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初めて投稿させていただきます。
あれは、今から10年くらい前の話になります。
当時、私は○山県○山市という田舎町で、とある金融会社の店長を任されていました。
ある夏の日曜日。
会社自体は休みだったのですが、私は1人で出勤し、簡単な事務仕事を行っておりました。
夕方19時頃になり、そろそろ帰ろうかと準備を始めると携帯電話が鳴り出しました。
相手は同じ会社の部下であるT。
電話に出ると
「お疲れ様です。今彼女と、彼女の友達と3人でいるんですが、一緒にカラオケでも行きませんか?」
というお誘いの電話でした。
帰っても特別用事も無かったので、一緒に行くことになりました。
会社までTの運転する車で迎えに来てもらい、4人で近くのカラオケ店に行くことに。
(以下Tの彼女をY、Yの友人をKとさせていただきます。)
店内ではそれなりに盛り上がり、そろそろお開きということになりました。
そこでTが全員を送って行くことに。
Tが運転席、私が助手席に、YとKが後部座席に乗り込み、1番遠いKの自宅から送ることになりました。
Kの家は○市から車で40分程掛かるN市というところで、両親と同居しているとの事でした。
N市に行く道は3○9号線という山道を通って行くのが1番の近道なので、例に漏れず、Tも3○9号線をN市へ向けて車を走らせました。
山道を半分くらい進んだころ、突然雨が降り始めました。
それはもうすごい土砂降りで、ワイパーなんかほとんど役に立たないくらいの大雨でした。
結局3○9号線沿いにある、サービスエリアで雨が小降りになることを願い、小休止することに。
店内は、正面に25~26才くらいの店員が座るカウンターと、左手に簡単なゲームコーナー、右手にはいくつかの自動販売機と、テーブル、3人掛けくらいのベンチが2組置かれた休憩所があります。
私達は、右手の休憩所で缶ジュースを購入し、雨が少しでも弱くなるまでとベンチに座り休憩することになりました。
しばらく雑談なんかしていると゛ピンポーン゛。
誰かお客さんが入って来たようです。
何気なしに入り口の方を見てギョッとしました。
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そこには和傘(紙でできたような傘)をさし、着物を着た50歳くらいの綺麗な女の人が1人で入って来たんです。
その女の人は傘を入り口付近に設置されていた傘立てに入れた後、コチラに向かって微かに微笑みながら歩いて来ます。
なんだ、なんだと思っていると、その女の人は私達が座っているベンチの横まで来て、突然
「怖い話聞きたいですか?」
と聞いてきたんです。
私はわけが分からす、しばらくその女の人の顔を眺めていました。
するとKが
「面白そう!聞きたい、聞きたい!」
と言い出したんです。
すると女の人はしばらく黙り込み
「・・・本当に、怖い話聞きたいですか?」
と。
さすがにおかしいだろと思い、私は
「失礼ですけど、どちら様ですか?」
と聞いたんです。
すると、その女の人は身の上話を始めまして、何でも去年まではこの近くに旦那さんと2人で暮らしていたらしんだけど、最近他界されたと。
近くに身内も友達もいない彼女は、夜ここへ来て若者に怖い話を聞かせるのが唯一の楽しみになったそうなんです。
なんだか可哀想になった私達は彼女の話を聞くことにしました。
話自体はあまり覚えていないんですが、何か時代物の怪談であまり怖くはありませんでした。
結局3話くらい話した後、彼女は「それではごきげんよう。」
と一言言って去って行きました。
残された私達は狐につままれたというか、しばらく無言でお互いの顔を見合わせていました。
「・・・雨、やみましたね・・・」
Tのその一言で、みんな窓の外を見ると、いつの間にか雨は上がっていました。
さて帰ろうかということになり、気になった私はカウンターに座って雑誌を読んでいる店員さんに彼女はちょくちょく来るのかとたずねました。
すると
「は?どの人っすか?あなた達以外誰も来てないっすよ?」
そんなはずはありません。
確かに私達は着物を着た女性から話を聞いたんです。
なおも食い下がると、
「ちょっとやめて下さいよ。僕明日の朝まで1人なんですから。」
と言われ、仕方なくサービスエリアを後にすることにしました。
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帰りの車内は終始無言。
誰か何か言いたいんだけど、誰も何も言えない。
たまりかねたTは、カーステレオで当時流行っていたダ○スマニアってCDを掛けながら、へたくそに歌い始めました。
そのおかげで、場の雰囲気が少し緩み、
「さっきのやっぱり幽霊かな?」
とか
「店員とグルかもよ?」
とか軽口を叩きながらN市へ向けて再び走り始めました。
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先ほどとはうって変わって満月が覗く、良い天気になりました。
しばらく走り、山道を抜けるとある交差点で信号待ちにあいました。
僕は何気なしにサイドミラーを除くと
「!!」
いるんです・・・
後方30メートル位の場所にあの女性が・・・
心臓がドキドキし始めました。
幸い、気づいているのは私だけのようで、下手に怖がらせないようにと黙っておくことにしました。
もう一度、サイドミラーを確認すると、女の人はすでに消えていました。
ほっとしたのもつかの間、
「うわっ!」
とTが突然騒ぎ出しました。
運転席側のサイドミラーに写っているんです、あの女性が・・・
しかも確実に近づいています。
もう車内はパニック寸前に。
しかも彼女は、一瞬目を離すと右側に、もう一度見ると左側という風に、ぴょんぴょんとジャンプしているかのような感じで近づいて来ています。
そしてついに彼女は、車の助手席の真横までやって来ました。
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「げひゃひゃひゃひゃ」
彼女は突然笑い出しました。
しかも、腹がよじれるほどと言うか、大声で笑い出しました。
その時、それまで流れていた音楽が急に飛び出し、スピーカーからはその女の人の笑い声が流れはじめたんです。
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もう限界でした。
Tは信号が赤にもかかわらず、急発進。
スピーカーから流れる彼女の笑い声は徐々に弱まり、彼女も追いかけては来ません。
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結局その後みんな家には帰れず、N市にある24時間営業のファミレスで朝まで過ごしました。
店内で私達は何も話すことは無く、ただ黙って朝を向かえました。
朝、ファミレスから出た私達はまずKを送り、そのままT市に戻り、Yを送った後Tと共に出社しました。
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それからしばらくは何も無く、時間は過ぎて行きました。
しかし、あの事件から1週間ほど経ったある日、Tが真っ青な顔をして1枚のCDを会社に持って着ました。
「・・・店長、これあの晩に聞いたダ○スマニアのCDなんですが、おかしいんですよ。ちょっと聞いてもらえませんか?」
そう言われ、会社に置いてある有線にCDをセットする。
そこで気づいたんです。
実はこのCDは僕も持っていて、全14曲のCDなんですね。
でも、Tが持ってきたCDは有線のコンポにセットすると曲数が15に・・・
Tを振り返ると無言で頷く。
私はおそるおそる15曲目を再生してみました。
すると、
「げひゃひゃひゃひゃ」
あの時の女性の笑い声が流れ始めたんです。
私は慌てて停止を押しました。
結局Tと話し合い、そのCDをお寺に持って行くことにしたんです。
お恥ずかしい話ですが、私は若い頃暴走族をやっておりまして、少年院に入っておりました。
退院した特に保護士が1人つき、毎週その時あったことや今後の予定などを報告しに行くんですが、その保護士の方が、地元では有名なお坊さんだったんです。
膳は急げということで、その日仕事終わりに、そのお寺に行くことになりました。
しかし、その日はめちゃくちゃ忙しく、お坊さんに連絡を忘れてしまい、仕事が終わったのが夜22時を少しまわった位でした。
会社からそのお寺までは役1時間位掛かります。
とりあえずお寺の前まで行って、もし明かりが点いているようなら訪問し、消えていたら明日の朝一番に行こうということになり、Tの車でお寺へと向かいました。
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お寺に到着したのが23時10分位。
とりあえず電気は点いている。
そこで入り口まで車で近づくと、なんとお坊さんが腕組みをして1人入り口のところに立っているんです。
しかもかなりの怒り顔で。
とりあえず車を停め、降りようとすると、
「お前ら何をした~!!」
といきなりぶち切れで私達に迫って来るんです。
「少し前から変なモノがウチに近づいて来るのはわかっとった。まさか○○(私の名前)だったとはのう。とりあえず中に入んなさい。」
そう言われ、私達は戸惑いながらもお寺の中へと入りました。
「・・・今お前さん(Tを指して)はとんでも無いモノに憑かれとる。どういういきさつでそうなったかちょっと話してみなさい。」
私達は、1週間前に起こったことをなるべく詳しくお坊さんに伝えました。
「なるほどのう・・・相手してもらえるのが嬉しかったんだろう。お前さんの方にしっかり抱きついとるね。こうなってしまってはワシの力ではどうこう出来んかもしれん。とりあえずやるだけはやってみよう。」
そこでお坊さんは電話を掛けて来ると言い残し、通された部屋から出て行った。
「店長・・・俺どうなるんですか?」
もう泣き出しそうなT。
私は何も言ってやることができませんでした。
20分くらい経ってお坊さんがお弟子さんらしき人2人を連れて戻って来ました。
「さっき言ったが、ワシの力では無理かもしれん。ただ、やれるだけの事はしよう。」
私達は広い境内へと通されました。
「お前はここから出るな。」
と、私は境内の端っこの方に座らされました。
Tはというと何かでっかい鏡の前に座らされました。
その周りをお坊さん、お弟子さんに囲まれ、お坊さん達は一心不乱にお経を唱え始めました。
その後見た光景を私は一生忘れられないと思います。
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shake
Tの首にまとわりついてるんです。
あの女の人が・・・
直接見ると何も見えないんですが、鏡に映ってるんです。
ニタニタと笑いながら・・・
「うわ~!」
「ぎゃ~!」
私も、Tも絶叫しました。
「騒ぐな!取り乱すな!」
お坊さんの鋭い声が境内に響きます!
私は鏡から目を逸らすことができません。
Tも一緒だったと思います。
しばらくお経を唱え続けたお坊さん達でしたが、ふと諦めたようにお経を唱えるのをやめました。
それと同時に、鏡の中の女性も消えました。
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放心状態のTの前に座りゆっくりと話し始めるお坊さん。
「すまん、ワシの力ではどうにもならんかった。やつの素性は分からんが、あまりにも現世への未練が強すぎてどうもならん、すまん。」
Tは放心状態なので、代わりに私はお坊さんに食い下がりました。
「何とかなりませんか?」
「ワシの知り合いにものすごい力を持った霊媒師さんがおられる。一応その人に頼んでみる。まああの人なら大丈夫じゃろ。とりあえず今日は2人共ここで寝ていきなさい。お前さんが持って来たモノ(CD)はこちらで何とかしよう。」
「・・・はい。ありがとうございます。」
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その日は境内でTと一緒に寝たのですが、Tはあれ以来一言も言葉を発しません。
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次の日・・・
お坊さんの紹介で何とかその有名な霊媒師さんにお会いしてTに憑いている゛モノ゛を払うことが出来たらしいです。
詳しい話は分かりません。
なぜならTはその後すぐに会社を辞めてしまい連絡が取れなくなったからです。
お坊さんからTはもう大丈夫と聞かされただけなのです。
結局あれはなんだったのか・・・
長文のうえ、誤字等たくさんあったかと思いますが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
~追伸~
つい、この間Tから役10年ぶりに連絡がありました。
そこで私は10年前の全貌を聞かされたのです。
今は私自身その事実を消化しきれていません。
また落ち着きましたらご報告させていただきたいと思います。
作者ミヤビ