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中編4
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旅館

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初投稿です。

僕は中学生で、部活の大会で、ある旅館に泊まった。

これは、その旅館で僕が体験した怖い話です。

僕達が出場する大会の会場の近くには、温泉や宿などが密集していて、その旅館もそのうちの1つだった。

いつも泊まりの時はホテルだったので、友達の中には文句を言う人もいたが、僕はたまにはこういうのも良いなと思っていた。

部員は僕を含めても12人だったので、部屋は3人部屋が2つと6人部屋が1つだった。

僕は仲の良い先輩達と6人部屋に泊まることになった。

先輩は、部屋に荷物を置いてすぐに他の部屋に遊びに行ったが、僕は1人で荷物の整理をしていた。

少しすると先輩達が部屋に戻ってきて、ゲームを持つなりまた、他の部屋へ遊びに行った。

その際、1人の先輩に

「○○○も来いよ。こんな部屋に1人でいたら、幽霊が出るぞ。」

と言われ、

「そーですねー。」

などと適当な返事を返していると、どこかの風景が描かれた掛け軸が目に留まった。

旅館の怖い話といったら、掛け軸の裏にお札だよな~、などと思いながら何気なくそれをめくってみた。

掛け軸を完全にめくる前に僕の手が止まった。

本当にお札が貼ってあった。

それも1枚や2枚じゃない、おびただしい数の色々なお札が。

僕はその光景に寒気を覚え、その場から動くことが出来なかった。

「どーした?」

僕の様子を見ていた先輩が声をかけてくれた。

「いいえ、なんでもないです。」

僕は急いで先輩と一緒にみんなのいる部屋に行った。

その後、夕食とミーティングを終えて、部員のみんなと風呂に入った。

風呂に入っている時でも、あのお札のことが頭から離れなかった。

就寝時間になっても、同じ部屋の先輩達は他の部屋でゲームなどをしていた。

僕は疲れもあって眠かったので先に寝ようと思った。

この部屋で1人で寝るのは少し嫌だったが、今までの例からいって、先輩達はいつ寝るかわからないし、何よりみんなで寝て、自分だけ眠れなかったらというのを想像すると怖すぎたので、1人で電気とテレビをつけたまま、先に寝ることにした。

テレビを見ながら横になり、恐怖心も和らいできて、いつの間にか寝てしまった。

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眠っていた時だった。

いきなり金縛りにかかった。

金縛り自体はよくかかって慣れていたので、少しすれば体が自由になると思っていた。

ところが、時間がたっても金縛りがとける気配は無かった。

それどころか息苦しさがどんどん増し、カリカリという何かを引っ掻くような音が鳴りだした。

そして僕は思い出した。

あのおびただしい数のお札を。

目は開けられるようだったので、怖いのを我慢して目を開けた。

先輩が消したのか、テレビと電気が消えていた。

横を見るが誰も寝ていない布団があるだけで、先輩達はまだ帰って来ていないみたいだった。

そしてその音の出どころは部屋の角にある押入れだった。

早く金縛りがとけろ、と祈っているとその音が止んだ。

だが、金縛りがとけることはなく僕の心には嫌な予感と不安だけが募っていった。

そしてその予感は当たってしまった。

音が止んで数十秒もしないうちに、押入れの

戸が開く音がした。

そして押入れから何かが這い出す音がした。

禍々しい気配を放つそれが自分に向かってくるのが分かった。

もう怖くて目を開けられなかった。

それが自分の近くまで来て、ぴたっと止まった。

震えが止まらず、そのまましばらくの間動けず、目も開けられなかった。

しばらくといっても、本当は数分かもしれなかった。

怖さで時間の感覚が麻痺していた。

そして怖さと沈黙に耐え切れなくなった僕は、恐る恐る目を開けた。

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女だった。

口の端しを上げ、邪悪な笑みを浮かべた髪の長い女の顔が目の前にあった。

あまりの恐怖に叫び声が出なかった。

人はあまりの恐怖をあじわうと声も出なくなるということを生まれて初めて実感した。

発狂寸前だったそのとき、部屋の入り口から叫び声が聞こえた。

入り口の方を向くと、女の髪が邪魔でよく見えなかったが先輩が立っていた。

そしてその叫び声を聞いた先生が走って来て部屋の電気をつけた。

それと同時に金縛りがとけた。

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僕は先輩と必死に今見たもの、起きたことを先生に話した。

当然信じてくれなかった。

僕とその部屋の先輩達はその夜、他の部員の部屋で寝た。

寝たといっても、僕はその夜一睡もできなかった。

次の日の朝、先輩に僕の部屋のテレビと電気を消したか聞いたら、消していないと言われた。

あんなことが起きた後だったので、あまり驚かなかった。

そして忘れ物の確認の為にもう一度あの部屋へ行ったぼくを凍り付かせたのは、掛け軸の下に落ちている無数のお札だった。

急いで部屋を出た。

大会の会場へ行く為に、僕達は旅館を出た。

あの女が部屋の窓から僕のことを見ているような気がしたので、急いでバスに乗った。

今日、大会が終わるので、もうここに泊まることは一生無いと思う。

でも、あの邪悪な笑みを浮かべた女の顔は、一死忘れられないと思う。

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