あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。あなたを見守っている。
とある手紙の全文である。
俺が中学生の頃ある女子生徒にわたされた手紙だ。
これから話すのはその時の話である。
俺は中学二年生の頃、とある女子生徒と仲良くしていた。
仮に彼女のことをS子とする。
彼女との出逢いは中学二年生の春、クラス替えで同じクラスになったのがきっかけだった。
俺は前にも書いたが数年前大切な親友を亡くしている。
正確には行方不明なのだが、あれから数年なんの情報もない。
その時のことを忘れることが出来てない自分は最初の頃、S子のことをなんとも思っていなかった。
仲良くなるきっかけはクラス替えから一ヶ月たって行われた席替えだった。
彼女の容姿について書いておく。
さほど整っている訳じゃないが、目鼻立ちはすっきりしていて見映えがいい。
髪の色は黒でそれを三つ編みにしている。
目は大きくパチクチさせると可愛らしい。
そんなどこにでもいる普通の子だった。
最初は軽く話す程度だった。
だが、何故か話がよくあう。
次第に話す頻度が増えていった。
彼女は大の可愛い物好きだった。
特にパンダのぬいぐるみが好きで部屋中に置いてあった。
口癖はウソ~でやたら大げさなリアクションをする子供だった。
休みの日には山に遊びに行ったり楽しい時間を過ごした。
そんな日々が2ヶ月くらい過ぎたある日、S子に屋上に呼び出された。
「私と付き合ってほしいの」
真剣な眼差しで彼女はそういった。
俺は困惑した。
脳裏にF君の姿がよぎった。
彼女のことは好きだ。
だが、それはあくまで友達としてだ。
だから俺は彼女をふった。
それからだった。
彼女が変わったのは。
彼女に告白されてから数日がたったある日、郵便受けに写真入りの手紙が届いた。
写真を見た瞬間強烈な吐き気に襲われた。
写真は俺の寝顔をとったものだった。
手紙には赤い字で愛してると一言。
それから毎日のように奇妙な写真が届いた。
トイレで用をたしている所だったり、給食を食べている所だったりと様々な写真が届いた。
俺は気味が悪くなって彼女から距離をとりはじめた。
すると彼女は何故私をけむたがるのかと金切り声をあげる始末で対応に困った。
帰宅中つけられている気配を感じて後ろを振り返ると誰もいない。
だが、気配だけはある。
足音すらしない。
そんなことが毎日のように続き精神的に追い込まれた俺は彼女にやめてほしいと直訴した。
だが、彼女は嫌だの一点張りでやめると言わない。
困った俺は言ってはならない事を言ってしまった。
俺はお前が嫌いだと思ってもいないことを。
それから数日後彼女は自殺した。
そんなS子のことを思い出したのが三日前、偶然手紙を発見したのがきっかけだった。
冒頭の例の手紙の一文を思い出してほしい。
あなたを見守っている。
実は自殺した彼女が最期に残した手紙なのだ。
F君のことは、はっきり思い出せるのに彼女の存在もこの手紙のこともつい三日前まで綺麗に忘れていたのだからおかしい話である。
全く都合のいい頭である。
では何故こんな話をするのかそれは三日前に手紙を見つけた所まで遡る。
家の掃除をしている際に発見した。
俺が殺したようなものだ。
それが手紙を見つけ彼女のことを思い出した際に最初におもったことだ。
それはF君とも重なる。
俺がかつて救えなかった少年。
かつて俺が見殺しにした少年。
かつて俺のせいで自殺したS子。
二人の人間を殺しておいてのうのうと生きている自分が恥ずかしい。
そこまで考えてなにを思ったか郵便受けを確認しにいった。
すると手紙が一通入っていた。
手紙をあけた瞬間戦慄した。
赤い文字で三日後にあいにいきますとだけ書いてあった。
気がついたら手紙をもつ手が震えていた。
そして、現在に至る。
視線を感じている。
生唾をのみ視線がどこからくるか探る。
天井裏からだ。
ベッドのすぐ真上にある天井裏にいくための蓋をとる。
息があがる。
咽を圧迫されるような違和感が襲う。
恐る恐る天井裏を覗いた。
カメラがあった。
置いた覚えはない。
視線は奥から感じる。
懐中電灯で照らしながらゆっくり進む。
やがて行き止まりに行き着いた。
俺の目の前にあり得ない光景が広がっていた。
写真。写真。辺り一面写真で埋め尽くされていた。
その全てが俺を隠し撮りしたものだ。
思わず吐き出してしまった。
天井裏から慌てて離脱した。
脳裏に先程の映像がちらつき立ち眩みを覚えた。
その瞬間だった。
首筋に痛みを感じた。
神様のイタズラと呼ばれる痣は異界に接すると痛みをはっするのだ。
ここにいては危ない。
慌ててドアに駆け寄り開けようとするがドアはぴくりとも動かない。
動悸が激しさをます。
落ち着けと必死に自分自身に言い聞かす。
すると突然足首に違和感を感じ、恐る恐る足元を見た。
全身が電気に感電したみたいに痙攣した。
足首に人間の髪の毛が巻き付いていたのだ。
髪の毛からは信じがたいことに肉片がわき水のようにあふれてくる。
辺り一面を卵が腐ったような異臭が立ち込める。
肉片は徐々にヒトガタを形作った。
今度は、逆に肉片から髪の毛があふれてくる。
髪の毛は三つ編みを形作る。
間違いないS子だ。
体は萎えてしまっていて力が全く入らないため、逃げることも出来ない。
腕がのびる。
あと数十センチ。
もうだめだ。
そう思った瞬間ヒトガタはふたたび変形をはじめた。
髪が肉片に戻る。
みるみる姿を変えていく。
ヒトガタだ。
だが、大きさが違った。
小学生くらいだろう。
さらに驚くべきことに、先程までなかった目がそこにあった。
その目を見た瞬間立ち眩みがした。
見間違える筈がない。
相手を威圧するような瞳。
F君だった。
そうはっきりと認識した瞬間肉玉は砕け散った。
「それはあなたのよく知っている彼じゃないわ」
聞き慣れたは低く澄んだ声。
見慣れた巫女装束。
暗条光先輩がそこにいた。
だが、どういうことだ?さっきのは目といい体型といい間違いなくF君だった。
「残念だけど違うわ。さっきのはS子の霊体にあなたの自我が一時的に干渉してできた産物であってFではないわ。猪上君の件の時似た話をしたと思うけど」
確か自我の膨張だったか?そんな話を前に聞いた。
「まず最初に指摘しておくけどFを殺したのは間違いなくあなたよ。あなたが突飛ばした所に偶然トラックが通りかかったのよ。そのトラックにはねられて彼は死んだ」
今なんていった?トラックだと?彼は影に襲われて行方不明になったはず。
「行方不明ね。あなたの中ではそういうふうに記憶されているのね。人間の頭って凄いわよね。都合のいいように事実を改竄できる」
意味がわからない。
どういうことだ?全く理解できない。
「あなたは彼に恋していた。だから、告白した。だが、当然のことながらふられる。同性だもの。それに逆上したあなたは彼を突飛ばした。そして、彼は死んだ。それだけの話よ。彼を殺しておいて行方不明たなんて。よっぽど彼を殺したことをうけいれられなかったのね。」
思い出した。
全てを。
なんだ。
似ていたんじゃないか?俺とS子。
俺はその日、一晩中泣き続けた。
作者月夢
暗条先輩シリーズ完結です。
大きく動くとかいってこの体たらく。本当申し訳ないです。
いろいろ考えた結果がこの話での完結でした。
厳しいコメントくださった方、あたたかいコメントくださった方、そして読んでくださった方全員に御礼申し上げます。
駄目な点や誤字などご指摘いただけると助かります。