中編4
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熱いトンネル

これは某所在地に住むものなら誰もが

知っている有名な話だ。

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手も凍りつくような真冬の日だった。

「ここが噂のオバケトンネルかぁ~。」

Mが嬉しそうにペロリと舌を出しながら言う。

「みたいだね。」

冷静を装いながら冷や汗を流した僕が言う。

「やめとこぉやぁ~。こないことしとったら命がいくつあっても足りへんてぇ」

気が弱いFが腰を後ろに突きだし、堂々と腕を組み仁王立ちをしているMの袖辺りを引っ張りながら言う。

かれこれ自転車で2時間は走ってきただろう。

僕たちは破天荒でオカルト好きなMに何も用件を教えてもらえないまま、山道を走ってきた。

Fは途中で何かに感づき嘆いていたが

帰るならひとりで帰れ、とMに言われてついてくるしかなかったようだ。

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僕たちは高校の同級生でMと僕は中学時代からの友人。

Fは今年はじめてクラスが一緒になったのをきっかけに仲良くなった。

ちなみにFは親父さんが死んで、母方の実家のあるこっちに中三の時、関西から引っ越してきたそうだ。

関西から出てきてから時間もそんなに経っていないせいか、まだ関西弁は残っていた。

そしてMは先ほども言ったがったが大のオカルト好きだ。心霊スポットを調べては、嫌がる僕とFを引きずって心霊スポットを回っていた。

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そんなMは今日も僕たちを説明もなしに心霊スポットに連れてきたのだ。

そして目を瞑りながら人差し指を上に向けて立て、自慢気に淡々と説明を始めた。

「 昔、ここで女の焼身自殺があったらしい。」

純粋なFはつぶらな瞳をぱちくりさせながら

「な、なんで自殺してもうたん?」

とMに訪ねた。

Mは待っていたぞとばかりに一瞬、間をおき

「それはな...」

辺りはシンとしている。

そして、その静寂のなかにFの息をのむ音が聞こえる。

「んなもん俺にもわかんねぇーよ(笑)」

ズコッ

もう一度言うがFは関西人だ。

僕とFは拍子抜けしたような表情でMを見つめていた。

そんな僕たちをみてMは苦笑いをしながら

「わりぃわりぃ(笑) とりあえず入ってみようぜ」

といってそそくさと行ってしまった。

勿論いく場所と目的を知らされていなかった僕とFは懐中電灯を持ってきているはずもなく、すぐさまMの後を追った。

トンネル内は青白い光でボヤボヤと照らされていてかろうじで足元が見える程度だった。

少し離れるだけでお互いの姿、顔さえ確認できない。

ポツンポツン。

落ちる滴の音が何かと恐怖をそそる。

Fはガチガチの足を何とか動かし、僕の腕にガッチリとしがみついていた。

カツンカコンカツンカツンカツンカコン

僕たちの足音は反響し、何人もの足音に聞こえた。

............,

思いの外長い。

いや、正確には長く感じた。のかもしれない...

大体トンネル出口の20m前くらいまで来たときにMが力の無い声で

「なんだよー何にもでねーじゃん。ハズレかよ~」

そんなMに僕たちは反応する余裕なんてあるわけもなくそろそろとMのあとについていく。

そしてトンネルの外に出た。

僕とFは何事もなくホッとした表情で、Mは意気消沈していた。

「早いとこ帰ろうぜー。腹減ってきちまった。」

Mは駄々をこねる幼児のような口調で言った。

「はよ帰ろーや」

Fも嬉しそうに同意した。

僕たちはもう一度トンネルに入った。

先程よりも皆、大分恐怖感が和らいでいたようだ。

Mは先頭でどんどんどんどん前へ進み、やはり気に食わないような表情を浮かべていた。僕はそれを少し距離を置きつつ静かに見ていた。

ん?

表情?

おかしい!!

ここで僕は異変に気づいた。

"トンネルが明るい!!"

2mくらい先を歩くMの姿、ましてや表情がさっきの薄暗いトンネルの状態で確認できるわけ無い。

そしてその明かりは、

赤かった...

明かりはどんどんと赤く、そして強くなり始めた。

そしてなにかが勢いよく燃えるような音がしてきた。

と、同時に物凄い異臭がしてきた。

その臭いは人間の焼けた臭いだというのは、すぐにわかった。

ゴォオゴォオ

頭の後ろがジリジリ熱くなる。

この真冬に。

僕は動けずにただただ立ちすくむしかなかった。

ィ...ァ......ァイ...

なにか聞こえる。

ナイ...ナイ.....

声はどんどん大きく、近づいてくる。

ナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイ

僕は無意識にバッと振り返った。

白い服を着た女性が燃えている。

ナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイ

炎の中から手を伸ばす女性の目は

確かにこちらを睨んでいる。

顔の皮がベロリと剥け、もはや顔の原型をとどめていなかった。

僕は動かぬ体に動け!動けよ!と必死に念じた。

すると何とか動くようになった体。

死ぬ思いで外まで走った。

FとMは外にいた。

「ど、どうしたんだよ!?いきなりいなくなって、大声で叫んでトンネルから出て来るなんてよ!」

Mは散乱した様子で大きな声を出した。

Fは

「なんでいきなりいなくなってもうたんよ!!」と...

とにかくよくわからなかった、ただ遠くに行きたかった。

このトンネルから離れたかった。

そして僕たちは各自の家へ帰った。

どうやら僕は立ち止まっていたらしい。

あの暗いトンネルで....

そして次の日、僕の左手の薬指には指輪のような形をした火傷の水ぶくれができていた。

今思うと、あの女はウエディングドレスを着ていたように思える。

Concrete
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