あれは秋先に入ってすぐのことでした。
去年の10月ぐらいのことだったと思います。
深夜にも関わらず、甘い物が食べたくなり、
近くのコンビニに出掛けました。
時間帯が時間帯でしたので、客の姿は私以外に
見当たりません。私は手早くプリンやらシュー
クリームやらをカゴに入れ、レジに向かいました。
会計を済ませ、外に出た時です。
「イズミちゃん?ねぇ、イズミちゃんでしょ?」
いきなり見知らぬ女性に話し掛けられました。
勿論、見覚えはありません。それに私の名前も
イズミではないのです。
人違いでしょうと言ったのですが、彼女、なか
なか信じてくれなくて…。説得にはかなり時間
を要しました。
10分程の押し問答の末、どうにか人違いに気付
いてくれて。やれやれと思った矢先、彼女の口
から意外な言葉が。
「そっかー、イズミちゃんじゃないんだ…。でも
あなたでもいいや。良かったらさ、一緒に行っ
てくんない?」
「私さぁ、ネットの自殺サークルで知り合った
イズミって子と待ち合わせしてんの。1人で死ぬ
の怖いじゃん。心中ってやつ?」
「でもさぁ、ずっと待ってんのに来ないんだよ。
フラれたかなぁ。だからさ、一緒に来てくれな
い?樹海行こうよ。有名な自殺スポットなんだ
ーーー」
…彼女の言葉を最後まで聞くことなく、私は
走ってその場から逃げ出しました。
それからあのコンビニには行っていません。
作者まめのすけ。