俺の耳許で囁いた、
「ここは暗くて冷たいの・・・」
俺は思わず目を閉じ、身体を強張らせた。
次の瞬間、女の身体は煙の様に消えていた・・・
俺はガタガタ震えながら車に飛び乗ると、アクセルを吹かしてその場から離れた
一秒でも早く家に着きたかった、
暫く走り、トンネルを抜けると町に着く、早く暗闇から抜け出したかった。
トンネルを抜けると直ぐに交差点がある、信号は青、アクセルを踏む足に力を込める、
その時、
「行くな~!!!!!」
車内に男の叫び声が広がった。俺は思わず急ブレーキをかけた
次の瞬間、信号無視の大型トラックがバンパーを擦るように通り過ぎていった・・・
一瞬の沈黙の後、俺は家に車を走らせようとした時、
今度は女の声が耳許で
「死ねばよかったのに」
と囁く声がした・・・
その後は幸い何もなかったのだが、次の日の朝食時、母親が親父に向かって
「寝言はイイけど叫ぶのは止めてよね~」
と話すと、親父が、
「スマン、夢んなかで○○が事故りそうになって思わず・・・」
という、会話を聞き、俺が
「それっていつ頃?」
と聞くと、母親が茶化しながら
「2時ごろじゃ?『行くな~!!!!!』だって(笑)」
と言ったが俺は笑えなかった。
やっぱアレだな、停まっちゃだめだな
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話