短編1
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人混み。

その日は雨が降っていた。

ツイてねぇなぁと思いつつ、傘を差して家路を急ぐ。早く帰ってレポートを仕上げなくちゃならんかったし。

ふと視線を上げる。いつの間にか歩道は混雑気味だった。人、人、人…人波に呑まれそうになりながらも、何とかそれらをよけて進む。

「あれ…?」

そういえばおかしなことがある。

道を歩いている連中は、誰1人として傘を差していないないのだ。

雨ったって、小雨っていうレベルじゃない。結構ザンザン降りだってのに、誰も傘を差さないで黙々と歩いているのだ。

何か変だな…。そう思ってると、「おい、あんた!そこにいる黒い傘差してるあんただよ、あんた!

黒い傘というと…俺か?

声がしたほうを見ると、タクシーの運転手が窓から顔を出していた。

「ちょっと来て。乗せてってやるからさ」

「いや、別に。歩いて帰れる距離ですし」

「いいからいいから。乗りなさい」

「いやでも…」

「早く!」

俺は渋々タクシーに乗り込んだ。別にタクシーなんぞに乗らなくてもいいのだが、オッサンがうるせーんだもん。

「何なんすか、一体」

多少キレながら尋ねると、オッサンは安堵した表情を見せた。

「いやね…。あんたが誰もいない歩道を、まるで誰かをよけてるみたいに歩いてたからさ。これは助けなきゃと思ったんだよ」

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それは恐ろしい(-_-;)
一人きりだと思ってる部屋も実はぎゅうぎゅうだったりするんですかね!?
(・・;)

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薄紅様。コメントありがとうございます。

それは一理ありますね。
もしあの時、彼が気づいてしまっていたら…どこかへ連れ去られてしまったのかもしれないですね。

一説によると、世の中には生きている人間以上に幽霊のほうが多いそうですよ。

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周りにいるのがこの世のものじゃないと気付く前に助けてもらえて良かった
何か気付いてたら連れて行かれてそうな気がする…

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来道様。コメントありがとうございます。

ドッキリだとしてもドッキリではなかったとしても、どちらにせよショッキングですよね(笑)。

道を歩いていて、怖い体験をしたことは私自身も経験済みです。
私の場合、駅前を歩いていたら、ビラ配りのお姉さんが近づいてきて、「これ!」と言って持っていたビラの全てを渡されたことがあります(笑)。

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こんなんいわれたら、
ショックすぎる。
なんでおれがこんな大掛かりなドッキリに!
みたいな。
しかしドッキリじゃなかったら、
ショックすぎる。

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匿名様。コメントありがとうございます。

気になりますね(笑)。でも恐らくはワンメーターではないですかね。タクシーを使うほどの距離ではないと言っていましたし。

レポートは…こんなことがあったから、手がつけられなくて遅れているのかもしれませんね。

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