巣くうものシリーズ第6作目、コピペです。
長いお話なので暇な人向け。
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スレ208の128です。 誘導されたんで、ここに。
洒落コワ本スレで書いた女友達Bの件について、一応もう一度説明を書きます。
・「みえるひと」な女友達Aの言では、Bの身体を出入りしている何か普通の霊と違うものがいる(寄生虫?居候? みたいな状態らしい)。
・B本人は気づいてないが、霊的なものは大抵それを避けるから、Bは心霊体験できない。
・とりあえず当時のAが知る限り、ソレはBを守っていた。
・でもAが感じる気配では、とても善意の守護ではない。っていうか悪い感じらしい。
・強力な霊とBのナニかが戦うときにはB当人は 爆睡するっぽい←Aの推測
……8月に物凄いことがあったんで、纏めました。
以下、フェイク込みなんで辻褄が怪しいところもありますが、どうぞ。
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最初の井戸の話のときに書いた大学時代の仲間内の男子C、こいつから連絡があった。
Bが最近、時間が出来たのか懐かしくなったの か知らんが、 昔の友人にちょこちょこ連絡しててCも電話で 話したそうだった。
……んで。 Bと話して昔の井戸の一件を思い出して、職場でネタにして喋ったそうです。
そしたら職場の女の子に呼び出され、その子の 知人の男(20代後半、俺らと同年代)に会ったと。
そいつの用件を纏めると、
「ヤバいものに憑かれてる知人が居る、坊さんも神主も霊能者もダメだった、 そのBさんの力を借りたい。連絡を取って欲しい、詳しく教えて欲しい」
Cは井戸の一件しか知らない、つまりBの「ソレ」に守られた記憶しかないので、 気軽に受けあい、ついでに他にも良く知ってる奴が居ると俺とAを推薦したそうです。
俺とAは話し合って、二人つれだってCとその男(Hとします)に会った。
指輪の件、白い着物の件、B宅の件を一通り説明し、BについてるものはB当人にも他の人間にも制御できず、また悪霊や呪いの類は「跳ね返す」だけで祓ってくれない、 周囲に被害が出るからやめておけと告げた。
どうやらHも「みえるひと」らしく、AがB(幼少時with白い着物)の写真を見せたら、 即座にハッキリと表情が固まった。
「………凄いね、これ。この子マジ生きてるの? 今も?こっちのナニ、山神様とか? こんなんに狙われても大丈夫なワケ?これなら、本気でいけるかも」
Hは本気になったようで、俺らがやめろと言う のにはとりあわず、 しきりにBについてる「アレ」について尋ねてきました。
Aは躊躇いつつも、他の「みえるひと」の意見を聞いてみたかったようで、 さらにざっと説明をしていた。
みえない俺には良く判らん感覚的な言葉が多く、
「硬さは?こう、バキンていきそうな」
「そうじゃないし、寒いとかスレてる(?ずれて る?)とかもなくて。 ただこう、ぞわっとするだけで、そこにあるのに何で?みたいな変な印象の」
「え、本当に?じゃあザリザリ擦ってるみたいな感じはある?」
「それもないです。するんとして、侵食もしないしできないし」
こんな感じの意味不明なやり取りの末に、Hは
「……俺も全く見当がつかない」
と首を捻っていました。 その後はもう一度、
「本当に止めた方がいい」
と俺とAから念押ししてお開きにしました。
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……数日後の土曜日に、Aから電話が来ました。
BがこれからCと会うから来ないか、と言って来たそうです。
『出る』家があるから、良かったらAと俺にも声をかけて来いとCに言われて Aに電話をよこしたと。
たまげて家を出、Aと合流してBに指定された待ち合わせ場所に行くと、そこにはHが車で待っていました。
Hはニヤニヤしながら、
「悪いね。BとCは後から来るから、乗ってくれよ」
といい、車中で説明をしました。
……こいつ、Cに頼んでBに連絡とって約束したそうです。
「知り合いの家が“出る”から来ない?って行ったら2つ返事だった。いいご主人だね、 『昔の友達と肝試し?いいよ、羽を伸ばして来い』って子供の面倒見てくれてるって。 あんまり時間ないから急がないと」
Hの目的地は、高級住宅街の塀に囲まれたでかい豪邸でしたが、車が止まった時には俺の横のAは硬直して真っ青でした。
「悪いね。大丈夫だよ、俺ら部外者だし、出入 りしても手ェ出さなければね」
Hに促されてしぶしぶ降りたAは、その豪邸を見 上げて、引きつった顔でHをみました。
「……本気で?」
「まあね。……ここんちの奥さんが、俺の母親の幼馴染。息子が完全にイカれちゃってんだよ」
「何いってんの?その人が助かったって、周り中に散って広がるだけじゃ」
「俺も考えたし。……出られないところに押し 込めてやりあってもらえばいいんだろ? 勝敗つくまで、徹底的にさ」
2人が言い合ってる間にドアが開き、中から中年のおばさんが出てきて、 俺らを招き入れました。
……どうぞ、と通された部屋に居る男を見て、思わず硬直しました。
壁向いて立った横顔は白目むいて天井見上げて、唇の端が少しだけ上がってニヤついてるみたいで、どっか壊れたような形相でブツブツブツブツ何か呟き続けてて、 上手く言えないけど、その目つきが本気で怖い。
実はコレがウチに出る悪霊です、って言われたら信じたと思う。
俺もドン引きしたけど、Aはもう真っ青でした。
「……もとはどこに?」
Aが聞くと、Hは少し疲れたような余裕のない顔で笑って、
「そこが一番まずいんだよね。……解んないんだよ、気がついたら拾っちゃってて」
後で二人に聞いたら、そこんちの息子(Iとしま す)についてたのは、 何だか複数の人霊が怨念をツナギにして融合したようなものだそうでした。
様子から言って、長いこと生き物でなくモノに憑いていたと解る状態で、 本体と言うか依りしろと言うか、それがIに憑く前に居たものがあるはず。
それが除霊するときに手がかりと言うか土台になるらしいです。
なのに、どこで取り付かれたのか解らないため に除霊の手がかりがなく、 霊能者に無理だと言われたそうでした。
Hの答えを聞いたAは、さらに怯えたような顔をしていました。
「……この人、大丈夫なの?何かヤっちゃったとかないの?」
「……あー。寸前まで行ったことはある、かな。今はとりあえず、ちょい前に来てくれた人が体にヨケ(?)つけて抑えてるから」
そんな感じの怖い会話の途中で、外から車の音がしました。
CがBを乗せて来たのですが、案の定と言うか怖いことにと言うか、 Bは車中で既に熟睡していました。
HがCからBを引き取り、抱えて奥の部屋へ連れ込み、床に寝かせて毛布をかけました。
後からIをそこんちの奥さんが連れてきて、熟睡中のBと空ろな目のIを残して、俺らは部屋を出ました。
……考えてみりゃ、眠ってる既婚女性とおかしな男を1つ部屋に入れたりしてとんでもない話です。
何故かその時は、Hの全く躊躇いのないテキパキした態度とBは何があっても無事、と言う考えが当然のこととして頭の中にあったため、唯々諾々と従ってしまいました。
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ドアを閉めると、Hがドアに背をつけて廊下に胡坐をかいて座りました。
Aが俺にしがみつき、奥さんが足早に廊下を戻って引っ込んで少しして。
部屋の中から、凄まじい破壊音が響き渡りまし た。
壁か柱がぶっ壊されてるんじゃないかってくらいの轟音に混ざって、 ガシャン、パリンとガラスか茶碗が割れるような音。
俺はギョッとしましたし、Hは揺れるドアに背中を押し付けて座り込んだまま動きませんでした。
Cも、何かHから聞かされていたのか、落ち着かない様子ながら、あまり慌てた様子もなく。
どれだけ時間が経ったのか、誰も動かずに待ち続けて、ようやく中の音が小さくまばらになってきたとき。
直ぐ内側から誰かがゆすってるようにドアがが たがたっと揺れ、 鋭い、あせりまくった切迫した男の声が聞こえました。
「おい、助けてくれ!!お願いだ、助けて!開 けてくれ、早く!早く!! ここを開けてくれえええっ!!」
Aが顔をあげてHに向き直り、
「ねえ、もういいんじゃない?開けて出してあげようよ」
ここで俺もはっとして、
「おい、さっきの人 (I)、正気に返ったんじゃないか?」
と言葉を添えましたが、Hはぎっと俺たちを睨みつけて
「まだ」
と言いました。
それからさらに時間が過ぎ、中から全く音がし なくなって、やっとHは立ち上がりドアを開けました。
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……中は、HがBを寝かせIを入れて出たときと全く変わりありませんでした。
壊れたものも動かされたものもなく、ただBが部屋の真ん中で大の字になって寝てるだけ。
あの破壊音を立てたと推測できるものの痕跡1つなく。
そして部屋の隅にうずくまって震えていたIに、 Hが駆け寄りました。
「おい、I。俺、わかるか」
「あ……H?H!!」
目が焦点を結ぶと、Iは取り乱した様子で、しかし初対面の時より遥かにまともな様子でHに掴みかかりました。
「H、化け物がいたんだ!本当だ、俺に化け物が、襲い掛かってきて俺を殺して」
「……ほいほい」
幾らか安心した様子でHがポンポンとIの肩を叩いて宥めた。
その時、俺の横に居たAがふらりと傾いたのが視界に映った。
慌てて受け止めた俺に、Hが
「あ、ごめん。リビングに連れてったげて。ココは辛いでしょ」
と言った。
Cと一緒にAを運んで廊下を戻りながら、やっと気がついた。
さっきHと喋ってたIの声。
破壊音が止む前に部屋の中から聞こえた声とは、全然違う声でした。
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……その後、Aが目を覚まして動けるようになり、眠り込んでるBをA宅へ移した上でB夫を呼び、AがBを引き渡しました。
変に疑われると嫌なので、俺もHもCも、男は全員席を外しました。
B夫は怪しむ様子もなく爆睡してる妻を引き取っていきました。
「あ、またですか?すみません。ひょっとした ら知ってるかもしれませんけど、 睡眠障害とか言うんですかね。突然パタンと寝ちゃって目がさめないことがあって。 これの母親から、小さい頃はよくあったって聞きましたけど、結婚してからは年に一回もないし、病院で検査しても異常ないし、 本人覚えてないけどガスだの何だの危ないものは必ず寝る前に止めてるし、子供と居る間は起きないし、倒れるとかじゃないから問題ないんで俺は気にしてないんです。面倒をかけてすみません。連絡ありがとうございました」
A曰く。
「……ガスとか火とかは絶対に大丈夫だと思 う。Bが止めなくても、 必ずアレが何とかするから。赤ちゃん居るとないってのは意外。 Bが子供できてから、危ない場所に行ったり危ないもの買ったりしなくなってきたのかな」
H曰く。
「さすがに赤んぼ放置して熟睡は、Bさんの潜在意識が拒むんじゃね? アレ、Bさんの意識とカンペキ無関係って訳じゃないと思うよ。無意識の部分とかに食い込んでないと、寝かすのはないと思うし。 Bさんでなきゃいけない理由があるんだろーねー。赤んぼ預けるとか家族が一緒とかでないとフルで戦えないなんて不便な状況、ただの間借りならショバ替えしてるよ」
あのとき部屋の中から聞こえた声についても、 「みえるひと」な2人に聞いてみた。
こちらは2人とも完全一致。
『融合してた人霊のウチの一体が、消滅の危機 に瀕して自我を取り戻した』
だそーです。
あの部屋、事前にHが、使える伝もコネも知識も全部使って、頼めるだけの人に頼んで、何重にも霊的に閉鎖してたんだとか。
で。 その檻の中で、Bについてるアレと、Iについてたモノとが。 互いに在るだけで互いを削りあう至近距離に置 かれることになり、 形容し難い激烈なバトルが繰り広げられたようです。
結果は、またしても、Bのアレの勝ちでした。 ……助けてくれ、開けてくれ、と叫んでいたの は。 逃げ場のない檻の中で、Bのアレと戦いながら2度目の死の恐怖を、味わっていた誰かの霊だったと。
衝撃でした。
生身でない、声帯を持たないとは信じられないほど、声はリアルでした。
そしてAが倒れたのは、霊的に比喩的に「血染 めの惨殺現場」を見たためでした。
その霊たちがどうなったのか、と言う質問には2人とも答えてくれなかったし 俺も考えたくありません。
Bのアレはお払いだの浄霊だのしてくれる存在ではないと既に知っているので。
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話は概ねこれで終わりです。
Bは次の日の朝に目を覚まし、鼻歌と共に朝食と夫の弁当を作ったそうです。
Iは精神科へ通院しているそうですが、以前と違って会話ができて治療効果がきちんと出ることにI母は大変喜んでたそうでした。
ついでにCは、Hから何を聞かされたか知りませんが、もうあまりBとは連絡を取りたくないようことを言っていました。
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最後に、その「融合した複数の人霊」これが一 番、この話の嫌なところですが。
「恐らく半世紀以上は前、だけど100年は経ってない」で、
「全員、両手の爪が剥がされてた」そうでした。
それ以上はAもHも説明してくれませんでした し、 俺も聞きたくないと思っています。
どこでどんな目にあった誰だとしても、判れば 気分悪くなるだけでしょうから。
以上です。
……………………………
次の話は「呪いのコンパクト」、またもやHが面倒な物を持ってきます。
最後まで読んでくださり有り難うございました。
作者社木