初めまして。
水無月龍と申します。
私がこれからお話する物語は、
いまは現存していないとある廃村で
私が実際に体験した物語です。
10年以上前のお話ですので、
記憶違いの所もあるとは思いますが何卒ご了承ください。
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1998年8月。
当時小学1年生だった私は、
関東のとあるサッカークラブの強化合宿で
S県N村に来ていました。
当時、生粋のサッカーバカであった私は、
翌月9月の大会で勝つために、
同村内の某施設内の競技場で猛練習を行っていました。
※物語の舞台は、その施設を流れる川から
少し上流のバンガロー村になります。
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合宿は全部で3日間あったのですが、
その1日目の夜。
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夕飯をを食べ終わった後。
私達は、練習の疲れを癒す為
川沿いのバンガローに集まり、寝袋の用意をしていました。
寝袋の用意が終わり、消灯時間まで少し時間が余った為、
コーチ(以下、コーチAとします)とメンバー総勢20名程で怖い話をしよう、という流れになりました。
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当時流行っていた
「口さけ女」
「人面犬」
「てけてけ」
これらのネタに盛りという名の調味料を大量に付け加えた話が数十話続きました。
(当時のメンバーは小学生なので、その類に関する経験が少なかったのでしょうか。)
そして怖い話大会も大トリにさしかかった頃。
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クラブNo.1怖い話好きのサッカーのコーチAは、
大トリにふさわしい、その村にまつわる1つの事件を語り始めました。
music:1
「みんな、知ってるか?
実はお前たちが今いるバンガローへ向かう道の途中の橋。
あそこでは、人が一人亡くなっているんだよ。」
一同唖然。コーチAはさらに話を続けます。
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「なんでもそこの川は、
ダムが出来る前は毎年、夏に台風が来るたびに大洪水が起こっていたらしい。」
そして、私達がこのバンガローに来る数年前の夏に、
N村近くの中学校に通っていた女学生がその大洪水で流されたとのこと。
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その大洪水が起きたのが深夜であること、
さらにその女学生は大洪水が起きる前に
その曰く付きの橋の付近で集団で遊んでおり、
大洪水後に警察の捜索が入ったが、
遺体が上がらず事件が未解決のまま現在に至る、
といったことをを如実に話してくれました。
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music:4
「これがコーチの中で一番怖い話お話でした。
どうだ、なかなか怖かっただろう(笑)」
ここで当時の私が思っていた個人的な感想を述べるとすれば・・・
「そんなん寝る前に聞かされたら眠れなくなるやんけ!(泣笑)」
というのが正直なところでした。
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ただ、その時コーチAは
「今の話は全部俺の作り話!
さ、お化けが出ない内に全員寝ること!」
と話していましたが、私はコーチが一瞬例の橋の方に視線を向け、
少し強張った顔をしていたのを見逃しませんでした。
その日の夜は、合宿の集合時間が早かったのもあってか、
何事も無くすぐに眠りについてしまいました。
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合宿2日目。
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この日は、午前中に練習を行い、
午後に虹鱒(ニジマス)の掴み取り大会を行うことになっていました。
掴み取り大会の場所は、
バンガローへ向かう例の橋から50m程上流にある、
川の主流から少し外れた川の支流。
(川の脇を流れる小さな小川のようなもの)
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私を含めたチームメンバーは、
我先にと虹鱒捕獲に躍起になっておりました。
私も負けじと虹鱒を捕獲にかかり、
ようやく捕獲!
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初めて生きている魚を素手で捕獲に歓喜していたのもつかの間、
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目を疑う光景が例の橋の下にありました。
素手で掴んだ虹鱒の前方には橋。
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その橋の下に、制服をずぶ濡れにした一人の女学生。
距離が遠かったので表情こそ分かりませんでしたが、
少なくとも体は私の方を向いています。
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目を疑いました。
なぜなら女学生が佇んでいたそこは、
水深が2m程あり、普通の女学生がそこに佇むことは不可能であったからです。
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music:4
「おーい!どこ見てんだ、よっ!(笑)」
「うわっ!」
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私のケツを思いっきり叩いたそいつは、
チームのキャプテン(以下、メンバーAとします)。
じゃれ合いこそありましたが、当時からチームの兄貴分でした。
「何やってんだ、ボーッと橋の下なんか見て?」
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「いや、あそこに女の人が・・・!あれ??」
制服をずぶ濡れにした女学生はおらず、
そこには橋と川があるだけでした。
「そんなとこで突っ立ってるとお前が捕まえられるぜ?(笑)」
メンバーAは、女学生の存在に気付いていませんでした。
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私もその時は何かの見間違いであると無理やり信じ込み、
虹鱒の捕獲に一心不乱に没頭しておりました。
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2日目の夜。
1日目と同じように寝袋を用意し、川沿いのバンガローで寝ていました。
music:3
深夜1時を回った頃。
ふと目が覚めました。
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よくあるベタな展開ですが、
私の寝ていたバンガローのメンバーで起きているのは私だけです。
「ポチャーン、ポチャーン・・・」
それは、川の方から聴こえてきました。
正確には、例の橋の付近から聴こえてきているようです。
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「ポチャーン・・・、ポチャーン・・・」
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バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ
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「!?」
誰かが溺れている・・・!?
このままではマズイ!助けなきゃ!
しかし、気持ちとは裏腹に体は全く動きませんでした。
なぜなら、向けた視線の先では、
誰一人として溺れている人間がいなかったからです。
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そして、
視線の先にある例の橋のふもとにそれはいました。
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・・・ずぶ濡れの女学生。
その女学生の辺りにゆらめく2つの火の玉。
・・・この世の者ではない、本能がそう語りかけていました。
女学生は、こちらを見つめたまま何かを語りかけています。
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しかし、私とその女学生との距離は約100m。
ましてや室内にいる私には当然、
声など届きません。
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「タスケテ・・・タスケテ・・・」
この世の者、であれば。
耳元で聞こえるはずのない声が聞こえた私は、
その場で気絶してしまいました。
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music:5
翌日の朝5時頃、まだメンバーが寝静まっている時間帯です。
コーチAは気絶から回復した私に一言、
「見たのか?」と。
以外な一言に、私はただ頷くしかありませんでした。
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私と同じバンガローで寝ていたそのコーチAいわく、
夜中に突然起きた私の行動に目を覚まし、
異常を感じた為必死に声をかけようとしたとのことでした。
ただ、その時コーチAは金縛りにかかっていたらしく、
声はおろか指先すらも動かない状態だったそうです。
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そして、朝の5時までその状態が続き、
薄明かりが差した頃にようやく金縛りが解けたそうです。
(すみません、この辺りの状況はうろ覚えです。)
一連の話をコーチAに話すと、
コーチAの顔がみるみる青ざめていくのが解りました。
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結論から申し上げますと、物語の冒頭で話したコーチAの怖い話。
あのお話は、正真正銘の実話だったそうです。
また、例の大洪水が起こった時刻。
私が女学生を見た時刻とほぼ同時刻に起こっていたそうです。
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そう、午前1時32分に。
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この話はあくまでも私の体験談なので、
大洪水事件の真偽は私には分かりません。
また、この件に関わることについて、
私は一切の責任を負いかねます。
ただ、別のコーチ(以下、コーチBとします。)の話によると。
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「私も同じ時間に聞きましたよ、
ポチャーン・・・って音・・・。
そう、あれはちょうど午前1時半頃だったね。」
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あの女学生かどうかは不明ですが、
音が聞こえたのは確かだそうです。
以上が私の体験談になります。
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尚、この物語に関すると思われる旧N村龍神伝説を発見致しましたので、
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こちらに規約に触れない形で掲載させて頂きます。
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以降は、私が実際に旧村の方からお聴きしたお話。
伝説の内容については、事実と違う所もあるとは思いますが何卒ご了承ください。
※仮に、旧N村の場所を推定・特定されたとしても
その後の行動に関わる責任は一切負いかねます。
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music:1
人々が雨乞いの祈祷を行っていた時代。
旧N村では、その村に存在していた
三体の龍頭に力を借りることによって、
干ばつ問題を解決していたそうです。
ある夏の昼下がり。
連日続く日照りで、
旧N村では深刻な水不足が起こっておりました。
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ある農民は言いました。
「ここ最近は日照り続きで、
作物の収穫が望めねえ。
なんとかならんかね?」
また、ある一人のある農民は言いました。
「本当に雨が降らねえ。
おらの畑はカラッカラだあ。
鍬を振るえば土ぼこりが立つんでさあ。」
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この問題を解決すべく、
村の住民が知恵を出し合っていた最中、
一人の女性がこんなことを言いました。
「そうだ!村の神社!
あの神社にいる龍神様にお願いしてみんべぇ!」
農民達は、
村の神社に三体の龍頭があることを思い出しました。
そして、その三体の龍頭のうち
一体の龍頭である「女龍頭」を持ち出し、
村の川のほとりまで運んでいきました。
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川のほとりに着くと、
村人は雨乞いの儀式の準備を始めました。
その儀式の内容とは、まず
・儀式(詠唱)は深夜から
・村の女性が頭に女龍頭を持つ
・その女性の身体に麦わらの束を巻きつける
・巻きつけた後、川の中腹に立たせる
といったものでした。
その後、女性を川の中腹に立たせ
村人はその女性の周りに集まり
川の水を手ですくうと、
一斉に女性に掛け始めたそうです。
その姿は、まるで女龍神に
大量の雨が降り注いでいるかの光景であったとのこと。
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そして、「バシャバシャ」と大量の水を掛けながら
全員である唱えごとをするとのことです。
(唱えごとの内容は、
特定を避ける為ここでは割愛させて頂きます。)
その後、しばらくすると
人々の願いが叶ったのか、雨が降り始めてきました。
村人は、幾日ぶりの雨に歓喜の声を上げ、
互いに雨乞いの儀式の成功を喜び合ったそうです。
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異変が起こったのは、それから間も無くのこと。
「もう雨もこのくらいでいいじゃろう。
はやく止んでくれんかのう。
おら、もう家に戻らねえと。」
農民の一人が呟きました。
その農民の言葉とは裏腹に、
雨は先ほどよりも、なお強くなっていきました。
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その農民を含めそこにいる人々は
勢いが強くなる雨に危機感を覚えたのか、
続いていた雨乞いの儀式を中止する為、
川の中腹にいる女龍頭と女性を避難させることを決めました。
その時。
川の上流から聞こえる轟音。
それは、儀式を行っている川の中腹に
激流が来ることを意味していました。
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刹那。
激流は女龍頭と女性を呑み込みました。
一瞬の静寂の内。
悲鳴を上げる者。
怯えて逃げ出す者。
腰を抜かす者。
雨乞いに歓喜していた農民達の姿は無く、
そこにあるのは阿鼻叫喚の世界でした。
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その後、雨乞いによってもたらされた豪雨は
その日を境に幾日も続き
その次の年も、幾年後も、
・・・そして、文明が発達した今現在でも。
決まって同じ夏の時期に豪雨が降るそうです。
尚、流された女龍頭と女性は
豪雨が止みしばらくしてから
農民総出で捜索が行われましたが、
結局、双方とも見つからず
捜索が打ち切られてしまったとのことです。
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この後、旧N村では
夏の日の特定の時期に発生した氾濫について
「龍が唸った」
と口を揃えて言うそうです。
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music:4
そして、この旧N村龍神伝説は、
昭和中期〜後期にかけて発生した
「ある事件」と織り混ざって
私の面前に現れました。
(少なくとも私が推定する範囲で現れた、ということです。
私が体験した事実が必ずしも旧N村龍神伝説、
また「ある事件」と繋がることを保証するわけではございません。)
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しかしながら・・・
私が遭遇した女性の幽霊。
女龍神を持っていた女性なのか。
または、「ある事件」と深く関わる女性なのか。
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全ては謎の中です。
作者水無月龍
初めまして。
水無月龍です。
自身が実際に体験した物語を綴っていきたいと思います。
※物語に加筆・修正を加えました。