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社会人になってからめっきり運動をしなくなっていたので、
よしっ、と心を入れ替え、ダイエットも兼ねて
毎晩1時間程度のランニングをすることが、最近の日課となっていた。
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その夜は飲み会があり、解散したのは夜の11時近くだった。
こんな時間だと、家にたどり着いて、ジャージに着替えて、さらに走りに出る、
なんてことをしていると寝る時間がなくなってしまうな、と思い、
居酒屋から家まで、携帯でルート検索調べてみると3キロ程度だったので、そのまま走って帰ることにした。
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軽いジョギングのペースで走り始める。
ヒールの低い靴とはいえ、やはり走りづらい。ショルダーバッグも邪魔だ。
街中を夜中に女が走っていると少し目立つが、だんだん人通りの少ない小道へ入っていく。
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少し足が痛む。やっぱり無茶しすぎかな、と思い始めた頃、トンネルに差し掛かった。
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真っ暗で長い長いトンネル。明かりも少なく、トンネルの向こう側がまったく見えない。
ちょっと怖い。でも、ルート検索を見ると、ここを通りぬけないと、かなり迂回しないといけないようだ。
よし、思い切って走り抜ければすぐだ。と腹をくくり、私は薄暗いトンネルに向かって駆け出した。
タッタッタッタッ…
自分の足音と荒い息が、トンネルの中に反響する。
暑い。額から汗がとめどなく滴り落ちる。
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しばらく走り続けるが、なかなかトンネルを出られない。思った以上に長いトンネルのようだ。少し怖くなってきた。
どれだけ走ってきたんだろう。引き返そうかな。そう思い、足をゆるめ、荒い息を整えながら後ろを振り向く。
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shake
shake
声にならない叫びが漏れた。
女だ。わたしの真後ろに立っていた。その距離は2メートルも無かった。どうみても普通の状態ではない。髪は乱れ、眼は血走り、肌色のぼろぼろの服を着ている。
何も考える間もなく、私は走り出した。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。途中で靴が脱げたが、かまわず走り続ける。
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「ねえ」
shake
耳元ではっきりと声がした。さっきの女の声だ、そう思った瞬間、背中が総毛立つのが分かった。
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「逃げるからだよ」
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え?
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その瞬間、私の体は突如現れたトラックのライトに包まれた。ブレーキ音とともに、ドンッというにぶい衝突音が鳴り響いた。
作者退会会員