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中編4
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冬の踏み切り

北海道の冬は寒くて厳しい

緊張状態を紛らわす深呼吸でさえ

命にかかわる事もある。

寒い夜にくしゃみをすれば

鼻水が凍る。

これぞ北海道名物

百年の恋も覚める鼻水氷柱

そんな北海道の冬に行ったと言う

切なく悲しいお話し…。

その日は冷え込みの厳しい夜だった。

1人の女子高生が帰り道を急いでいた。

『急がなきゃ!!遅れちゃうわ!』

この日女子高生は何時もよりも

帰宅を急いでいた。

足取りも何時もよりも早くなり

寒さに吐く息が白くなる。

この日は大好きな男の子の誕生日

クラスの皆でその男の子の家で誕生日会を

開く予定だった。

『彼処が厄介なのよね…』

彼女の言う彼処とは

通学路にある

開かずの踏み切り

一度、遮断機が降りると

何台も列車が

通過するためなかなか通れない。

この時間帯は特に台数が多く

最長でも15分は掛かる。

段々と冷え込みも増して

風と雪が激しくなって来た。

彼女の足取りもより一層早くなる

寧ろ、早足と言うより小走りになっていた。

漸く例の彼処 開かずの踏み切りが見えて来た

『急がなきゃ!!急がなきゃ!!』

カンカンカンカンカンカン!!

電車が通過する警報機と共に

遮断機が降り始めた。

何時もならば大人しく諦めるが

この日ばかりは急がねばならぬ事情があった。

女子高生は遮断機を飛び超えて

ダッシュで踏み切りを駆け抜ける積もりだった

女子高生は陸上部、足には自信があった。

『ていっ!!』

遮断機を颯爽と飛び込え

駆け抜けようとした瞬間

凍結した線路で滑り

尻餅を着いた。

『イテテテ…』

しかし彼女にはもう痛みに浸る時間は

残されていない

一刻も早く立ち上がなければなならなかった…

『アワワ!!ヤバい!ヤバい!』

『立たなきゃ!立たなきゃ!』

慌てれば慌てるほど

線路は滑り体制を立て直す事は困難になっていた。

白い靄の中電車はもう目の前に迫っていた!

ドオォォォッ-ン!!

物凄い衝撃音が電車内に響いた。

キキキキキキキィッ-!!

若い運転士は慌ててブレーキを踏んだ。

『すみません…吹雪で見えなくて…。』

若い運転士は気まずそうに車掌に告げた。

『きっと鹿だろ。』

車掌は慌てる様子も無く電車を降り

外の様子を確認しに外に出た。

北海道では野生動物を電車が轢いてしまう事が

珍しく無い為

どの道その類いであろうと

車掌は思っていたからだ。

運転士も車掌に続いて外へ出た。

『ぐわっ!こりゃあ酷いなぁ!!鹿じゃない!!』

車掌と若い運転士は壮絶な惨状を目の当たりにした。

『ウォップ!!』

若い運転士は溜まらず嘔吐した。

身元は分からないが

車輪に挟まれ轢き千切られた下半身は

チェック色のスカートにルーズソックス

容易に若い女の子であろう事は理解出来た。

遠くの方には上半身と思わしき肉塊がゴロリと転がっていた。

白い雪は鮮血で真っ赤に染まっていた。

車掌は事故報告の為その場を離れて

若い運転士だけが残された。

『はぁっ~』

若い運転士は惨状に背を向けて溜め息を着くと

煙草をポケットから取り出して

何時もより深く吸い込み

『プフゥー』

と煙りを吐いた。

自分は大変な事をしてしまったと 

激しい罪悪感に苛まれていた。

少しでも今の現状から

現実逃避しようと必死だった。

足元をチラリと見ると

轢き千切られた下半身から覗いている

下着に目に入った。

『グオァー!!』

こんな時に垣間見た自分のスケベ心に

嫌悪感を抱き

また煙草を深く吸い込んだ。

ズッズズッズ…

ズッズズッズ… 

運転士は気づいていた。

先ほどから聞こえる奇怪音に

ズッズズッズ…

ズッズズッズ…

そう…背を向けている後ろから

さっきから聞こえていたんだ。

気づきたく無かったから

聞こえ無い不利をしていたが

ズッズズッズ…ズッズズッズ…

音が明らかに大きくなっているので

気づいてしまった。

ゆっくりと振り返って見た。

 『…っ!』

運転士はギョッとした

遠くへあった筈の肉塊が直ぐ近くまで

迫っていた…

ズッズズッズ…

『…けて…』  

ズッズズッズ…

『…ぅけて…』 

肉塊は何か呻きながら這いずり近づいてくる

ズッズズッズ…ズッズズッズ…ズッズズッズ

『…すぅ…けて』

若い運転士の足元まで近づいて来た

『ひゃあ』

若い運転士は恐怖の余り

情けない声を上げ

逃げようとしたが足を滑らせて

転倒した

ガシッと肉塊は若い運転士の足を

掴むと下半身を伝い上半身まで上がって来る

若い運転士は必死で逃げようとしたが

凍結した路面では逃げるに逃げれない

肉塊は若い運転士の上半身に抱きつくと

耳元で…

『たぁすぅけて…』

『嗚呼~っ!!』

断末魔の叫びを上げ

運転士は気を失った。

事故報告を終えて車掌が戻ってきたが

若い運転士の姿が無い事に気がついた。

『…ったく。何処行ったんだ?』

仕方なく車掌は

シンシンと雪が降る中

運転士を探し回った。

やがて、轢き千切られた女子高生の上半身に

抱きつかれたまま気を失った運転士を見つけた。

『…』

車掌は壮絶なその光景に絶句した。

運転士の白い制服は女子高生の上半身から流れて出た鮮血と腑でどす黒い紅色に染まっていた。

その後、運転士は精神を患い病院に入院したが

自ら命を絶ったと言う。

車掌は職場復帰したらしい。

女子高生は運転士に助けを求めるまで

息があったらしい

寒さで傷口が一時的に凍結していたと…

そんなことが本当にあるのか?

ただ一つ言えるのは

冬の北海道ならあり得るかもしれない。

このお話しは北海道で語り継がれる

怪談話である。

Concrete
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怪談というより、可哀想な話しだなぁ~

彼女の為に怖いを押します。

返信

有名なお話ですよね
実際上半身だけの状態で人間がそこまで動けるのか凄く気になります
もし助けられたら命だったりしたら悲しい

返信