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これは私が実際に体験した今思い出しても少しぞっとする話です。
看護師になりたてだったあの頃、私はある患者さんを担当することになった。
60歳くらいの女性の方で名前は田中さん(仮名)。
霊感があると自分で感じたことはないが、なぜか私ははじめて田中さんにあった時に不気味な人だ、なんだか怖い、幽霊みたいだと思った。
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私は同僚の看護師に「田中さんってさ、なんか幽霊みたいじゃない?」と聞いてみたものの周りの看護師は、「全くそんなこと思わない」「患者さんにそんなこと言うなんて失礼だ」などと言って共感してくれる人が一人もいなかった。
私、疲れてるのかな?と思いこむようにもしてみたがやっぱり田中さんが頭から離れない。
良くない意味で気になって仕方がないのだ。
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ある夜勤の日のこと。
廊下を巡回していたら夜中の2時ごろにジャーっと水を勢いよく流すような音が聞こえる。
…田中さんの部屋からだ。
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トントンとノックをして田中さんの部屋に入ったら田中さんが洗面所で凄い勢いで顔を洗っていた。
バシャバシャバシャバシャ…
私「田中さん?なにやってるんですか?こんな時間に。」
田中さん「綺麗にしないと…。」
そう言って田中さんは顔を洗い続けていた。
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何度も止めたのだが、気が済むまでやめる気配もなかったので私は部屋を後にした。
そんなことが決まって夜中の2時ごろに毎晩続いた。
田中さんが顔を洗う度に声をかけたが、決まって田中さんは「綺麗にしなくちゃ」と言って洗うのをやめなかった。
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田中さんが入院してからもう二週間くらいたっただろうか…。
今日夜勤にでたらしばらく夜勤はない。
あたしはまたあの光景を見るのが嫌だったのだが、今日はしっかり声をかけよう…。
そう思っていた。
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夜中の2時すぎ。
ジャージャー……。
またあの音が聞こえてきた。
私は田中さんの部屋に入りいつも以上に田中さんに声をかけた。
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私「田中さん!もうやめて!顔、綺麗だから。そんなに洗う必要ないでしょ!」
ジャバジャバジャバ
私「いい加減にして!なんの意味があるの!」
ジャバジャバ...
田中さん「....あぁ!??」
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田中さんがはじめて洗うのをやめたのだが、振り返った瞬間の顔がこの上ないくらいの恐ろしい形相をしていた。
私は今までにない恐怖を感じ、ざーっと体に鳥肌が経つのを感じた。
恐怖に耐えられなくなり何も言わずに田中さんの部屋を飛び出した。
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翌日はちょうど休み。
私は昨晩のことを忘れようと友達と映画に行ったりして気分転換をしていた。
この日一日は楽しくて仕事のことは一瞬忘れられた。
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次の日いつも通り憂鬱な気持ちで出勤すると、同僚でもあり一緒に田中さんを担当していた佐山さんが寄ってきた。
佐山さん「ななちゃん…!(私)」
物凄く青い顔をしている。
私「お、おはようございます…えっどうしたんですか?」
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すると佐山さんがゆっくり口を開いた。
佐山さん「田中さんがね…今朝自殺した。自分の部屋から飛び降りて。」
私「........!」
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田中さんの部屋に行ってみると親族の方や、同僚の看護師や病院のスタッフ、警察の人たちでいっぱいだった。
私は気になったので洗面所を覗いてみると大量に白い髪の毛が落ちていた。
抜けた…というよりも、ちぎったような感じだった。
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やっぱり昨晩も顔を洗っていたんだろう。
私は昨晩は病院にいなかったから田中さんを止めることはできなかった。
一体その時何があったんだろう。
どうして自殺なんて…。
梅雨の時期になると今でもあの時のことを思い出す。
作者ナナ