もう10年も前の話になります。
ところどころ、抜けている部分もあり、話がおかしいかもしれませんが、お付き合いいただけたらと思います。
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仕事終りに、急に先輩が海に行くと言いはじめた。
今の時間は深夜の一時。
道が空いているとはいえ、クタクタの体で四時間近くのドライブはつらい。
しかし、この先輩にそんな言い訳は通用しない。
「お前、行きは運転な。俺は帰りね。」
ま、そうだろうな…
コンビニで食べ物、飲み物をどっさり買い込む。
「先輩…こんな必要っすか?」
「念には念をだ。」
いつもこんな感じだ。
僕は音楽大音量の先輩の車を走らせた。
順調に進み、このままでは夜明け前には海に到着する。
早く眠りたかった。
なのに…
「これ、早く着いちゃうな。山の方をまわっていこう。」
の、一言で遠回り。眠気が溢れ出す。
そんな僕をみてか、先輩が怖い話してやると言い出した。
しかも、これから通る山道にまつわる話だそうだ。
この眠気が飛ぶならお願いしたい。
車は山道に入った。
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先輩の話…
この山道でドライブ中のカップルが事故にあった。
対向車と正面衝突してしまい、彼女と相手のドライバーは亡くなった。
生き残った、彼氏は自分を責め続け、自殺をはかった。
その自殺がとても悲惨であった。
それからこの道のガードレールにはときどき生首が見えるらしい。
なぜなら、事故で亡くなった彼女は車から飛び出し、首と胴体が離れてしまった。
彼氏もそうなるように自殺をし、首と胴体が離れて見つかった。
だからだと言う話だった。
さすがに深夜の山道で、この話はやばい。
とても怖かった。
少し間があり、先輩が言った。
「やばい…」
バチン‼……
山道にわずかにある外灯が消えた。
視界に入っていた、左右六ヶ所の外灯が音をたて一瞬にして消えた。
「せ、先輩、これって?」
「やめよう、まじでやばいな。俺は寝るわ。」
えー、まじかよ。心の中で叫んだ。
真っ暗の中を何とか進むと、外灯が見えてきた。
よかったと思ったが、助手席を倒し寝ている先輩を横目でみた時、サイドミラーに人の顔、顔だけが見えた気がして、思わず叫んでしまった。
「あー‼なにー‼‼」
驚いた先輩は起き上がり、どうしたとびっくりした顔をしたが、次の瞬間
「逃げろ‼」と叫んだ。
目が合ったらしい…
アクセルを全開にして、前しか見ずに走った。
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どれくらい走ったか覚えていない。
無我夢中で山道を抜けた。
少しして、海が見えたが嬉しさが全くない。
先輩もかなり怖かったようで、明るい場所に止まって寝ようと言い出した。
コンビニがあるが開いていなかった。
少し明るくなってきたので、ここら辺なら大丈夫だろうと言うことで、車を海辺のトイレ休憩ができる駐車場に停車させ、眠ることにした。
眠れる気がしない。そう思っていると先輩が話しかけてきた。
「どっち、だった?」
「よく、分からなかったです。でも男の気がしました。」
「正解、男だった。ばっちり目が合ったよ。」
「まじで気絶するかと思いましたよ…」
「忘れるしかないな、怖すぎだよ。」
しばらくすると、二人とも眠りに落ちていた。
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目を覚ますと、だいぶ明るくなっていた。
時間は八時を過ぎたとこだった。
先輩も起き、例の恐怖からか、帰ることにした。
運転をかわってもらい、帰り道を走りだしたが、先輩は高速で帰ることにしたらしく、高速道路に向っていった。
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知らない内に眠ってしまったらしい、車は高速道路を走っている。
頭の中はぼーっとしており、目を閉じればまたすぐに眠れそうだ。
工事中の看板が視界に入る。
赤いコーンも遠くに見えてきた。
頭の中で、工事中か…と思ったと同時に、車線変更しないとぶつかると思った。
先輩の方を見ると、サイドミラーに目を向けていた。
「先輩!」大声をだした。
前をみた先輩が急ハンドルをきる。
キー‼ 急ハンドルと急ブレーキ、車は見事に一回転した。
赤いコーンをなぎ倒し、工事中の道路に止まった。
シートベルトをしていたおかげで、横の窓に頭をぶつけたぐらいで済んだ。
「先輩、大丈夫ですか⁉」
頭から血がでている。
「大丈夫…大丈夫。」
放心状態だ。
交通警備は電光掲示板だったし、誰かを巻き込んだ様子もない。
工事関係者がきて誘導してもらい、警察署にそのまま向かった。
先輩は聴取されたが、動物が飛び出したと言って通した。
そこからは僕が運転して帰ることにした。
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先輩が重い口を開いた。
「あの時、俺は寝てたわけじゃないんだよ。」
「横、見てましたよね?」
「ああ、サイドミラー。」
「ま、まさか?」
僕はサイドミラーを見てしまった。
「今も、いるか?」
「い、いや、いないです。」
僕は見たが、顔はなかった。
無言で走り続け、地元に近くなったとき、先輩が寺に寄ると言いだし、言われたままの道を走った。
墓地があり、寺が見えてきた。
先輩は目を伏せたまま車を降り、僕も先輩のあとに続く。
「すみません!」大声で声をかけると、住職がでてきた。
先輩と僕をみて、「どこに行ったんだ!」と目を見開き、怒鳴る口調で言った。
先輩がすべての経緯を話すと、住職は本堂に先輩を連れて行った。
「あの、僕は?」と言うと
お主は大丈夫だと言われ、待っていなさいと。
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一時間はたっただろうか、先輩が怠そうに戻ってきた。
住職も来て、少し休ませてから帰りなさいと言ってくれた。
先輩は死んだように、眠っていた。
その間に、住職は僕に話してくれた。
先輩は目が合ったことにより、例の彼に気づいているとばれたようで、未練をとてつもなく残した彼は、先輩に憑いた。
そして先輩を彼と同じ様に、連れて行きたかったと。
深い所までは分からなかったらしいが、うかつにその場で起きたことを話すのは非常に危険なことなんだと、きつく言われた。
ただ、もう大丈夫だから安心しなさいとも言ってくれた。
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先輩が起きたので、住職に何度もお礼を言い、ようやく帰宅することができた。
それから先輩は、二度と怖い話はしません。
みなさんも、時と場所を考えてする方がよさそうです。
作者げげげの怖男
思い出しながらなので、つじつまが合わないかもしれませんが、本当の話です。
楽しんでいただけたらと思います。