巣くうものシリーズ第2作目、コピペです。
長いお話なので暇な人向け。
………………………………………
スレ208で、井戸の底のミニハウスと学生時代 の女友達Bに住み着いてるモノの話を書いたものです。 また続きの話が、しかも今度は新しく舞い込ん で来ました。 以下、前スレと同じく状況説明(前スレのコピペで失礼)。
nextpage
・「みえるひと」な女友達Aの言では、Bの身体 を出入りしている何か 普通の霊と違うものがいる(寄生虫?居候? みたいな状態らしい)。
・B本人は気づいてないが、霊的なものは大抵 それを避けるから、Bは心霊体験できない。
・とりあえず当時のAが知る限り、ソレはBを 守っていた。
・でもAが感じる気配では、とても善意の守護 ではない。っていうか悪い感じらしい。
・強力な霊とBのナニかが戦うときにはB当人は 爆睡するっぽい←Aの推測
何でも、Aが、もう1人学生時代の友人(Fとし ます)に誘われて、 二人でB宅を訪問してきたそうです。 「何か」が今もいるのか、そして何よりBの子 供は普通なのかどうかが知りたかったと。 最も帰ってきた後の話を聞くと、
「……行くんじゃなかった……」
と言ってましたが。
nextpage
Aによると、Bは郊外のやや長閑なところに住ん でいて、喜んで迎えてくれたそうです。休日だったので、B夫と子供も居て挨拶したと言っていました。
そして結論から言って、やっぱり「何か」はB の中に居たそうです。 ……しかも、A曰く
「育ってた」
と。 大きくなってたと言うか強くなってたと言う か、ハッキリしてきてたと言うか。
「やっぱり形とか顔とか、そういう輪郭は見え ないんだけどね。 霧だとしたら『濃くなってた』、人影だとしたら『立体的になってた』って感じで。 気配も強くなってて、撒き散らす匂いっていうか放射能みたいなものが増えてた感じで、 正直ぞっとした」
また、AとFが最寄り駅に降りたときから、街そのものが酷く嫌な感じが漂ってたそうです。 「みえるひと」でないFさえも落ち着かない様子で、
「……何だか変わった感じするとこだね。子供 が多いわりに静かだからかな? 少し早いけど、お店入るよりBの家いかない?」
と言うほどだったと。
Aは、Bの家に向かう間の短い道すがらに、霊的 に酷く悪い状態のものを驚くほど大量に見たそうです。
酷い死に方をして浮かばれないんだ、と一目で 判るのとか、性質の良くない動物霊とかが もうウヨウヨしていたと。 正味の霊だけじゃなく怨念じみた空気の塊?みたいなものとか、物凄く古そうな嫌な気配とか、 得体の知れないモノが寄って来たりして、本気で怖かったそうです。
「街が邪念にまみれてるみたいで怖かった。1 人だったら引き返してたと思う。でもFに 霊の話とかして変だと思われたくなかった し、もう後ろに憑いてきちゃってるのも 居たみたいだったから。Bの家に行けば何とかなる、と思って、そのまま行った」
nextpage
それで急いでB宅に着くと、その中には相変わ らず何も近寄れないらしく、 B宅内はBの背負ってる『何か』の気配が充満してる他は綺麗なもので、 むしろホッとしたそうです。
「B夫もBの赤ちゃんも普通だったよ。ただ、 そっち系について物凄く感受性がない人だっ た。 元からいいものも悪いものも全然感じなく て、だからどっちの影響も受けなくて、一生『こっち』の現実の世界だけと関わって生 きる人が、たまに居るんだよね。 Bと一緒に暮らすなら、そうでないとダメだと思う。B夫も赤ちゃんも、守護霊が見えなかったから。守護霊もあの家に居られなくて、いなくなったんじゃないのかな」
……守護霊いないって、大丈夫なんだろうか。
2人がBと居ないときは守護霊が戻って来てるのか、とAに訊いてみましたが、 そこは解らんとのことでした。
何はともあれ、久しぶりに会ったんで互いに近 況報告したら、 Bの趣味、と言うか怪談好きも健在だったそうです。
そこそこ新しく、立地も良く広々として立派な 部屋だったので Fが誉めると、何とB宅は、札付きの瑕疵物件だったらしく…… 結構な頻度で住人が変わるせいで、大して古くもないのにB一家は10何番目かの 住人だそうでした。
中で事故や自殺が複数あり、他にも不幸があって出て行った住人がいたりして評判の部屋になってしまっていたため、家賃は破格の安値だったとか。
「不動産屋さんも案内してくれたけどあんまり 勧めて来なかったしね~。 近所の人も知ってて、『本当に大丈夫?あの ね、何かあったら 無理に我慢しないで引越した方がいいよ。こ んな話して悪いんだけど、その部屋、 色んなことがありすぎるから……気をつけてね』って心配されちゃったよ。 でも、この人(B夫)そういうの全然気にしないし、私はむしろ幽霊いるなら 見てみたいし~」
のほほんと笑いながらBは言ったそうでした。
「でも結局、そういうのって話ばっかだよね。 うち、もう半年住んでるけど、 全然なにもないよ。近所でも事故とか結構あるし、踏み切りではねられちゃった 子供もいたし、気をつけなきゃ危ないのは同じなんだよね。偶然この部屋の人に集中したから、呪いの部屋にされちゃったんだろうね」
……Fは
「そうだよね」
と頷いたそうですが、A は顔が引きつるのをこらえるのがやっとだった、と言っていました。
A曰く。 おそらくその部屋は、本物の『呪いの部屋』 だったんだと言う事でした。
何かのきっかけで悪いものの溜まり場になって しまう場所、というのがあるんだそうです。
霊的な位置関係とか、近くに沼や海があるとか、その方向とか色々な ことのせいで、悪いものを吸い寄せて溜め込んでしまうポイントが できてしまうことがある、と。
「それが建物の中で気密性の高い部屋だったり すると、よけいに溜まったものが出てかなくなるの。そこに悪いものが溜まるから他の場所が綺麗でいられる、 ってこともあるから。……そこにBが住み始めた んだよね、いきなり」
それは、つまり。 Aの表現したところでは、
「町中のゴキブリとかムカデとかスズメバチと かを全部集め続けてきた害虫で一杯の小屋の真ん中で、不意に特大のバルサンをたきまくったようなもの」
だそうでした。
そしてAは、こうも言っていました。
「Bのことが嫌いなんじゃないけど、2度とBの 家にもあの辺りにも行かないと思う。 ……もっと散らばったりして落ち着いた状態になるまで、何年もかかりそうな様子だった」
Aの言では、B夫とBの子供は大丈夫だろうとい うことでした。
一緒に暮らしている限り、Bの「何か」の気配 が色濃く染み付き続けるから、 大概のものは避けていくし、そもそも霊的なも のに害を受け難い性質だから、と。 現に、帰りにB夫が外出のついでに駅まで送ってくれた時には、道にたむろしてる悪いものはむしろ避けていたそうで。
……問題は、おそらく付近に住んでいる人だろう、と…… 何か、後味の悪い話になってしまいました。
nextpage
読んでくれた人、どうも。後味悪くてすまん。
俺も何かスッキリしなくて、吐き出したかった んだ。 多分、Aもそうだと思う。 Aは「みえるひと」だけど、だからって漫画に出てくる スーパー霊能者みたいなことはできないんだと 言ってました。
絶対に勝てない、何もできないと解ってるもの には関わらないようにしてる、 いちいち手を出してたら今まで生きのびてない、ともらしたのを聞いた記憶があります。
ただ、何も見えないのに危険は自動的に防がれ るBは羨ましくないか、と 重ねて尋ねた時には、重そうにハッキリと首を横に振ってました。
「絶対に、思わない。あんなモノに身体の中に 住みつかれて自分で気づいてない、 なんて死んでも嫌。上手く説明できないけど、結果として助けて貰ったことがあっても、アレは感覚が受け付けない」
とのことです。
普通の霊と何が違うのか、との質問に対する答 えは、 「情念がない」でした。
「違和感については説明し難いけど、解りやす く言うとね。 霊ってある意味で心が剥き出しで存在してる ようなものだから、 人でも動物でも、必ず何か色、っていうか想いが見えるんだよ。 『生きたい』とか『苦しい』とか、シンプルなのでも。 その情念に基づいて、こっちの世界で祟ったり守ったりするんだから。
でもBのアレは、それが見えない。何か意思があって能動的に動いてるのは解るんだけど、その源になる想いが一貫して全く無い。 Bの中から出てくる時も、Bの中に戻ってく時も、井戸から出てきたモノとぶつかってた時でさえ、全くなかった。 霊的なものとしては、絶対にありえないことなんだよ」
……本当に何なんだろうか?
……………………………………
次の話はBの子供の頃の話「印」です。
なるべく早めに投稿させていただきます。
最後まで読んでくださり有り難うございました。
作者社木