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中編5
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古いバス 前編(仮)

初めて投稿させていただきます。

私は、特に霊感が強いわけではありません。

しかし、時々不思議な体験をします。

私の住んでいる所は山奥の田舎で、今時珍しくコンビニまで車で15分。

自動販売機までさえも20分近く歩かないといけないほどだ。

ここは、母の実家が歩いて10分ぐらいの場所にあり、小学校2年の時に父の転勤をきっかけに家を建てた。

私の家のすぐ近くには古いバスがある。

母に聞いたところ、母の子供の頃にはすでにあったという。

古いサビだらけのバスは、子供心をくすぐられる。

弟と一緒にいつかは探検してみたいと話していたが、弟も私も極端に怖がりな性格のため実行にはうつせなかった。

ある日、私の家で母の実家に住んでいる母の姉の家族と一緒にバーベキューをやることになった。

母の姉には当時は子供が2人いて(その4年後にもう1人が産まれる)、私の一つ下のジョー(仮名)、ジョーの一つ下のピイ(仮名)と遊んでいた。

ちなみに弟は私の3つ下。

遊んでいる途中でやっぱり目に付く古いバス。

明るい昼間でもなぜか不気味だ。

きっかけは好奇心旺盛のジョーだった。

『ゆた(私の名前)!!あのバスなに??』

『しらん。母さん達が小さい頃からあったらしいよ?』

『探検してみん?あそこ行こうよ!!』

ジョーは目をキラキラさせながらバスを見ている。

私は嫌だった。なんせ怖いものが大嫌いで、人一倍怖がりだ。いくら昼間でお化けとは無縁な時間帯でも、怖いものは怖い。

しかし、一番年上の私は小さいながらのプライドがある。怖いから行けないなんて絶対言えない。

『えー鍵かかってるかもしれんから入れんら?』

私の精一杯の抵抗!

そんな時、ピイがバスを指差しながら言った。

『えー?鍵空いてるよっ。ドアも半開きだし』

おい、まて、余計なことを言うな。

『えーでも、怖いから辞めようよ』

ナイス弟!!

ジョーは最年少の弟の事がお気に入りで、弟にはとても優しい。

これでこの不気味な探検は中止になる。

そう考えた私は、単純すぎる思考能力だった。

『じゃあ、てた(弟の名前)はここでまっといな!

俺とピィとゆたの3人でいっとくるから!』

おいおいまてまて、中止じゃないのかよ、!

マジで行くのかよ!!

ジョーの好奇心に対抗できるものはなく、結局バスの探検に行くことになった。

バスのさびだらけのドアを開けるジョー。

ギィーー

開けた瞬間中からホコリの匂いがぶわっと顔にまとわりつく。

天井に張り巡らせてる蜘蛛の巣。蜘蛛が大の苦手な私は今すぐにでもバスを出たかった。

『なーんだ。ただの物置じゃん』

ジョーには、期待外れだったようだ。

バスの中は、ビニールシートや農業用のクワやスコップ、肥料袋や注射器などがおいてあり、ここら辺の家の物置小屋ならばどこでも見れそうな物ばかりおいてあった。

『ゴホッゴホッ!ホコリくさーい。兄ちゃんもう出ようよー』

ピィの不満そうな声をキッカケにバスの中を出ようとした私たち。

ニャーニャー

バスの椅子の下から4匹の子猫が出てきた。

『わぁー猫がおるっ』

猫が大好きだった私は不用心に猫を抱きかかえた。

『ほんとだーかわいいっ!』

ジョーもピィも子猫を撫でている。

子猫は喉をゴロゴロ鳴らし、とても人懐っこいようだ。

『ん?この猫、眼が塞がっとるよ?』

なんと4匹の子猫全部、上下の瞼が張り付いており、目の端には目やにがたまっていた。

『かわいそうに。病気なんかな?しかも野良猫ぽいし、かーちゃんに頼んだら飼っていいっていうかもしれん!』

バスの外で待っていた弟を呼び、皆で子猫を抱きかかえて大人がバーベキューをしている場所に行った。

『かーちゃん!!そこのバスから猫が出てきたんな!!でも、眼が病気で開かんくてかわいそうだから世話して元気にしてあげたい!!飼ってもいい?』

『だめよ!てたが猫アレルギーだからうちでは猫は飼えません』

え?

衝撃の事実!

みんな一斉にてたを見る。

『てた、猫アレルギーだったん?』

ピィに問われて、弟は首をかしげる。

『今まで猫とか普通に撫でたりしても、なんもならんかったんに?』

『いいからとにかく、元の場所に戻してきなさーーい!!』

母の渇で渋々子猫を戻してきた。

子猫の頭を撫でながら

『俺のせいでごめんね…アレルギー治していつか迎えに来るからね』

と、弟が名残惜しそうだったのを今でも覚えている。

その後、しっかり手洗いをしてバーベキューに戻った。

数日後、夜中に目が覚めて喉が渇いたので、居間に水を飲みに行った。

コップに入った水道水をごくごくと飲み干していると

ぎぃぃいい

と、居間のドアが開いた。

『あ、てた起こした?』

弟の部屋は居間を通らないと廊下に出れない配置になっている。

寝起きのため、ぼーっとした顔つきの弟は返事をせず廊下に出て行く。

トイレかな?

とくに気にせずコップを洗うと

ガチャッ

これは、玄関の鍵をあける音?

こんな夜中に???

慌てて玄関に向かったが、弟の靴はある。

しかし、玄関の鍵が開いている。

こんな夜中に外に出る意味が分からないし、私の家の前にはお墓がある。

怖がりの弟は外に出れない。

それなら、弟はどこに行った?

私は弟を追いかけて玄関に来た。

弟とすれ違えるほど私の家は広くない。

そうなると、弟は外に出たしかない。

私は慌てて外にでる。

弟は裸足で地面をパタパタ歩いていた。

弟がおかしくなった。

外に出るのも怖い。

おかしくなった弟も怖い。

でも一番は、おかしくなった弟をこのままほっとくのが一番怖い。

私は半泣きになりながら弟に追いつき、弟の肩をつかんだ。

『ちょ、てた待って!!

どうしたの?どこ行くの?』

振り返った弟はぼーっとした顔をしてパタパタと歩き続ける。

私は心底怖くなって泣きながら弟に抱きついた。

『ねぇぇええ、やべでぇぇええ、いがないでぇぇええ、やぁべでぇぇええ(ねぇ、やめて、いかないで、やめてーー)』

弟は泣き喚く私を引きずりながら、古いバスに向かって歩いていく。

普段の力比べては圧倒的に私の方が強く、私の恐怖心はますばかりだ。

私の必死に止めるのも叶わず、バスにたどり着く。

Concrete
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