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みなさんは、願掛けをしたことはありますか?
例えば高校や大学受験のとき、どこか遠くの神社やお寺へ行ってお守りや破魔矢を買ってきて、合格祈願をしたりしたことはないでしょうか?
もちろん、僕もあります。最近では今年のお正月に、今年こそは正社員として就職ができますようにと近所の神社でお祈りをしてきました。(どうしてか、菅原道真公をお祀りしているところで)そのおかげなのか書類選考が通過し、先月の初頭に受けた面接にも受かって地元での就職が決まりました。自分の熱意が評価されたのだと思う反面、これはやっぱり願掛けが通じたのではないのかと勝手に解釈しています。
でも、よくよく鑑みてみると神様ってもともと『祟る』ものなのではないでしょうか?
今よりも昔は、自分たちを守ってくれる存在に対して最大限の礼儀を示し、畏れ敬うことでその怒りをかわないように接してきたはずです。だから、何かいいことがあると感謝し、逆に調子が悪くなったりするとさらに必死になってお参りをしたと思います。
高度な文明によって支えられている今日であっても、身近なお年寄りは仏様を大切にしなさいと戒め、某宗教団体のように心の内側に抱え込む不安につけこみ、カルト宗教の信者に仕立て上げようとしたりと多かれ少なかれ目に見えないものを信じて、怒りとともに振るわれるであろう強大な力を畏れています。
つまり、目にしたり感じたものに驚愕すればするほど、人は神様を信じるようになるのだと思います。
こんな前フリに付き合ってくださり恐縮です。ここからが本題、僕がこんなお話をする理由です。
だってこれは、僕の親族に起こってしまった出来事なのですから―――
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あれはほんの数年前のこと、僕が地元に住んでいた頃のことです。
住んでいる実家のすぐ傍に親族の本家があり、そこの庭にはかなり昔から祀られている氏神様の祠と、大きくて背の高い御神木がありました。僕も小さかった頃には遊びに行きましたし、亡くなった祖父とは一緒にお参りをしていたこともあります。
霊験あらたかとでも言うのでしょうか。御神木の傍はまるで時間が止まってしまっているかのような錯覚をおぼえそうなほど静かでしたし、祠からは何か精錬で侵すことの許されない存在がこっちを見ているような気さえしたほどです。
そんな雰囲気を感じていたからこそ、急に降って湧いたようなアパート建築には不安を隠せませんでした。
当時、すでに本家のご主人の奥様はすでに他界され、ご主人も一人ぐらしなどできないほどに弱っていました。僕たちを含め、親族も昔のように氏神様をお祀りする行事も開けなくなっていましたし、これを機会に本家を取り壊して更地にし、そこにアパートを建てようという話になったのです。
父も母も本家筋のすることに口を挟む気はないようでしたが、そこに長いあいだお祀りしてきた氏神様にはちゃんとしなければと話していましたし、僕自身も『その通りだ』と二人の会話に参加しては遠い昔を思い出したりしました。
僕は神事のことに関してはまったくの素人でしたし、強い霊感があるわけでもなかったのですがどうにも嫌な予感がぬぐい去れないこともあって、買い物や仕事の帰り道に本家の庭を覗いては御神木と祠がどうなるのかと気が気でならなかったのです。
―――そんな日々が続いた、ある休日のことでした。父と一緒にタバコでも吸おうと部屋に行くと、自分のデジカメを眺めながら難しい表情をしているところに出くわしました。
「あれ、どうしたの?何かまずいことでも起こった?」
「ん?ああ・・・・・さっき本家に行って御神木を撮ってきたんだけど。これ、何だと思う?」
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父に見せられた画面に写りこんでいたのは、たくさんの小さな光の粒子を纏った御神木でした。
テレビの解説で言うところの『オーブ』というものなのか、本当に神聖な何かがそこに宿っているのだと僕に感じさせてくれたのです。おまけにその写真を撮った瞬間にカメラが壊れてしまい、どのボタンを押しても反応しなくなったというのだから尚更でした。
不思議なことがあるものだと二人で盛り上がったり、兄弟にも写真を見せて一緒に興奮したおかげで、その夜はなかなか寝付けなかったほどです。
これで終わっていたのならば、あとは神事が無事に終わってくれるのを待つだけだったのですが・・・
本当の恐怖は、全てが済んでしまったあとに起こったのです。
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それからしばらくの間、仕事や付き合いなどで忙しくしているうちにいつの間にか土地はすっかり更地になり、気がつけば立派なアパートがそこに建っていました。道路を挟んで向かい側には穏やかな川が流れ、裏手にはスーパーがありましたし、何よりも静かでかなり過ごしやすい環境です。そのうちに学生や家族が引っ越してきてすぐにいっぱいになるだろうと思いながら、あのデジカメの映像のことは頭の片隅に残っている程度になっていました。
ある日、仕事を終えて自宅へ帰ると母が何やら心配そうな顔でアパートの方を眺めていました。どうしたのかと尋ねてみると、
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「あのね、本家のXXさん事故で亡くなったんだよ」
「はあ?!また、どうしてそんなことに?!」
本家が住んでいる家の傍にある古びたアパートには、親族の叔母が昔から住んでいました。この数日、姿を見せないことを気にかけたご友人が会いに行かれると、亡くなっているのを発見されたのだというのです。遺体はお風呂に浸かったままで時間が経っていたため、通報を受けて駆けつけた警察関係者の方々も不審を覚えたらしく自宅まで話を聴きに来たというではないですかっ!!
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もちろん、僕たち家族が関わったはずもなく、叔母の死は病死と判断されました。元々、体に持病を抱えていたこともあり、それが湯船に浸かっているときに体の機能を停止させ死に至ったのだそうです。
死の連鎖はそれからも続きました。叔母の死から半月も経たないうちに本家のご主人が病死、本家の叔父や親族が不慮の死を遂げたのです。
立て続けに起こった不幸に、僕は氏神様のことが気にかかかって仕方がありませんでした。そのことを尋ねようとリビングにいるであろう母を探していたとき、テーブルの上に乱雑に置かれた調味料や箸立ての陰から一枚の写真を発見したのです。それを手にとって、僕はそこに写りこんでいたものを見て言葉を失いました。
取り壊す前の本家の自宅を背景に微笑む親族と神主様。
そこに写りこんでいる親族の顔をめちゃくちゃに塗りつぶすように、オレンジ色の閃光がはっきりと空間に刻み込まれていたのです。誰かが凄まじい怒りを訴えているように見えて、思わず弟まで呼んで確認してしまいました。父に見せてもらった映像以上の衝撃だったこともあり、買い物から戻ってきた母に写真を見せながらどういうことなのかと思わず問い詰めたほどです。
母はあまり気乗りがしないようでしたが、やがて根負けしたらしく重い口を開きました。
「お母さんも気になってXXさん(霊感の強い母の友人)に尋ねてみたんだけど、氏神様みたいに昔から土地の人々に祀られてきた神様ほど、急に動かさなくてはならなくなったときには慎重しなくてはならないらしいの。本来はすべての手順を踏まえるべきなのに・・・」
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開いた口が塞がらない、因果応報、後の祭り・・・・・・様々な言葉が浮かび、背筋がブルブルと震えました。小さかった頃から知っている氏神様、そこから感じたあの感覚はやはり嘘ではなかったのです。
アパートは今もひっそりと建っていますが、部屋が埋まっているということは一度もありません。それどころか三月、四月の忙しい時期においても引っ越しのトラックが駐車場に入っているところすら見たことがないのです。僕の家族に凶事が起こったことはありません。薄情に思われるでしょうが、それに関しては心底ホッとしているのが現実です。
触らぬ神に祟なし・・・・・・それを身近に感じた出来事でした。皆さんもどうか気をつけてください。神様を動かさなくてはならなくなったら、決して大切な手順を省かないように・・・・・・
作者南部モリーオ
初めまして、皆様。
僕が身近で体験した事の中で、神様の力を強く感じた出来事です。
もしも近くに祠やお祀りしている神様がいるのならば、どうか大切になさってください。