これは、私が19歳のゴールデンウィークに体験した話です。
私は二人の友人とともに、車で海水浴に行く途中でした。
車が渋滞に阻まれ、なかなか進めずにいた時です。
運転をしていた友人が、ニヤニヤしながらこんな事を言い出しました。
「こんだけ沢山の車があるんだから、霊に執り憑かれてる人とか車があるかもしれないな」
「もしかして、すぐ前の車とか後ろの車がそうだったりして」
すると、助手席に座っていた友人が、すぐにこう言うのです。
「だったら暇だし、こっちに幽霊、来てくんないかな」
私はその言葉を聞いた時、友人が言ってはいけない事を口にしてしまったような気がしました。 だから私は「おいおい、ホントに幽霊こっち来たらどうすんだ」と思わず言ってしまったのです。
しかし、私の言った事が彼を刺激してしまったのでしょう。
彼は「そしたら幽霊ちゃん、たっぷり可愛がってやるよ」と言って、笑い出しました。
それにつられたのか、もう一人の友人も「めんこくねぇ幽霊が来たら、どつく」と言って、一緒に笑い出します。
そんな二人に私は呆れてしまい、もう何も言えませんでした。
でも、二人はすぐに黙り込んでしまったのです。
私は不思議に思い、「おい、どうしたんだよ急に」と尋ねてみました。
すると二人は、代わる代わるこう言うのです。
「バックミラーに、何人かの人影が映っている」
「サイドミラーにも、写ってるぜ」
私は彼等の言う人影を確認し、ゾッとしました。
するとその時、突然に車が振動し、すぐに動かなくなったのです。
後ろの車はクラクションを鳴らし前進を促しますが、私達の乗っている車は動き出す気配すらありません。
運転をしていた友人が、堪らず声を荒げて叫びました。
「ちくしょう、動きやがれ!」
すると突然に車が動き出し、その瞬間に女性の声が聞こえたのです。
「私は連れて行ってちょうだい」
「顔には自信があるから」
作者井下祐大