ある夫婦がいました。夫は家の外では大人しく、内気な性格でしたが、家に帰ると人が変わったかのように凶暴になり、妻に激しい暴行を加えていました。
顔や体を力一杯殴られ、妻の体には幾つもの痣が出来ていました。長く艶やかな黒髪も、鋏でブチブチと切られ、散切り頭状態。おまけに入浴もさせて貰えないため、美しかった妻の面影は日に日になくなっていきました。
夫は暴行を加えながらも、力ずくで妻にのしかかり、1日に何回も性行を強要し、結果妻は妊娠しました。
決して望んだ妊娠ではありませんでしたが、妊娠を機に、夫が変わってくれるのではないかと妻は密かに願っていました。しかし、相変わらず夫は暴力を振るい、挙げ句、妻のお腹を蹴るという行為までするようになりました。
「このままでは私は殺されてしまう。お腹の子だって無事じゃ済まない…」
悲観した妻は、ある日とうとう夫を殺害しました。
遺体は鋸でバラバラにし、更に包丁で細かく切り刻み、トイレから少しずつ流しました。そして夫は行方不明になったということにしていました。
それから3年の月日が経ちました。妻はあれから男の子を出産し、親子2人、とても仲良く暮らしていました。
丁度その頃、妻には付き合っている男性がいました。彼はとても優しく、頼りがいのある人で、再婚するには相応しい人でした。
再婚する前に、1度息子に会わせようと、妻は男性を家に招きました。
「新しいお父さんになる人よ」
息子にそう言って彼を紹介しました。すると息子はニッコリ笑い、母親の耳元に口を寄せ呟きました。
「このお父さんも、悪いことしたら殺すんでしょ?」
作者まめのすけ。