長編8
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巣くうもの

コピペです。

このサイトには無いようなので投稿させていただきます。

長いお話なので暇な人向け。

…………………………………

何年か前にあった怖い話を投下する。

そん時は俺は地方大学の学生で、同じ科の連中と グループでよく遊んでた。 たまに混ざる奴もいて、男4~6人で女4人。

一人暮らしの奴の部屋で集まって飲んでると、よく怪談したがる女の子がいた。 決まって嫌な顔する子も居て、Aとする。 こっちの子が俺とかなり仲良かった。

怪談好きな方をBとするが、Bも別に電波とかじゃなくて、 怪談も体験談はなくて、それこそネット で面白い話を仕込んできてんじゃないか、みたいな怖い話をする子で、本当は幽霊とか信じてなさそうだった。

むしろAの方が「見えるんだ」と言ってて、Aはい つもBを避けてる感じだった。 2人で遊ぶとかは絶対ないし、グループでも距離を開けたがってる雰囲気で、 俺とあと一人、Aの 「見える」を聞いて信じてる奴(Cとする)は、 本当に霊感があったら遊びで怪談するなんて嫌なのかもしれない、と思ってた。

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ある日、Bと仲のいい男の一人が、恐怖スポットの 話を仕入れてきてた。 車で30分くらいで行ける場所にあるそうで、Bも他 の連中も面白がって、その場で肝だめしツアー決定。

来てない他の連中も呼び出そうってことになっ て、俺はAに電話した。 俺自身は行く気だったけどAは来ないだろうな、と思い、

「これから~~の辺りに行くってことになったん だ。ただ、肝試しだし他にも来ない奴いると思うし」

と言った。そしたら、Aは遮るように

「それって、何か大きな空き家のこと?その辺り で肝試しって」

「あ、そう。その家の裏に何かあるらしいから」

「………よした方が良くない?ってか、やめなよ。 誰かの家で飲んで怪談したらいいじゃん、わざわざ行かなくても」

よりによってAに怪談話を進められて少し驚いたが、仲間たちは既にノリノリで準備中。

「いや……みんな行く気だし。Aは気が進まないな ら、今回は外していいと思うけど」

するとAは少し黙って、

「………Bは行くの?」

「行くよ。一番、やる気満々だし」

「……そうなんだ……じゃ、私も行くから、ちょっ と待ってて」

たまげたことに、Aは本当に来てBと一緒に車に 乗った。 結局これない奴も居て、総勢6人で、一台(ワゴ ン)に乗って出発した。

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Bは少しKYなとこがあって、Aに距離置かれてるの もあんまり解ってないっぽく、車中で初めは面白 そうにお喋りし続けてたが、すぐに欠伸をし始めた。

「バイトとかで疲れてんのかなー。眠い~」

眠そうに呟くBに、Aが

「寝てなよ。着いたら起こしたげる」

「ありがと。ごめん、少しだけ寝る」

Bは運転してる奴に断ってうとうとし始め、Aは 黙って窓の外を見てた。

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で。着いたときもBは起きなくて、もはや完全に熟 睡。てか爆睡。

「寝かしとく?」

って俺らが顔を見合わせたら、A が

「連れてくね。後で怒るよ、置いてったら」

ってBを担ぎ起こして、強引に車から出したんだよ。 仕方ないからCが背負ってやったんだけど、AはB の手を掴んでて、他の車の奴らが降りてきたら、 一番先頭に立って歩いてった。

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そこにあった古い家は、普通に不気味な空き家 で、皆は結構盛り上がって、「うわー」とか言っ てた。

Bは起きないまま。AはBの手を掴んだまま。 いよいよ本番で、家の後ろに回ったら、何かぽつ んと古井戸みたいなもんがあった。

近寄ってのぞいて見ると、乾いた井戸の中に、 ちっちゃな和式の人形の家みたいなもんが見え た。

「何だー?」

って一人が身を乗り出したのと、Aが

「さがってっ!」

て叫んだのが同時だった。 覗いた奴がびびって身体引っ込めた、そのすぐ後 に、 「カシャ……」だか「ズシャ……」だか、何か金属っぽいような小さな音がした。

「下がって!下がって!こっち来てっ!」

Aが喚き出すまでもなく、もう何か、すごい嫌な感 じが一杯だった。

カシャカシャ、ガシャズシャ、て変なジャリジャリした音が、しかもどんどん増えながら来るんだよ。 その訳解らん井戸の中から、こっちにむかって 。

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もう逃げたいのに身体が動かなくて、横見たら やっぱり仲間がへたってるし、音は近づいてき て、姿は見えないけど絶対に何か居たと思う。

「俺君、もっとこっち来て!!!!」 Aが怒鳴りながら俺の手を掴んで、何かを掴ませ た。 俺が掴んだのを見たAは、今度は少し横でヘタってる奴を必死で引っ張って、また何かをつかませてる。

てか。よく見たら、俺が掴んでるのはBの右足。 さっきの奴が掴んだのはBの左手。 Bの右手はAが掴んでる。Cは相変わらずBをおぶっ てる。AはBから手を離さずに必死に他の仲間を 引っ張り寄せてた。

その後のことは、色々とよく解らなかった。ただハッキリ覚えてるのは、気がついたら、目の 前に何かがいたこと。 白いんだかグレーなんだか透明なんだか、煙なん だか人影なんだか、何か良く解らない「何か」が 俺らの前に居た。

ちょうどその辺りから、ガシャガシャガシャガ シャガシャ、ズシャズシャズシャズシャズシャ、 みたいな金属音が耳一杯に響いてきてた。 いや、こう書くとその煙みたいなもんが金属音立 ててたみたいだけど、そうじゃなかった。

俺らは「煙か人影みたいなもん」の背中を見て て、それが「見えない金属音の奴」とぶつかり合って止めてるんだって、そういう光景だった。

「俺君、C君、動ける?逃げよ!!速く逃げよう よ!」

Aが叫んで、俺らは必死で身体を動かして車へ向 かって、何とか乗り込んで逃げ出した。 Cがハンドルを握る車の中で俺が振り返ったとき、 もう何も見えなかったけど、金属音だけは結構長 いこと耳に残ってた。

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その後。結局帰り着くまで熟睡こいてたBに「何も 出なかったから起こさなかった」

と説明して帰らせた後、皆で震えながら明け方まで飲んだ。

数日後にAを捕まえて経緯を聞いたら、げんなりし た顔でいろいろ教えてくれた。 あの古井戸がマジで危ない本物だったのは予想通 り。 「家の正面に居る分には大丈夫だけど、裏に回っ て井戸まで見たらダメ」

だそうだった。

問題は俺らを助けてくれた妙な影なんだけど、Aは 凄い嫌な顔で、

「あれはBの……何ていうか、ついてるものなの」

と言った。 AがBを避けてたのは、嫌いだからじゃないそうだった。 ただ、Bに纏わりついてるものがいて、それが凄く 強くて薄気味悪いものだったんだと。

で、初めはBに取りついてる霊か、と考えたがどう しても違和感があって。

ある日、Bから出てくる『それ』を見て、不意に気づいたんだそうだ。 『それ』は『Bの中』にいるんだと。

「……Bがあれのいる世界に繋がってて出入り口になってるのか、それともB自体があれの棲む場所なのか、どっちかだと思う」

Aもよくは解らないようで、とにかくそれはBから 出てきてまた戻っていくんだと言っていた。 他の霊的なものは全部Bを避けるそうで、多分あれ のせいで近寄れないんだとも。

「あれは私たちを守ったんじゃないし、Bのことも 大事だとかじゃないと思う。ただ、ドアとか家が 壊れたら困るでしょ。だから」

何とかした方がいいのか、と思っても、Bは本気で は霊を信じていないようだったし、普通の霊じゃ ないから払えるとも思えなかった。だから放っておいたけど、自分は近寄りたくなかったんだ、とAは言った。

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ただ、『それ』がBを深刻な危険から守っているの は知っていた。 そして、あの日俺らが本当に危ない場所に行くと 感じて、止められないならBの中に居る『それ』に 守ってもらうしかない、と考えてついてきたのだという。

「あれが守るのはBだけだからね。少しでも離れた ら、井戸から来てた方に憑かれて人生終わってた よ。俺君も、他の皆も」

言われて背筋が寒くなったのを紛らそうとして、

「……でも、何だろうな?Bについてるのって。結構よくないか?結局守ってくれるんなら」

そう言ったら、Aは羨むような蔑むような複雑な眼を向けてきた。

「あのね俺君。お腹に住みついた寄生虫が孵化するまでは守ってくれるって言ったら、それって嬉しい?」

「……」

……何となく、言いたいことが解った。

Bに巣くってるモノは、とにかく自分だけの都合で Bの中に居座ったり顔を出したりするわけで、 ひょっとしたらBから何かを奪ってるのかもしれな いわけで。

いつか自分の都合で、Bをぶち破って出て行ったり するかもしれないわけで、その時には周りにも影 響するかもしれないわけで、しかもBは本気で何ひとつ全く気づいていないわけで。

「放っとくしかないんだよね」

そう言ってAはため息をついた。

「井戸から出てきた方も、凄かった。神様が最悪 の状態になったみたいな感じだった。並みの霊能者とかじゃ負けちゃうだろうって思うくらいの奴 だった。あんなのと渡り合える、Bの『あれ』も、 どうせ何やってもどうもできない」

それから時間が経って、俺もAもBも社会人。 ふと思い出したんで、投下しました。 ちなみに、理由はBから連絡あったから。 結婚した上に子供も生まれて元気にやってるそうです。 Aに電話してそう言ったら、

「Bが寿命になるまで、あれが大人しくしててくれ たら、それが一番いいよね」

と言ってたところからして、Aは、Bが今もあれを 背負ってると確信してるようです。

普通の霊と違う、そして人間の『中』に居る『何か』って、何なんでしょうね?いや、井戸の底の ミニハウスから来た金属音も気になりますが。 どっちでもいいんで、誰か心当たりでもあったら、教えて下さい。 長文すみません。以上です。

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余談ですが、Bは怪談と共に時々、

「本当の霊体験がしてみたい!一度もないんだよね」

と言っていました。上の話の前後にも、肝試しやらコックリさん系の遊びやらを試してみていたようですが、全敗らしかったです。

後にAが言ったところでは、

「無理だと思うよ。アレはB本人には見えない よう になってるみたいだし、他の霊は、霊感のあるな し以前に、全く何もBに近づかないから。井戸のあ の音はちょっと並じゃなかったから、近づこうとしたんだろうけど。だからBのアレも、Bを眠らせ て全力でやったんじゃないのかな。これは想像だけど」

そう言えば、あの夜はAがあんだけ叫んだのに、B は眼を覚ます気配もなかったな、と思いました。

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なお俺は、それより前にBが雑談で、

「家で一人でコックリさん(みたいな何か心霊系 の遊び)したけど、反応ないし、眠くなってその まま昼寝しちゃった。あーゆーのって中々、成功 しないね」

と言うのを聞いた記憶があります。 ……いや、成功してたんだったりして……というか、だとしたら、その時は何が来てたんだか……

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巣くうものシリーズにはまだいくつかお話があるので今後も投稿させていただきます。

最後まで読んでくださり有り難うございました。

Concrete
コメント怖い
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このシリーズ大好きです。
何度読んでも面白いです。

返信

面白くて一気に読みました。シリーズ化希望!

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巣くうものか救うものか。
すごくおもしろい。

返信

このシリーズ大好き!
何回読んでも面白いです。

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