ある夜の事。
私は同僚を乗せ、自動車で帰り道を走っていた。
まだ夜はそれほど深くなく、行き交う車はそこそこの交通量。
天候は曇り。
星は見えないが、すれ違うヘッドライトと照明灯のおかげでそれほど暗くも感じない。
そんな道中、仕事の事や巷で話題のニュース等の話に花を咲かせながら、車内は和やかな空気に始終していた。
そんなドライブも同僚の家が近くなり終盤に差し掛かった頃、幹線道路から側道に降り、その先の信号がちょうど赤に変わった。
信号待ちのその間、静寂の中と思われる程私は信号の先にある向かい側のガソリンスタンドに集中していた。
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24時間営業ではないそのガソリンスタンドは、もう明かりが消えていて、辛うじて店に施されているカラーが青いことと、店全体の大まかなシルエットがわかるだけだった。
そのガソリンスタンドの屋根に・・・?・・・・・!!
人が歩いている!?
ガソリンスタンドの屋根は平らな形なのだが、そこをゆっくりと左から右へ歩いている。
背格好からして男と思われるのだが、この時間に明かりの無いガソリンスタンドの屋根になぜ人が?という疑問もあったが、今信号待ちをしているこの場所、実はこのあたりではちょっと有名な、霊の目撃談やエピソードの多い地域なのである。
一瞬にして、頭の中の「なぜ人が?」が「人ではない何かかもしれない」に切り替わったと同時に信号が青に変わり、その場を離れる事ができた。
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少し走ってから同僚が「何か見たの?」と声をかけてきたので、「変なの。たぶん信じられない光景だよ。」と答えると「側道に降りた時から空気が変わってたから、見ないようにしてたの。」
実は、同僚は子供の頃から霊や不思議なものが見えるのである。
「側道に降りた時信号の先を軽トラが左から走って来てたでしょ?あれに乗って来たんだよ。」
「ええ〜っ!?そうなの?何かいると思って、ジ〜〜って見ちゃったよ〜〜」
と私が見たのがどんなものだったのかを話した。
「ああいう場所だからね、時々現れちゃうのはしょうがないかも。」
実は、うわさは聞いていても私自身がその場所で見てしまうのは初めてだった。
見た物がなぜ幽霊として彷徨っているのか?その理由も正体も伺い知る由もないが、その日以降、私はその側道は二度と通らないことにした。
作者神威蓮
私が実際に体験したエピソードです。
霊感のない私が見えたのは、霊感を持つ同僚と一緒にいたからではないかと思っています。
問題の地域は昼までもどこかじめっとして暗い感じがします。
その何かがやって来た先は海のある方向です。
こちらの海も東日本大震災の時津波で犠牲者が出ています。
関係があるのかないのか、それすら不明ですが、チキンな私は二度と会わないように、その道を避けています。